『再開の少女』
最後まで読むと神が……嘘です。今回もよろしくお願いします!
「くそっ!」
アキラは携帯を勢いよく壁に投げつけた。
携帯は原型を留めず損壊している。
もう必要ない。
電池が切れ、携帯として機能しない物はただのガラクタでしかない。
そんなものを所持していた所で何のメリットもない。
アキラは路地裏で独り泣いた。
自分でも分かっていた。
ーー俺は泣き虫だ。
独りじゃ何も出来ない。
考えることすら出来ない。
誰かの力を借りなきゃ、誰かがいないと。
何も出来ない。
弱い、弱い男だ。
「ーーやっと見つけた」
突如した誰かの声をアキラは知っている。
アキラは蹲ったまま身震いした。
『向こうで会おうね』
それはアキラを殺したであろう人物の声。
今聞こえた声と同じ声。
その声は明らかに少女の声で、アキラは己が耳を疑った。
「探したんだよ」
殺された時の恐怖が蘇り、声が出ない。
また……殺されるのか。
聞こえる足音。
アキラに近付いてくる何者かの足音。
その足音はアキラを殺した犯人の足音。
恐怖はゆっくり、ゆっくりと。
でも確実に近付いて来る。
ーー来るな、来るな。
アキラは顔を伏せたまま逃げようとするが、後ろは壁で逃げられない。
誰か助けてくれ。
必死に助けを求めるが、自分から人気のない路地裏に入ったため誰もいない。
冷たい壁が『お前は終わりだ』と言っているようだった。
ーー死にたくない。
アキラは声が出ない代わりに目で訴えようと、顔を上げた。
そして、視界に入ってきた人物を見たアキラは、ある人物の名前を発した。
「ーーユウキ」
最愛の妹の姿が、そこにあった。
目の色、髪の色、顔つき、身長。
全てユウキと一致していた。
「ど、どうして」
目の前の光景が信じられず、否定することしか出来ない。
アキラは少女から視点を下げ、地面を見つめる。
自分の状況を合わせば、ユウキは元の世界で死んだの…か?
アキラの混乱した頭では、そんな答えしか導けない。
先ほど言葉を交わしたばかりの妹が今、アキラの目の前にいる。
それが本当なら、嬉しい……訳がない。
背中を刺された時の激痛。
あの痛みは、ユウキに知って欲しくない。
ユウキには……死んで欲しくなかった。
「大丈夫」
少女の声に、アキラは再び少女に視線を向けた。
「私は貴方の妹じゃないから」
少女はアキラに1つの答えをくれた。
少女の容姿が余りにもユウキと似ていたが、この少女はアキラの妹ではない。
ただ似ているだけだった。
「私が貴方を殺したの」
少女の口から告げられた言葉は、罪の告白だった。
ありがとうございました!貴方の元に神が……嘘です。