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ロールド  作者: ハム
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第11話

避難所として使用されている建物の三階に向かった田沢達、その頃田沢達の居た会議室で先程の自衛官隊員が無線で本体に連絡を取っていた。先程松尾から聞いた事を話そうとする隊員だったが、


『………待て………無線では………駄目だ………お前は一度……本隊と合流しろ………2名は残した………ままで………』


『……… 了解しました。では一度そちらに向かいます。』


通信を終え一度背もたれに寄り掛かり天井を見上げなから溜め息をついた。一つ間をおくと、よしとばかりに立ち上がり隊員は会議室を後にした。



三階に向かった田沢と松尾は一室の扉を開け中に入る。其処には白衣をまとった男女二人とスーツ姿の50代と思われる口髭を生やし髪をオールバックで纏めた男性が既に避難していた。所員二人は田沢を見た途端こちらに声を掛けてきた。


『引っ越し屋さーん。あなたも出られなくなってたんですか?』


『……え、えぇ…まぁ…』


『………いきなりこんな事になって私達も訳が分からないですよ………研究所には戻れないし………』


『えっ………研究所に戻れないって………そう言えば、矢上さんは?彼女も此処に来ているんですか?』


所員が矢上達の事に関して口を開こうとした時、スーツ姿の男性が話に割って入って来た。


『………何だ、君達知り合いなのか?』


『……はい、こちらの男性は研究所の引っ越し担当された方です所長…』


『………ほぉ……それで君も閉じ込められたのか………あ、挨拶が遅れたが私が所長の河野だ…』


『私は田沢と言います。』


『………私は松尾と言う者だ』


『………それで矢上さんは?』


『彼女は此処にはいないよ………研究所に残っている………』


所員と所長の言葉に違和感を感じた田沢は秋山の言葉を思い出し、もしやと思い言葉を切り出した。


『………もしかして………例の死体の事と関係があるのでしょうか?』


その言葉を耳にした瞬間、河野の表情が一変し更に田沢に接近し質問を投げ掛けてきた。


『………どう言う事なだ!死体って、詳しく話してくれないか?』


河野の勢いに気圧されし、田沢は河野の目を見詰めたまま無言で頷いた。そして青木から聞いた事、秋山の意見等全てを河野と所員二人に話す、所員は信じられないと言った表情をしていたが、河野の表情は先程より強張っていた。田沢が話を終えると皆黙って居たが河野が静かに言葉を発した。


『………何て事だ………事態はもう其処まで………』


『………その言い方、あなたは何か知ってるみたいだね………話してくれないか………』


河野の言葉に気付き松尾が口を挟む

その事で河野は決心したのか、懐から地下室より持ってきたノートを取り出し全てを語り出した。


『………この事態は実は以前もアメリカで起こってまして………事の始まりはアメリカのケンタッキー州ルイビルの科学薬品会社で起こりました………その科学薬品の倉庫で働いている者が地下にあった薬品のタンクを開けてしまったらしい………』


『………それで、どうなったんです?』


『漏れ出たガスがどうやってか冷凍庫に補完されていた遺体に降り掛かり死体が甦った………』


『それで、その後は………』


『………最後には軍が動き………核で終わらせたらしい………詳しい事はあまり知らないが………最悪な事に………此処でも同様の事が起こっているらしい………』


誰もが真実を受け止められず絶句していた。次に言葉を発したのは河野だった。


『あの研究所の遺体が甦ったのはそのせいですね………しかし、腑に落ちない………確か研究所にあったのは話では5体のはず………青木さんが目撃したのは3体と聞いています………』


『………まだ2体居るって事か!』


所員二人は所長が何故自分達を連れて研究所を後にしたのかを理解したが、矢上達を置いて来た事を疑問に思い河野に訊ねた。


『………あの………所長、矢上さん達はどうなるんですか?研究所に置いて来て矢上さん達が危険なんじゃ?………』


河野のは険しい顔のまま静かに語りだした。


『………いや、もう手遅れだよ………』


『手遅れって………あの時一緒に連れてくれば!』


『………あの時既に手遅れだったんだよ………あのガスを浴びた時点で………彼等も………』


『………それって………どう言う事ですか………』


『………彼等も次期に人を襲う様になる………』


河野のその言葉でまた静まり返る室内。河野から聞かされた話はとんでもない事態になっている事を改めて確認するだけになっていた。



田沢達から話を聞き一度本隊の元へと向かった隊員は無事に本隊と合流していた。彼は上官に田沢達から聞いた事をありのまま伝えた。上官は話を聞き終えると直ぐ様何処かに連絡を取っていた。それは無線ではなく携帯電話であった。


