第12話「VS護衛?」
話し進まない・・・
頑張ろう。
さてと・・・強制羞恥プレイも終わったことだし、どうしようか?
クレルとの食事という名の餌付けみたいなものが終わったら、あいつは用事があるとか言って出て行った。勝手に動き回るなと言われたから部屋からは出ないようにしなくてはいけない。
・・・・だって、護衛の兵士が部屋に居てすごいこっちをガン見してきている。今がチャンスだから逃げたいのだが魔力が半減している俺ではこの護衛を倒すのは難しい気がする。
「・・・・ねぇ」
だけど逃げ出してどうにか人間界に行きたし、隠れて作業するにもめっちゃ視線感じるから無理そうだからな~。
「・・・・ねぇ!」
そういえばさっきの料理案外美味しかったな、見た目はアレだけどそれには目をつぶれば多分すごい高級料理だったのではないだろうか・・・。外食なんてファミレスくらいしか行ったことないから分からないけど、今までで一番おいしい料理だったのは確かだな。
「ねぇ! 聞こえてるんでしょ! いいかげんこっち向け!」
「はっ、え・・・なんです? 呼びましたか」
びっくり。いきなり叫ぶもんだから驚いた。そう言えば俺って昔から考え込むと周りが見えなくなるって言われていたな~、多分今もそうだったのだろう。だってすごい怒ってるし、この女性。
「ええ、呼んだわよ。さっきからずっとね。全くバストマ様が妻を娶ったと言われたからどんな奴かと思ったら、よりにもよって人間! それにこんなに弱そうな奴だとはね。言っておくけど私はあなたを認めてなんかいない! くれぐれも調子に乗らないことね」
うわ~、気の強い女の人だな。というか女の子? さすが魔界と言うか魔族と言うべきなのか髪の色が水色だ、それに青い目。身長は前の俺と同じくらいっぽいかな? 自分が縮んだからいまいちわからないけど170cmはないくらいかな? 青い制服着てるし、髪の色が派手だからコスプレっぽく感じるんだけど、なぜか違和感がない。そういうもんなのかな~。
「私はね、あなたみたいな奴大嫌いなのよ。自分にたいした力もないくせに与えられた地位に居るのが当たり前みたいに思っているのはね。バストマ様とたまたま魔力波長が合っただけの女があの方の妻になるだなんて、卑怯にもほどがあるわ。どうせあんたはバストマ様に見染められただけで、あの方に付いてきただけでしょう? そりゃそうよね、あの方に出会って好きにならない魔族なんて誰もいないはずなのだから。だからこれだけは言っておくわ、あんたにバストマ様は似合わない。自分の身分をよく考えてすぐにここから出て行くことね」
すごいよくしゃべる子だな。そして、出て行けるものなら出て行きたいのですが・・・。あいつが全く出してくれないのが悪い。
だけど、それ以前に・・・・。
「・・・バストマって誰?」
「はぁ~! 何言ってるのバストマ・クレル様よ! あんた自分のことを魔力の波長がたまたま合ったから仕方なく妻にしてくれたあの方を知らないの!? 冗談もほどほどにしなさいよね!」
あ~、なるほど。クレルってバストマっていう名字だったのか。知らねぇよ。
あいつ口を開くと必ず嫌味しか言わないからな、・・・・ん? クレルも嫌々俺のことを妻にしたってことか? なら納得だな、というかそれしか考えられん。互いに嫌い合っている者同士が夫婦になるとか魔族の恋愛事情は最悪だな。家庭内冷戦状態の家が大量発生に違いない。
「冗談も何も、クレルからは名前しか聞いていないのだから知らないのはしょうがないと思うんだが・・・・」
「なっ! よりにもよってバストマ様を呼び捨てにするなんて調子に乗りすぎです! いくら妻になったからって人間ごときがあの方の近くに居られるだけでもあり得ないのに! あり得ないのに!」
いやいや、もうこの人めちゃくちゃになってるじゃん。
