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ロールド  作者: ハム
17/23

第17話

ピタッとくると、すらすら書けるのですが今回中々それが降りて来ず遅くなり申し訳ありませんでした(>_<)

外に数対群がる死者に対し女性所員の身勝手な行動から避難所に取り残された二人の男女は二階に掛け登り、通信機の置かれた部屋に立て籠った。一階ではガラスの割れる音が聞こえてくる。女性は男性に抱き付き泣きながら震えていた。一階の窓は次々と割られて行く、貼られた板も死者達の力で割られ剥がされて行った。死者の集団の中に白衣を来た死者が二人混ざっていた。その二人は窓を乗り越え中に侵入し、入った部屋から周囲の様子を伺っていた。床には割れたガラスの破片が散らばり歩く度に嫌な音がした。そんな事を気にする事もなく、森山ともう一人の所員だった死者は二階に上がって行った。二階に身を隠す所員の女性は声を圧し殺し震えていたが、男性は何とか田沢に連絡を取ろうと通信機を弄っていた。中々繋がらぬ事に焦りを露にしていた。そんな中ドアをノックする音が聞こえた。男性は不振に思いながらも、もしかしたら所長達が引き返してくれたのかもと、微かな希望を抱きながらドアに近付いた。極度の緊張からか警棒を構える手は震え、息を飲み込む、男性は躊躇いながらも震える声を発した。


『………だ、誰だ?』


短い時間ではあったが所員二人には永遠に感じられる程の長い沈黙、それを打破する様に静かで優しい、懐かしき声が聞こえた。


『………私ダ………森山ダヨ………』


その声に所員二人は驚いた表情で顔を見合わせた。所員はいつも慣れ親しんだ森山の声を聞き、河野の言葉を忘れ何の疑いも無く喜んだ。森山さんは無事だったんだと、鍵を急いで解きドアを開ける。其処にはやや顔色が悪いがもう一人の同僚所員が立っていた。所員は森山達を室内に招き入れると、再度鍵を掛けると振り返り森山達に声を掛けた。


『良かった………森山さん達は無事だったんですね………』


男性所員は嬉しさのあまり目に涙を浮かべていた。それは女性所員も同様であった。いつも通りの優しい笑みを浮かべ森山が言葉を発した。


『………アァ………コノ通リ何トモナイヨ………』


森山の言葉に更に安堵する所員、男性所員はこれまでの経緯を森山に聞かせた。所員の話を聞きながら二人の周囲を旋回する様にゆっくり歩く森山達、彼等は既に死者であり、今彼等の行っている行動は明らかに品定めであった。無意識の内に唾液が溢れてくる。あくまで冷静を装い、間近にある脳ミソの香りを楽しんでいた。所員の言葉に応対する様に森山が答えた。


『………ソウカ………所長モ此処ニ来テイルンダネ………ソレデ所長ハ今、何処ニ?………』


男性所員は森山達に説明した。脱出の計画、河野が何処に向かったのか、何故自分達は此処に残っているのかを、森山は感慨深そうに話を聞き、所員の話が終わると所員を労う様に語り掛けた。


『君達ヤ、我々ヲ置キ去リニシテ脱出カァ………相変ワラズ酷イ男ダナ………』


『………そ、そうでしょ?それで我々は今後どうします?………』


不安そうに森山に指示を求める二人の所員に森山は結論を出す、


『………ソウダナ………我々モ後ヲ追ウノガコノ場合………定石ダロウ………』


『そ、そうですよね………』


森山の出した意見に二人は暗闇の中に一筋の光を見出だした様に希望が見えた顔をしていた。しかし外にはまだ他にも死者が居る事を思い出し、その対応についても森山に訪ねた。


『も、森山さん………後を追うにしても車は無いですし………外には死者が………襲われたら脳を食われます!』


『ソノ事ナラ心配ナイヨ………我々モ非常ニ空腹デネ………』


『………!………それって………』


『………ソウダヨ………君達ノ脳ヲ今カラ頂クンダヨ………』


森山は言葉を言い終えると女性所員に掴み掛かり、もう一人の死者と化した所員は男性所員に襲い掛かった。女性は恐怖のあまり身動き出来ず、森山に頭にかじりつかれた。男性はタックルを受けた状態で匍匐前進で逃げようとしたが、後頭部に食らい付かれ、その命を終える事となった。気丈に振る舞い所員を騙し油断させ、森山達も人間である事を辞めた。

森山ともう一人死者として蘇った所員は欲望のままに、同僚の脳を貪る、其処には悲しみなど無かった。彼等は己の欲求を満たす事しか頭にないのだ、死者として蘇った矢上、森山ともう一人の所員、しかしどちらにも江口の姿は無かった。彼は何処に行ったのだろう。




避難所を後にし車で倉庫に向かう田沢達、後ろから追って来た死者達を引き離し数対の死者を撥ね飛ばし倉庫に向かって進んでいた。田沢と松尾は所員二人を取り残した事を悔い、やり場のない怒りを圧し殺そうとただただ無言でいた。確かにあの状況、死者の猛威の中彼らを連れ戻す事は困難であった。河野の咄嗟の判断も仕方無いとしか言えない。ただ後悔が残る。その事が脳裏を駆け巡って居たが、河野の言葉に現実に引き戻される。


