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一章 8 『こんなのは序の口ですよ』


 まずは昨日窓を補強した板を次々外していく進藤。これも電動ドライバーのおかげでスムーズに作業が進んだ。これをいちいち釘をバールで引き抜くやり方では倍以上時間がかかっていただろう。


 それから外は昨日の嵐のせいで折れた枝や落ち葉が散乱していた。みんな各自家の周りのごみを拾って回っている。


 もうすぐしたら午前の水汲みの時間だ。今日は昨日嵐で行けなかった分いつもより多く水を持ってこないといけない。そこで進藤は一人水汲みの準備をしていた。


 しばらくしてそこにアイリスがきた。進藤が荷車に積んでいる物を見て不思議そうな顔をしている。


 「あれ・・・?いつもの桶じゃないの?なにこれ?」

 

 見慣れぬ入れ物が置いてあるので不思議そうに進藤に尋ねた。


 「おっ?来たなアイリス。これはね木の桶なんかよりももっと水を入れるのに便利な入れ物だよ!その名をポリ缶って言うんだ!」

 「ぽりかん・・・?」


 荷台に並べられていたのは赤色のプラスチックで出来た入れ物だった。


 これは進藤が錬金術(仮)で作り出したものだった。20リットル容量のポリ缶が並べられている。

 

 その一つを進藤はアイリスに手渡した。


 「ほらっ、持ってみてごらん」

 「・・・わっ!凄い軽いね!これなら何個でも持てそうだよ!」


 手にしたポリ缶の軽さに驚いているアイリス。それもそのはずだ。木の桶に比べたらポリ缶の重さは余裕で半分以下だ。しかもちゃんと取っ手もついていて持ちやすさも段違いである。


 「でもこんな入れ物で水を入れることが出来るの?」


 あまりの軽さに容器の耐久性を疑っているようだった。


 「ふっふっ・・・それは実際に水を入れて見てのお楽しみさ!」

 

 なぜか勝ち誇った様子の進藤。


 「・・・なんだか進藤お兄ちゃんいつもより楽しそう」

 「そ、そうかな?別にいつも通りだと思うよ!?」


 その言葉とは裏腹に明らかに進藤のテンションは上がっていた。


 「そうかなぁ・・・?」


 疑うアイリスを説得しつつ進藤たちはいつもの水汲みに出かけた。


 川辺にポリ缶を運び並べた。これもいつもより格段に速く出来た。そしていよいよ缶に水を汲んでみる。


 「・・・わぁ!すごい!本当に全然水がこぼれないや!」


 満水になったポリ缶を見て感動している様子のアイリス。木の桶と違い蓋をすることも出来るので運ぶ時に水がこぼれ落ちる心配もない。


 「どうだい?これでかなり水汲みも早く楽になるだろう?」

 「うん!そうだね!今までよりもすごい楽にできるよ!ありがとう進藤お兄ちゃん!」

 

 ご満悦な様子のアイリス。


 しかし進藤の目的はまだ全然先にあった。しかしそれを達成するにはまだしばらく時間がかかる・・・今はこれで少しでもアイリスの負担を減らすしかない。そう考えていた。


 持ってきたポリ缶をすべて満水にして家に持って帰る。いつもよりしっかり水が積んであるから少しばかり荷を引く馬が辛そうだった。


 ・・・お馬さんごめんね、もう少しの辛抱だから。進藤は心の中でそう思った。


 家に帰りつくとシルバたちが出迎えてくれた。荷台に並べられた水を入れたポリ缶を見て驚いている。


 「凄いなこれは!こんな入れ物があったのかい!?」

 「見たことない入れ物ね?一体どういう作りになっているのかしら?」


 興味津々にポリ缶を観察していた。


 「これがあれば水の保管も簡単だよ!きちんと密閉されているから日陰に保管しとけば虫が入ったりするような心配もないよ!」

 「へぇ!それは凄いな!助かるよ!」

 「へへ!進藤お兄ちゃんが用意してくれたんだよ!」


 アイリスも嬉しそうだった。


 「いやー進藤は不思議な道具を色々持っているんだな!君はもしかして発明家か何かなのかい!?」

 「ハハハ・・・そんなたいそうな物じゃありませんよ。ほんのちょっぴり色々と経験してきた成果ですよ」


 進藤は詳しい説明は避けた。正直どう説明したらいいかわからないし、こんな不思議な力があると思われたらもしかしたら気持ち悪がられて追い出されるかもしれない・・・まあアイリス達に限ってそんなことはないとは思うが。


 「いやいや、君がうちに来てくれて本当に助かっているよ。アイリスも君に懐いているようだし、君さえよければいつまでもいてくれて構わないから」

 「こちらこそこんなよくわからないような人間の面倒を見ていただいてなんとお礼を言ったらいいか・・・本当にありがとうございます」


 進藤はアイリス達に向かって深く頭を下げた。


 「いいんだよそんなことは。まあこれからも仲良くやっていこうじゃないか!」

 「そうね。進藤君のご飯の食べっぷりは見てて気持ちがいいから私も料理が随分楽しくなっちゃったわ!」

 「うん!進藤お兄ちゃんが来てくれてよかったよ!」


 みんなが優しく微笑んでくれていた。


  

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