ぬし望む童
「ひっ…ひっ…うぇえん…こいたろぉ…」
道端でガキが泣いていた。
鼻水を啜っては垂らし、涙を拭ってはこぼし。
「いい加減泣き止みなさい!
しょうがないでしょ、大事なお客さんが来たんだから!もてなせるものなんて他になかったんだから!
あんたが鯉太郎をホイホイ人に寄ってくるようにしちゃったのが悪いのよ!」
「うわぁああん!」
ーふむ。
大事な客、というものが、ここらに来ているのか。
商売の種になるか、それとも、情報源に出来るか。
「おい」
しゃがみ込む。
「鯉太郎、ってのを亡くしたのか」
ガキはしゃくりあげながら言った。
「ひっ……ひっ……鯉太郎はぁ…そこの池のヌシで…強くて…でも、人に懐いてて…」
「ほうほう」
「来たお客さんに食わせるために捕まえられちゃったんです。……宥めてくださるのは有難いですが、仕方のないことですし、放っておいて頂いても…」
「まあまあ、姉ちゃん、見てなって。
俺ら、霊媒師なんだよ」
偽のな。
それから俺らは、ガキに案内させて、鯉太郎の墓とやらに行った。
食べ残された鱗やら骨はそこに捨てられたらしい。
元師匠なら、多分、本物を降ろす。
だが、俺にはんなこた出来ねえ。
その代わりにーーー口を動かす。
線香を土の山に立ててやり、花を供えてやる。
んで、それっぽく鈴を鳴らす。
「……われを、よんだか」
それっぽく言って、ガキの方に向かい合う。
ガキの目が輝く。
ちょろい。
「鯉太郎!…ごめんっ、守れなくてごめん…!」
「すまぬな、おまえがこいしくて、ひとかげにちかよったら、つかまってしまった」
「うぇえん…!謝るのは、僕の方だよ…!」
適当にぱくぱくと口をそれっぽく動かす。
池のヌシならまあまあ霊の格がある、恥ずかしくなんてないぞ。
「われはもう、じきに、うまれかわる。また、おまえにあいにくる。だから、たっしゃでくらせ。
われによきものをくれたおまえの、しあわせをねがう」
「…本当に、最期まで、優しいなあ」
ガキが泣きながら笑った。
ガキ以外はこの降霊術に対して半信半疑だった。
けど、あやすのに苦労してたらしいガキの姉ちゃんは、次の仕事の情報をくれた。
よしよし、収穫収穫。
「さて、気合い入れていくぞ、相棒」
「ああ、行こう。相棒」
俺達は、新たな客候補の元へ歩き出した。




