表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/21

第21話 無効化される魅了と、初めての嫉妬

 人は、推しを見て胸が『ぎゅっ』と苦しく締めつけられた時、その感情をだいたい「尊い」という便利な言葉で片づけようとする。


 うん。わかる。

 私もずっとそうやって、オタクとしての自我を保ってきた。


 推しの笑顔に胸が熱くなるのも「尊い」。

 推しが最強の騎士に成長して誇らしいのも「尊い」。

 推しが至近距離で甘く名前を呼んでくるのも「尊い」。

 推しが「一生逃がしません」とか監禁一歩手前のことを言い出すのも……「尊い」。たぶん。いやだいぶ怖いし愛が重いけど。


 だから今日も私は、いつも通りに「推しが今日も顔面国宝で尊いな」と拝むだけで済むはずだったのだ。


「……え?」


 それが、胸の奥を鋭い爪で引っ掻かれたみたいに『ズキリ』と痛んだ瞬間。

 私の中の“限界オタクとしての平穏”は、いとも簡単に崩れ去った。


 場所は王立学園の優雅な中庭。

 午後の講義が終わったあと、光のよく差す回廊。


 そこで。

 腹黒原作ヒロインのアリア・ベルフォードが、私のレオン様へ話しかけていた。


 ◇ ◇ ◇


「レオン様……ごきげんよう」


 その声は、可憐で、控えめで、そして男の庇護欲をそそる“上品な男爵令嬢”として百点満点だった。


 アリアは両手を胸の前で重ね、少しだけ上目遣いがちに微笑む。

 目線を上げるタイミングも、物理的な距離の詰め方も、息の吸い方すら計算され尽くしているのが見て取れる。


 うわあ。手慣れてる。

 あまりにも手慣れた逆ハーレム構築の初動ムーブだ。


 私は回廊の太い柱の陰から、半分息を潜めてその光景を観察していた。

 いや、覗き見しているつもりはない。たまたまだ。

 たまたま中庭の噴水がきれいで、たまたまそこに推しと原作ヒロインが現れただけだ。全部たまたま。うん、そういうことにしておこう。


 その“たまたま”の中心で、レオン様は静かに立っていた。


 いつもの学園制服。いつもの絶対零度の冷たい気配。

 周囲の空気を薄く凍らせるような、あの完成された覇王の圧。

 近づく者は自然と歩幅を緩め、畏怖して道を譲る。


 だがアリアは違った。


 彼女は“怖がっていないふり”が恐ろしく上手い。

 いや、怖さを“けなげな魅力”へすり替えるのが上手いのだ。

 危険なハイスペック相手ほど落とす価値がある、とでも言わんばかりに。


「先日、歓迎会でお見かけして……その、とてもお強そうで……」

「……何か用ですか」


 レオン様の返答は、あまりにも淡々としていた。

 優しくない。温もりがない。社交的でもない。

 いっそ清々しいくらいに“路傍の石に興味がない”という塩対応の極み。


 普通なら心が折れて引く。

 でもアリアは引かない。


「はい。実は、学園生活が不慣れで……レオン様にお話を伺えたらと」

「お前の学園生活の不慣れを、俺が解決してやる理由は一ミリもない」

「……えっ」


 アリアの完璧な微笑みが、ほんの一瞬だけピキッと引きつった。


 でも、すぐ戻す。

 完璧に可憐なヒロインの顔へ。そのリカバリーの速さが、逆に腹黒さを物語っていて怖い。


「そう、ですわよね……。失礼いたしました」

 そう言いながら、彼女はわざとらしく半歩近づいた。


 その瞬間、空気がわずかに甘く揺れる。


 来た。

 チートスキル、『魅了チャーム』。


 目に見えない、でも確実に“感情の向き”だけを強制的に書き換えてくるアレだ。

 甘い媚薬の香りみたいに広がって、周囲の男子生徒たちが、またしてもふわっと目をゆるめる。「あの子、守ってあげたいな」という洗脳の気配がにじむ。


 でも。


 レオン様は、微動だにしなかった。

 視線の温度も、呼吸の間も、指先の力も。何も。


 アリアが一瞬、驚愕に目を丸くする。


 効かない。

 一ミリも効いていない。


 ああ、よかった。

 うちの推しには魅了なんて通じない。よかった、んだけど。


 ……なんで私、こんなに深くほっとしているんだろう?


