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ロールド  作者: ハム
18/23

第18話

遅くなりました。書いてて己のアイディアの無さに痛感させられてます

暗闇に包まれた建物内部、事務所と言った感じだが中は死者達が暴れたのか書類や物品が床に散乱し荒れ放題と言った状態であった。その部屋の隅で一人白衣を着た中肉中背の男がうずくまり震えていた。彼は死者に震えているのではなく、自分が死者と同類になった事に震えていた。そう彼こそが研究所所員の江口だ、一度は森山達と研究所外に向かった彼ではあったが、何の躊躇いも無く人間を襲い脳を喰い漁る森山ともう一人の男性所員を見て、自我が呼び戻される様に彼は森山達から逃げ出した。勿論彼も死者として蘇ったのだが、森山達の行動と周囲の死者達が人を襲う姿に恐怖した。自分も彼等と同様の化け物になり、脳を喰らいたいと言う欲望が溢れ出て来る。その内なる恐怖と必死で格闘し身を潜め震えていた。矢上の言いなりで地下に行った事を後悔し、本来の生活を思い出し、もう戻れないと自分では理解している事にも涙が溢れる。

人を襲い脳を喰えば彼も楽になるのだろうが、死者となった今も彼は人間であった事を辞めたくはなかった。内なる欲望と葛藤していた江口だったが、何かを思い付いた様に震えを止め立ち上がる。その表情は人間としての鼓動や体温、血液の循環等も失い白くなった肌ではあったが、表情からは決意が伺えた。彼はゆっくり事務所を後にし来た道を戻って行く、その足は研究所へと向かっていた。




倉庫に向かったものの大量の死者達の妨害にあった田沢達は追ってくる死者達を振り払い元来た道を戻っていた。時折、死者が建物の陰から飛び出し車に襲い掛かって来たものの、一体の死者では車に敵うはずなく、撥ね飛ばされて行った。自衛隊二人は切り返しの際、先頭を走って居たが研究所の場所を知らない彼等は速度調整を行い、河野の運転する車の後ろに付け走行した。途中、田沢達が脱出した避難所を通ったが、建物のドアが開いて居た事と周囲に死者がさ迷って居た事から、所員二人は既に襲われたと諦めざるを得なかった。彼等を救えなかった事に田沢と松尾は悔しさを表情に浮かばせていた。自衛隊二人は橋の前を通る際に仲間が撤退していた事が分かると落胆していた。自分達はやはり捨てられたのだと、どんな任務であれ多少の危険があり、いつ命を落とすかも知れないとは教わり、ある程度の覚悟も決めていたが、やはり遣りきれない気持ちであった。


埋立て地を略支配した死者は生きた獲物を求め闇夜をさ迷い歩く、車内からその様子を見ていた田沢は慣れたのか溜め息が漏れる。今この埋立て地で起きている事は地獄としか思えない。自分と仲間以外にもし生き残りがいて、彼等は今何処に身を潜め何を思っているのだろう。しかし他人の事を思いやっても、今は自分の事で精一杯、所員二人を助けられなかった時もそうであった。今は兎に角、此処を無事に脱出する事、それだけを目標に進むしかなかった。彼等の目指す研究所へと向かうに連れ、死者の数が減って行く、それほど、研究所周辺には建物がなく、研究所隣の敷地等は憩いの場として公園になっていた。周囲に建物がなく人っ子一人居ないこの公園は死者にとって無縁であろう。車の背後には死者の影すら無く、いつもの日常と変わらない風景と言えよう。田沢達は公園周囲の道路を通り、何とか無事に研究所へと辿り着いた。周囲を警戒しながら車を降りると辺りは異様な程に静まり返り、河野が毎日の様に出向いていた研究所はいつもとは違い異様に見えた。全員が息を飲み各々が持っていた武器を強く握り締めていた。田沢が河野と目を合わせ頷く、そして一歩ずつ研究所へと足を踏み入れて行った。




薄暗い地下道を神谷は小走りに進みながら後方から迫り来るであろう危機を警戒しながら進んでいた。足止め出来る程度に向井の開けた扉を塞ぎながら、出来るだけ焦らず自分を落ち着けながら進む、しかし鼓動は高鳴っていた。かなりの距離を進行し扉もだいぶ閉めて来た事で少しだけ余裕が出来た。神谷が一旦息を調えようと小走りを辞め歩きに変えた。


『はぁはぁ………此処まで来れば一先ず大丈夫だろう………』


神谷がそう言って歩いて居ると後方でドン、ドン、ドンと音がした。離れた場所からの音だったが一瞬にして警戒心が高まる。何かをこじ開け様とする音も徐々に大きく響いて来る、何度も何度も何かを打ち付ける様な音、後ろを振り返りつつ神谷は速度を早めて行くその時だった。ガチャンと言う大きな音と共に聞き覚えのある嫌な嫌な集団の奇声が聞こえてきた。神谷の顔が一瞬にして引き吊る。とうとう死者が地下道を嗅ぎ付けハッチをこじ開け神谷達を追って来た。




