『少女の名前』
少し長くなりました……よろしくお願いしまする!
アキラは自分の耳を再度疑った。
自分が犯人だと自白した少女はアキラをじっと見つめている。
アキラは黙って少女を睨みつけた。
無理もない。
だって目の前には自分を殺した犯人が立っているのだから。
「そう、だよね……恨まれるのも、覚悟の上」
少女は腰の後ろで腕を絡ませ考え込む表情を見せた。
恨まれる覚悟?
少女の発する言葉は、アキラにはどれ1つ理解できなかった。
血の登った頭は考えることを放棄し、怒りをそのままぶつけることしか出来ない。
「私は貴方に言わなければならないことがあるの」
「……なんだよ」
反発してしまうのも仕方ない。
今のアキラは、聞く耳より警戒心の方が働いている。
もう一度殺されるのではないかと、少女の手や足から視点を変えないようにする。
いつでも逃げられるようにルートまで考えてる。
「この世界で貴方がやることは、私がやった事と同じ……人を殺す仕事」
何を言ってるのか全く理解できない。
アキラは再び少女を睨みつけた。
「分からない、よね……貴方はこれから私たちと同じ『殺し屋』になるの……拒否権はないから」
アキラは少女の言葉を聞くとフラフラと立ち上がり、そのまま少女に近付き胸倉を掴んだ。
「て、てめぇ!ふざけんなよ!!」
殺し屋を自称、自分を殺したと自白。
この時点でこの少女は危険であると認識していながら、それでもアキラはその手を離さない。
少女とアキラの距離は0。
殺されるかもと分かっていても、警戒心より怒りの方が強くなり、自分でも制御不能だ。
「ーー私だって」
少女が何かを口にしようとした瞬間、アキラは地面に倒れ込んだ。
背中に感じる激痛。
___あぁ、この痛み……知ってるな。
刺殺された時の痛みによく似ている。
でも少し、痛みの感覚と傷跡は違う。
刺殺された場所は変わらないが、これは刺殺ではない。
「ゔ、ぐっ」
背中の肉を抉られている感覚。
アキラの予想は当たり、背中には大きな穴が開いている。
___ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!
「てめぇ、アイリスに何してんだ!!」
視界が暗くなっていく中、また違う少女の声がした。
ーーまた……死ぬのかよ。
諦めかけた時、背中の痛みは少しづつ無くなっていった。
「リリフ」
アキラを殺した少女がそう唱えた瞬間、背中の傷跡は綺麗に塞がれていった。
「ちょ、アイリス!何でこんなのの肩を持つんだよ」
アキラを襲撃した少女は怒るというより、呆れ顔でそう訴えた。
傷口は一瞬で塞がり、背中の傷は何もなかったかのように治った。
こんなことは魔法以外に考えられず、アキラは自分に掛けられたのは治癒魔法だと勘付いた。
「彼に非はないから」
アキラには全く状況が理解できなかった。
自分を殺した奴が、今度は自分に治癒魔法を使っている。
全然……意味が分からない。
「……アイリスに何かしたらタダじゃおかないからな」
アキラを襲撃した少女はそのまま何処かへ歩いて行った。
アキラはゆっくり体を起こし、背中を確認する。
やはり傷口は塞がっている。
さすがに服までは治ってはいないが、傷口は完璧に修復されている。
ここが異世界なら魔法も説明できる。
「痛いところとかない?」
少女は再びアキラに話し掛けてきた。
「あぁ……その、ありがとう」
自分の傷を癒してくれた人に恩知らずな真似は出来ない。
アキラは小さく少女に頭を下げた。
「気にしないで、メイルも悪気はなかったの……だから許してあげて」
少女は不安そうな表情を見せたまま立ち上がり、アキラに手を差し出した。
アキラは一瞬迷った。
自分を殺した相手で、自分の傷を癒してくれた相手。
この手を掴むことは、殺されたことは水に流すということ。
殺人、ましてや殺されたのは自分なのに、あっさり許してしまって良いのか。
何て考えたが、アキラの手は少女の手を掴んでいた。
「私はアイリス、アイリス・カーライル」
手を取り、引っ張られ立ち上がると、少女が名乗った。
「お、俺はアキラ」
つられてアキラも名乗ると、少女は笑って。
「アキラ」
と名前を呼んだ。
最後までありがとぉぉぉお!