 胸の奥がじわりと熱くなる。

 それが安心なのはわかる。

 でも、安心の裏に、もっとドロドロとした『得体の知れない棘』みたいな感情があるのもわかる。


 アリアは、それでも諦めずに強引に距離を詰めた。


「レオン様……お噂は、たくさん伺っておりますの」

「……」

「とてもお強くて、とてもお美しくて……皆さま、憧れていらっしゃるのです」


 そう甘く囁きながら、アリアの白い指先が、レオン様の制服の袖口へ伸びた。


 彼に、触れるつもりだ。


 私はその瞬間、呼吸が止まった。


 やめて。

 気安く、触らないで。


 頭の中では、限界オタクの冷静な理性が警鐘を鳴らしている。

『別に触られたくらいでフラグは立たない。推しは推しだ。私はただのモブメイドで、これはただの推し活だ。落ち着け』と。


 でも、胸の奥が、一切言うことをきかない。


 痛い。苦しい。

 なぜか、奪われるのが無性に怖い。


 その感情の本当の名前を、私は知っていた。

 オタクの壁で必死に隠してきたけれど、知っていたはずだった。


「……うそ」


 私の喉から、震える声が漏れる。


 これ。

 これって――


 ◇ ◇ ◇


 次の瞬間、私の身体は理性を置き去りにして勝手に動いていた。


 柱の陰から一歩踏み出し、レオン様のすぐ隣のパーソナルスペースへ滑り込む。

 そして、気づけば私は――


 レオン様の袖を、無意識に『ぎゅっ!』と強く掴んでいた。


「……」


 布地が、震える指の中でしわになる。


 自分でも驚いた。

 そんなことをするつもりなんてなかった。

「私は落ち着いておりますよ、モブですから」みたいな顔で状況を見守るつもりだったのに。


 私の指は勝手に力を込めていた。

『私の推しだ。誰にも渡したくない』と、叫ぶみたいに。


 レオン様が、ゆっくりこちらを見る。

 氷のように冷たかった蒼い瞳が、私の震える指先と、私の泣きそうな顔を、静かに確かめる。


「クロエ」

 低い声。

 甘い。先ほどまでの塩対応が嘘のように、熱を帯びた、私にだけ向ける極上の温度だった。


 私は言葉が出ない。

 ただ、胸が痛い。呼吸が浅い。

 自分が何をしているのか、半分パニックなのに――この手を離したくない。


 アリアが、その光景を見て驚愕に目を見開いた。


「……あなた、は」

 上品な声が、ほんの少しだけ苛立ちでひび割れた。

「噂の、婚約者待遇の……」


 私は反射で口を開きかけた。

『違います! 私はただのモブメイドで――』


 そこまで考えた瞬間、さらに胸がぎゅっと痛んで、言葉が詰まった。


 違う。

 今の私は、違う。


 この人の隣にいる。

 この人の袖を独占欲丸出しで掴んでいる。

 掴んでしまった。


 これは、たぶん――いや、絶対に。


『嫉妬』だ。


 私が、推しを他の女に取られそうになって、苦しくなった。

 推し活という言い訳のメッキが剥がれ落ちた。


 その理解がすとん、と落ちた瞬間、足元がふわっと揺れた。


「……」

 私は自分の情緒が崩れそうになるのを必死にこらえた。

 だってここ、学園の中庭だ。生徒たちがいっぱいいる。

 でも、もう遅かった。


 私が袖を掴んで、不安そうな顔をした、その“たった一瞬”。


 レオン様の空気が、激変したのだ。


 温度が下がる。一段ではない。

 息が白くなりそうなほど、場が絶対零度に凍りつく。

 私の背中を撫でる風が止み、周囲の喧騒が嘘のように消え去る。


 レオン様が――ゆっくりと、アリアへ向き直った。


 その視線は、冷酷そのもの。

 底の方で、私を不安にさせた存在への『明確な殺意の炎』がドス黒く燃えている。


「……触るな」


 声は低い。静かだ。

 なのに、研ぎ澄まされた刃物みたいに鋭い。


 アリアが恐怖に息を呑む。


「レ、レオン様、私はただご挨拶を……」

「触るなと言った」


 二度目の言葉は、一度目よりさらに冷えて、死の宣告のようだった。


 アリアの笑顔が完全に崩れかける。

 だが、彼女は引けない。逆ハーレムを作るために、ここで引き下がるわけにはいかないのだろう。


「……クロエ様、でしたかしら」

 アリアは、私へ視線を向けた。

 上品な笑みを貼り付けているが、その目の奥は憎悪で真っ黒だ。

「ご安心なさって。私はただ、レオン様と少しお話を――」


 そこで、レオン様が一歩前へ出た。


 たった一歩なのに、空気が重圧で押し潰される。


「お前のような汚物が」

 低い声。

 魔力と殺意を限界まで含んだ、覇王の声。


「俺のクロエの視界に入るな」


 次の瞬間。


『どんっっ!!』と。

 目に見えない爆発的な衝撃波が走った。


 まるで巨大な鐘を内側から叩いたみたいに、空気が激しく震える。

 噴水の水が大きく跳ね上がり、木の葉が一斉に舞い散り、周囲の生徒たちが悲鳴を上げてしゃがみ込む。


 威圧――いや、ただの魔力放出による物理的な衝撃波だった。


