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一話

懐かしい、情景を見た。

祖父に手を繋がれた黒髪の少年と。

叔父に手を引かれた黒髪の少女。


涙を流しながら、少年は叫ぶ。どうして、どうして、と。

少女は振り向かず、叔父に寄り添い去ってしまう。

残された少年は途方に暮れて座り込んでしまい、祖父は立ち上がるのをじっくり待っていた。


懐かしい、昔の記憶。


───────────────────────


「…………」


ゆっくりと、瞼を開く。

心地よい目覚めだ。

誰にも邪魔されることのない、静かな。


ベッドから離れ、いつものように顔を洗い、寝癖を軽く整える。

歯を磨きながら、机の上の手紙に触れて、ポツリと呟く。


「もう、五年か」


呟きは静かな部屋に反響し、虚空に溶けて消える。

頭を振り、余計な思考をやめた。


ジャージを羽織り、フードを被る。

イヤホンを耳につけ、曲を流す、手馴れた操作。


「行ってきます」


返されるはずもない言葉を無人の部屋に投げ、僕は扉をゆっくり閉めた。

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