クレルのことが好きなんだということは分かったけど、はっきり言ってどうでもいいです。お腹いっぱいになって眠くなってきたというのが本心です。今もずっと喚いているけど、もういいや・・・。
「・・・・・・ちょっと聞いてるの!? いえ、もういいわ。どうせすぐに飽きられてしまう、そうに決まってます! 本当なら少し痛い目に合ってもらってもいいのだけど、バストマ様の部屋で流血沙汰は避けたいですし、貴女をこの部屋から出すなと命令されていますからバストマ様に感謝することね!」
なんだかな~。
彼女は言いたいことを言って満足したのか、それとも不満のままなのかは分からないけど部屋の隅に行って極力俺を無視するかのように直立不動で護衛の仕事に戻った。
一瞬この部屋から出たいから見逃してくれと言ったら出してくれるかと思ったのだが、クレルの命令は絶対らしい・・・、あきらめよう。
「涼、おとなしく待っていたか?」
あれから大体2時間ほどしてクレルが帰ってきた。
実はこいつが帰ってきてくれてほっとしている。
あれから護衛の彼女は一言も話すことなくずっと無言だった。だけど、その身体からは不機嫌オーラが噴き出していてどんどん部屋の空気は悪くなるし、身の回りのお世話のために残っていた何人かの侍女なんて空気に耐えられずに早々に避難していた。俺も逃げたかったが彼女は護衛の仕事はきちんとするつもりなのか、監視するつもりなのか俺が別の部屋に異動してもしっかりと着いてきた。不機嫌なまま・・・・。
なので精神的に疲れた。もう途中で早くクレル帰って来いと願うまでになった。いや、クレルも一緒に居ると腹が立つが居心地が悪くはならないからまだましな気がする。
「よっ・・・・」
「おかえりなさいませ。バストマ様」
俺が信じられないくらい柔らかいソファーに座って軽く手を上げて声をかけるのと被せるように護衛の女が声を出した。
・・・・多分わざとだな。
実際そこまでクレルに話しかけたいわけでもないのでなんにも悔しくない。あの女は随分とうれしそうだけどどうでもいい。
「・・・ご苦労だったサイール。変わりはなかったか?」
名前サイールって言うのか、すごい話していたけど名前は知らなかったな・・・・。まぁ教えてはくれなかったと思うけど。
「はい! この方も大変おとなしくされていたので特に問題もありませんでした」
ものすごいうれしそうだな~。犬みたいだ。
「そうか、ならもう下がっていいぞ」
あららら、すごい悲しそうだ。犬みたいだ。
そして名残惜しそうに出て行ったっと。どんだけ好きなんだよ。もはや崇拝の域に達しているんではなかろうか?
「さて、涼。もう夜も遅いから寝るとしようか」
「もうそんな時間なのか? 窓とかないからわからなかったよ。じゃあお・・私の部屋はどこだ? 隣か?」
「ここだ。さっき言ったはずだかもう忘れたのか? 随分残念な記憶力だな、貴様はハトか?」
知ってるわ! 部屋が別なくらい! さりげなく別部屋にならないか試しただけでなんで鳥頭認定されなきゃならないんだ!
「まあいい、風呂にでも入って来い。今すぐにいけばその残念な頭でも忘れまい」
「分かったよ! 行けばいいんだろうが!」
とっとと風呂行ってやる・・・・・・・・・。
「・・・・・クレル」
部屋付きの風呂場に行く途中で立ち止まる。どうしても確認したいことがあった。
「なんだ」
「お前は来ないよな・・・・」
「行ってほしいのか?」
「いや! 来ないならいいんだ! 確認しただけだ!」
「ならさっさと入って来い」
クレルがそう言うと同時にダッシュ!
いつ気が変わるか分からないが一緒に来ないと言うなら好都合だ、ここまま速攻で入って出る!
俺のカラスの行水と言われる速さを見せてやる!
俺は風呂場に突入していった。