『………お疲れ様です………柳さん………』


『………あぁ………君か、現地はどうなっている?』


『部隊に問題はありません………しかし埋立て地内の者が現状を知らせてくれまして、ご報告をと………』


『………あぁ………その事であれば大体の事は分かっているよ………君達は引き続き拠点の防衛に当たってくれ………』


『………はっ!了解しました……』


『それと誰も其処から出すなよ………感染してるかも知れん…………抵抗する様なら処分してくれ………』


『………はっ、しかし………』


『………これは国の存亡に関わる事だ………君が指示に従わない場合は国家反逆罪にも問えるのだよ………』


『………分かりました………』


『また、何かあれば連絡してくれ………では………』


通信を終えた隊員は納得いかない表情であった。通信を終えた彼の表情はやり場のない憤りを感じさせた。



その頃、神谷達の残る倉庫では存在感を無くす為と暗闇になれておく為に電気は消され、蝋燭やライトで各々準備に怠りのない様に過ごしていた。仮眠室には秋山と青木、小田の三名が身を寄せあいながら窓から外の様子を伺っていた。


『………静かね………』


一番年上の小田が呟く様にいった。窓から見える漆黒の海はとても穏やかで、沿岸に面したこの倉庫からはっきり見えた。沿岸道路も僅かな街灯に照らされていたが普段と変わりなく静かな模様、先程青木から聞いた事すら幻想と思える程であった。


横になりながら休んでいた青木が起き上がり窓から外を眺めだした。外は相変わらず波の音が聞こえるだけであったが、青木はふと動く影に気付き見居る様に一点を眺めた。ふらふらと歩く人影が一つ、僅かに街灯に照らされ姿が見えた。その瞬間青木は急いで仮眠室を後にした。その異変に慌て追い掛ける秋山、彼女は事務所からも急いで飛び出し階段を駆け降りて行く、一階の階段手摺に寄り掛かり銃を眺めていた向井が青木の慌て様に反応した。青木はドアの鍵を開けようとしていた。

『な、何をしてるんだ君は!中に居る様に言われただろ!』


『で、でも、襲われた同僚が生きてたんです!今、丁度この前の道を歩いてるんです!』


丁度其処に青木を追い掛けてきた秋山が追い付く、


『い、一体どうしたんです………外を見るなり慌てて出て行って………』


『秋山さん………それが、彼女が襲われた同僚が生きていて、今この前の道を歩いてるって言うんだよ………』


騒ぎを聞きつけ神谷達も集まってきた。向井が事情を説明しながらも、鍵を開けない様に手を添え抑えている。


『青木さん………何かの見間違いじゃないのかい?』


『そんな事ない!見間違いじゃありません!生きてるんだから早く助けなきゃ!』


『そんな事言ってもなぁ………』


『………神谷さん………彼女の気持ちも分からなくはないです………俺と大野で一応見てきます………何かあった場合は直ぐに入れる様にスタンバイしといて貰えますか………』


『分かった………小田さんと秋山さんは彼女を上に連れて行って見張っててくれるか………向井、大野、何かおかしいと思ったら直ぐに戻ってこいよ!』


『………分かりました………大野、銃はまだ使うなよ!』


『分かってますよ!こいつで充分っしょ!』


大野は持っていた金属バットをちらつかせた。向井は無言で頷くと覗き窓から外の様子を伺った。出来るだけ音を立てない様にドアを開けそっと外へと出た。辺りは穏やかな波音が聞こえている。建物を出て左前方に人影が見える。姿からしてOLの格好で女性である事が伺えた。女性は先程迄の雨にうたれたのかずぶ濡れで頭部から血が流れており、足取りはおぼつかない状態であった。慎重に間を詰めながら周囲にも気を配り、女性から3メートル距離を空け向井は声を掛けてみた。


『………おい、あんた……大丈夫か?』


向井の言葉に女性は歩みを止め、ゆっくりを顔を上げ、こちらに視線を覗かせると同時に彼女はいきなり走りだしこちらに向かってきた。向井は咄嗟の事に身動きが取れないでいた。向井に掴み掛かる寸前に向井の目前を金属バットがすり抜け、女性の顔にヒットし体勢を崩す、次の瞬間大野が声をあげた。


『何してんすか!向井さん!早く中に!』


その声に反応し向井は後退りした。女性は体勢を整えこちらに向き直ると言葉を発した。


『ヴァァー………脳ミソ!』


その言葉と女性の表情の異常さに震えが止まらなくなる向井だったが、再度襲い掛かって来た瞬間、向井は手に持っていた片手用のハンマー振りかざし再度女性は体勢を崩した。急ぎ建物に入る際に女性の歩いてきた進行方向を見ると二人のスーツ姿の男性がこちらに走ってくるのが見え、向井が建物に入ると神谷が急いでドアを閉め鍵を掛けた。


あまりに咄嗟の恐怖と驚きで倉庫に入って鍵が掛かったのを確認すると向井と大野は息を切らしながらその場に腰を下ろした。




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