死者が地下道に侵入する少し前、秋山は何かを思い付き渡ってきたロープを戻り、背負っていたリュックから必要な物を取り出すと何かを仕掛けていた。田沢と松尾が倉庫から自衛隊に向かった後に荷物を積んでいたトラックの荷台を漁り万が一を考え使えそうな物をリュックに詰め込んで居たのだ、彼女が持ち出したのは硫酸の入った瓶と導線、他には工具だった。地下道の排水路を渡った際、近くに配電盤を見付けた秋山は罠を仕掛ける事を思い付いていた。自分達がこの埋立て地を無事に脱出しても死者を此処から一体たりとも出してはいけないと考えた秋山の咄嗟の考えだった。始めは見ているだけの大野だったが、秋山が手間取っているのを見るといてもたっても居られず用水路を戻ると秋山に指示を求め手伝った。思った以上に理解が早く、手際よく秋山の指示をこなす大野に秋山は驚きを隠せなかった。


秋山の指示通り地下道から排水路に掛かる梯子の上部に配線を繋ぎ鋼線を張って行き地下道の上部と下部を鋼線で張り巡らせ、神谷が通れる隙間を空けておく、一体何をしてるのか指示される大野も訳が解らない状態だが大体の作業を終え、大野が秋山に尋ねた。


『………一体、こりゃーなんだ?』


秋山は眼鏡を光らせる様に自信に溢れた表情で言葉を発した。


『罠です………』


『罠?こんなんで何になるんだ?』


『この用水路を渡った先に配電盤がありましたよね?神谷さんが通った後にあれを使って電流を流します………』


『はぁ………その電流を使って奴等を足止めすんの?』


『田沢さんが言ってたでしょ?坊波扉に自衛隊が電流を流してて、死者がそれに触れたら動かなくなったって、』


『そうか!それで………』


『私としては、此処で奴等を倒したいと思ってます………奴等をこの埋立て地から出しては駄目です………』


大野は何か言葉を言おうとしたが、秋山の決意と気迫に圧され、それ以上は何も言わなかった。海水の激しく流れ行く音が聞こえて居たが、ふと荒い呼吸音と駆け足音が聞こえてきた。秋山を先にロープを渡らせ、大野が様子を伺う為に梯子を少し昇り覗くと神谷が息を切らせながらこちらに向かっていた。思わず神谷の名前を呼ぶ大野、その神谷の後ろから死者達の喚き声が聞こえてきた。大野は手を振りながら神谷を迎えていた。


『神谷さん!急いで!』


大野の姿に気付き、少し力を取り戻した様に速度を上げる神谷、大野の所に辿り着き、息を少し調える。そんな神谷に大野が声を掛けた、


『奴等とうとう、此処に入り込んだんっすね………』


息を調えながら神谷が頷く、大野は梯子を降り、神谷に来る様に手招きし、神谷が梯子を降りると


『神谷さん、ロープを渡って先に行って下さい………俺はあそこの眼鏡っ娘に頼まれた事を済ませますんで………』


大野はそう言うと後ろを振り向いたまま秋山の方を親指で指した。神谷が秋山を見ると秋山は早く渡って来る様にと招く様なジェスチャーをしていた。神谷がロープを掴みながらリュックを濡らさぬ様にしながら激流を脚を滑らせぬ様に慎重且つ速やかに渡って行く、神谷が渡り始めると同時に大野が鋼線で残った隙間をペンチを使いながら封じて行った。死者が近付くに連れ喚き声が大きくなって行く、神谷が封鎖してきた鉄の扉に幾度となく体当たりして扉を抉じ開けながら、地下道を照らす薄暗いライトに死者達の影が写し出されていた。大野は焦りながらも田沢に言われた事を思い出しながらも確実に鋼線を張り巡らせて行った。作業を終えた大野は秋山の方を見ると、神谷が無事に排水路を渡り終えており、秋山が神谷にした様に手招きをしていた。大野は梯子を降りる際に配線等が繋がっているかを確認すると素早くロープを伝い排水路を渡って行く、焦りで途中脚を滑らせるが何とか体勢を立て直し、秋山と神谷の待つ方に渡りきり梯子を掴んだ時だった。


最後の扉を破る重い音が響き、死者達の喚き声が直ぐ其処に聞こえていた。秋山は大野が渡り終えたのを確認すると直ぐ様配電盤のブレーカーの電源を入れる。小さく何かが伝わる様な音は聞こえたが、別段見た目に何の変鉄の無い鋼線、大野は素早く梯子を登る。それと同時に神谷が持って居たナイフで大野が渡り終えたロープを切断した。その瞬間だった。


『………脳ミソ!』


集団の声がはっきりと聞こえると神谷達三人は死者の姿を対岸の地下道に目視した。死者も秋山達生存者に気付き唾液を垂らしながら体温の通っていない真っ青な肌色だが、獲物を狙う獣の様な目をしながらゆっくりと近付く、張り巡らされた鋼線に手を触れた死者は、瞬時に電流が体を伝わり肉体の自由を奪われた、その後に続いて現れた死者も同様に連鎖していく、体が痙攣し頭部や目元から煙をあげ始めていた。秋山の策は成功した。数十秒死者達の体に電流が流れる姿を見詰めて居た三人だったが、神谷に行こうと諭され、三人は出口に向かいその場を後にした。




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