『意識する関係』
まだまだ続きます!最後まで楽しく読んでいただけると嬉しいです。
「私のことはアイリスって呼んでくれて良いから」
「お、おう」
アイリスがそう言って笑うので、アキラは彼女を名前で呼ぶことにした。
怒りが消えたからか異性と話すことへの抵抗が出てきつつある。
思春期真っ最中、恋愛経験なし。
自分を殺した相手とか関係なく女の子を意識しない訳がない。
だって見た目はユウキと同じ、ドストライクな顔をしている。
さすがに妹大好きのシスコンだという事実は伏せておこう。
「それじゃ、えっと……何から聞きたい?」
アイリスの問いにアキラは戸惑った。
何を聞きたいか。
正直分からないことだらけで、1から全てを知りたい。
なぜ俺を殺したのか、ここは何処なのか、アイリスは何者なのか。
「じゃ、じゃあここは何処か教えてくれ」
アキラの問いにアイリスが嬉しそうな顔をした。
「ここは異世界だよ!」
アイリスがそう言うと路地裏に静けさが戻った。
数秒、いや数十秒、下手したら数分、それだけ沈黙が続いた。
ま、まさかな。
アキラは黙ってアイリスを見たが、アイリスはニコニコしているだけだった。
え、それだけなの?
ここが異世界なのは何となく想像が付いていた。
正直それ以上の情報を期待していたが。
アイリスは未だにニコニコ笑っている。
アキラは諦めて違う質問をすることにした。
「……俺を殺した理由とか、聞いても良いか?」
こんなことは普通、殺してきた人物に問うべきではないのだけれど。
今一番気になっている、知りたいことは動機だ。
どうして俺を殺したのか。
どうして俺だったのか。
ここでもしも不純な理由を答えられたら、怒るじゃ済まないだろう。
「……私は説明するの、あまり得意じゃないの。この近くに説明の上手なサラスっていう人が居るから、その人でもいい?」
アイリスの表情は、少し暗い気がした。
何となくアイリスが説明の苦手な人だとは察していた。
それを何かしら言ったり、詮索したりはしない。
アイリスがした暗い表情から、説明の苦手な自分を余りよく思っていないとアキラは勝手な予想で受け取った。
だから無駄なことは何も言わず「分かった」とだけ言い、アイリスについて行くことにした。
路地裏を抜けると一気に騒がしくなった。
大男たちの大きな声。
並んだ店からは「安いよ買ってけ」とか「採りたて新鮮」だとか。
まるで家の近くにあるスーパー感覚。
異世界だからと言って話す言語は日本語のようで安心。
異世界語なんて話せるはずがないのだから。
アイリスの言うサラスって奴にも言語のことは一応聞いておこう。
数十分後。
「あの……さ、い、一体いつになったら、着くわけ?」
アキラは息を切らしながらアイリスに尋ねた。
黙ってアイリスについて来たが。
アキラがいる場所は、賑わっていた場所から随分と離れた森の中だ。
こんな所にサラスって奴は住んでるのか。
アキラが息を整えようと足を止めると、アイリスも続いて足を止めた。
さっきからプルプル震えてたもんな。
やっぱりアイリスも疲れていたのか。
なんて考えていると、アイリスは振り返ってアキラを見た。
「……ごめんアキラ、迷った」
ーー違ったのかよ!!
「い、いいよ別に」
アキラは優しく笑って言った。
だがしかし!
アイリスがさっきからプルプル震えてたのは、疲れたからではなく、ただ単に迷子になったと言い辛かったからだ。
そんなものは、今にも泣き出しそうなアイリスを一目見れば誰でも分かる。
無論、初めて異世界に来たアキラには道なんて分からない。
つまり、絶賛迷子ちゃんという訳だ。
___18にもなって迷子とは恥ずかしいものだ。
そういえば、アイリスは何歳なんだろう。
女の子に年齢を聞くのは男としてどうかと考えたが、アキラは聞くことを決意した。
「な、なぁ、アイリスって歳はいくつなんだ?」
「18だよ」
まさかの同い年!?
ユウキと似てたからてっきり……ユウキと同い年かと。
「歳がどうかしたの?」
アイリスはそう言いながらアキラに顔を近づけてきた。
「いや別にっ!!」
アキラは慌てて離れる。
心臓が尋常ではない速さで動いている。
この距離は色んな意味で不味い!
_____ガサガサッ。
突如、近くの草むらが不気味に動いた。
お疲れ様でした。次回もお楽しみに!