『………この先か?』


カーブを曲がり、後少し進めば目的の神谷達の待つ倉庫ではあったが、カーブを曲がりきった先に車のライトに照らし出され見えた光景に田沢達は愕然とした。其処には50を越える死者と思わしき人の群れが、死者達は田沢達の乗る車の存在に気付くと、田沢達の車に向かい走り寄って来た。河野は何とか前進しようとしたが、撥ね飛ばそうにも流石に50人と言う数には車の馬力さえ太刀打ち出来ない。思わずクラクションを鳴らし牽制する河野、しかし死者相手には通じる事はなかった。しかし、クラクションの音は神谷には伝わっていた。



田沢達が倉庫付近に辿り着く前、倉庫では神谷が倉庫内にてスタンバイしていた。先程からドアを叩く死者の数が増えていた。神谷は二階の仮眠室に戻りショットガンを構えながら外の様子を伺っていた。仮眠室から下を伺うと信じられない程の死者が扉を破壊しようとしている姿が目に見えた。神谷はその光景に恐怖していた。恐る恐る後退りを始める神谷、いつドアを破壊し自分に襲い掛かるかも知れない。そんな不安を抱きながら彼は後退りしていた。窓の端から明かりが見えたと思った瞬間、神谷は窓付近に戻ると共にクラクションの音が響く、神谷は何となくだが、それが河野達のものだと気付いた。しかし車の周囲は死者に包囲されていた。これでは倉庫に近付く事すら出来ないと判断した神谷は足早に地下に潜るハッチへと急いだ。


河野達もこれ以上強引に近付けないと判断し、ギアをバックに入れ後退した。隊員を乗せた車も河野達の車を観察しながら同様にバックで切り返す、先程説明を受けており、咄嗟の判断でプランを乗り換えた事に隊員は気付いていた。倉庫が駄目なら研究所の地下から逃げるしかない、彼等の判断は神谷にも伝わっていた。神谷はハッチを閉じる前に田沢達の無事を祈りながらハッチを閉じ向井の元に急いだ。


河野はバックで方向転換する車内からも冷静に死者を見ていた。松尾も多少の動揺は見えたが、落ち着き払っていた。死者を少し振り切り田沢がパワーウィンドウを下げる。田沢も冷静にポケットから手榴弾を取り出し、三秒数えて車外に落とした。車を追ってくる死者を何の感慨もなくサイドミラーから覗く、すると計算仕切った様に爆発音と共に死者が吹き飛んだ。胴体がバラバラになった死者は8体程だったが、それでも僅かだった。しかし、田沢は神谷の脱出時間が稼げた事に安堵しながらバックミラーを見詰めていた。神谷にも、爆音と地響きが砂埃となり伝わっていた。神谷は田沢の用意したバックを携えながら薄暗い地下道を時折後方に注意を払いながら進んでいく、向井達を先に進ませた事が幸を奏していた。もしもの時を考慮に入れ開かれた鉄の扉を閉じ切られたチェーンで直ぐには外す事の出来ぬ様に工夫しながら神谷は向井達の元へと向かって進んで行った。


流石に車のスピードには追い付かない死者は河野達を諦め再度倉庫の扉を破壊しようと、扉の前に集団で押し寄せて居た。頑丈な鉄製の扉も死者の群れには敵わず、扉を止めていた止め金がその効力を無くそうとしていた。


一方、向井達は、向井が何とか繋いだロープを伝いながら皆無事に水流を渡りきり梯を登り終え、肩で息をしながら自分達の来た道を見詰めていた。その表情には神谷がまだ到着していない事への不安が募っていた。


『神谷さん………まだ、来ないのか?』


ふと、向井が言葉を発した。大野は周囲の不安を読み取るかの様に向井に続き発言する。


『お、俺様子見てきましょうか?』


大野は皆の様子を悟り発言したのだろうが、大野の顔にも恐れと不安がかいま見えた。向井は暫く考え込んで居たが顔を上げ大野を見ると


『………いや、此処で待とう………神谷さんが、先に行けと言ったんだ………だから、待とう………俺は女性陣を連れて先の様子を見てくる。大野はしばらく此処で様子を見ててくれ………』


『分かりました………』


この場を大野に任せ向井が進もうとすると、秋山が言葉を発した。


『ま、待ってください!………わ、私も此処で様子を見ています!』


秋山の言葉に向井は少し驚いたが、何かあった時に伝達してくれる人が必用だと考え、秋山の提案を受け入れた。向井達は脱出経路の確認と確保の為に先に進んで行った。


神谷が地下道を通り、向井が脱出経路の確認に向かった頃、彼等が身を潜めていた倉庫の扉が遂に死者達によって破られた。死者達は倉庫に出来た僅かな入り口から押し問答の様に雪崩込む死者に助け合い等はないが、彼等の目的は一つ、新鮮な生きた人間の脳を喰らう事だ、死者達は倉庫内に人間の姿が無いと分かると鼻を卑屈かせ残り香を嗅ぐかの様に生存者を探していた。





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