「きゃああっ!?」


 アリアの身体が、紙くずのようにふらりと揺れた。

 魅了スキルの甘い気配が、一瞬で跡形もなく吹き飛ぶ。

 洗脳されていた男子生徒たちが、我に返って尻餅をつく。


 そして、アリアは。


 そのまま白目を剥いて、その場に崩れ落ちた。


「……もう、無理」


 倒れるというより、精神的な重圧に耐えきれず、糸が切れたように意識が落ちた。完全なる気絶だ。


 辺りが、『しん……』と恐ろしいほど静まり返る。


 私の手は、まだレオン様の袖をぎゅっと掴んだままだった。


 指が震えている。

 でも、今一番怖いのは――


 レオン様の“殺意”が、まだ完全に消え去っていないことだった。


 ◇ ◇ ◇


「レ、レオン様……」


 私はかろうじて、蚊の鳴くような声を出した。


 その呼びかけに、レオン様の肩がわずかに揺れる。

 ゆっくり、こちらを振り向く。


 蒼い瞳が、私を見る。


 その瞬間、氷のような冷気と殺意が、『スッー』と春の雪解けのように溶けた。


 レオン様の表情が変わる。

 さっきまでの冷酷な顔が嘘みたいに、甘く、とろけるようにやわらかくなる。

 でも、そのやわらかさの中にも、捕食者のような熱が残っている。


「……大丈夫ですか、クロエ」

「だ、大丈夫……です!」

 私は震える息で答えた。

「その……衝撃波にびっくりしました」

「俺もです」


 え?

 今、俺もですって言いました?


 レオン様は私の掴んだ袖へ目を落とす。

 そこに刻まれたしわに、大きな手でそっと自分の指を重ねる。逃がさないように。


「あなたが」

 低い声。少し掠れた、歓喜に満ちた声。

「そんなふうに、他の女から俺を守るように、袖を掴むなんて」


 私は顔がカッと熱くなるのを感じた。


 しまった。

 しまったしまったしまった。

 学園の中庭で、原作ヒロインの前で、推しの袖を独占欲丸出しに掴んだ。

 しかも自覚してしまった。『嫉妬』だと。『恋心』だと。


 終わった。

 私の推し活、いよいよ“ただの推し活”という言い訳が通じない領域へ突入した。


 私は慌てて言い訳しようとした。


「ち、違うんです! これは、その、反射で……!」

「反射」

「はい! 危ないと思って……!」

「危ない」

「レオン様に変な害虫がつきそうだったので……!」

「害虫」


 レオン様の口元が、ほんの少しだけ弧を描いて上がった。

 笑ってはいない。

 でも、最高に満足そうに見える。


 最悪だ。

 この人、私の嫉妬を“自分への愛の証明”として完全に受け取っている。


「クロエ」

「はい……」

「あなたが俺を誰かに取られるかと、不安そうな顔をした瞬間」

 彼は静かに、でもひどく甘く囁いた。

「俺は嬉しさと怒りで、理性が完全に吹き飛びました」

『こわっ』

 本音が漏れた。


 でも、漏れて当然だ。

 さっきの衝撃波、明らかにやりすぎだ。ここは学園だ。

 公共空間で男爵令嬢を気絶させるとか、騒ぎにならないほうがおかしい。


 周囲を見ると、生徒たちは完全に固まっていた。

 ただ、恐怖と畏敬の混じった目でこちらを見ている。


「……あの」

 私は震える声で言った。

「この状況、対外的にまずいのでは……」


「全然大丈夫です!」


「いや、絶対まずいです!」

「あの女が、あなたに嫌な思いをさせた」

「いや、私は嫌な思いというより、びっくりして」

「あなたが不安になった。なら、あの女は万死に値します」


 あっ。だめだ。

 この人の中で、倫理と秩序の優先順位が完全に『クロエ至上主義』で固定化されている。

 いまさらだが、この人は“ヤンデレ”だった。


 その時、遅れて教師らしき人物が駆け寄ってきた。


「な、何事だ!」

「アリア嬢が倒れているぞ!」

「早く医務室へ!」


 ざわめきが戻る。

 だが、そのざわめきはもう、“アリアがかわいそう”ではなく、“冷酷公爵に逆らうな”の方向へ急速に統一されていく。

 今の衝撃波を浴びて、なお彼に逆らう勇気がある学生なんていない。


 医務係がアリアを運び、周囲が散り始める。


 その隙間で、私はレオン様の袖を、そっと離そうとした。

 推し活の境界線に戻らなければ、と。


 でも。

 離せなかった。

 指が、離したくないと、私の本音が叫んでいる。


「……クロエ」


 レオン様が、ひどくやわらかな、甘い毒のような声で私を呼んだ。


「離さないでください」

「……」

「俺の手を離そうと、平気なふりをする必要ありません」


 心臓が跳ねた。

 そんなところまで見抜くのか。

 この人、怖い。でも、怖いのに、どうしようもなく安心してしまう。


 私は小さく息を吸って、真っ赤な顔でようやく言った。


「……離しません」

「……」

「少なくとも、今は」


 その答えに、レオン様の目が、とろけるように甘く細まった。


「ええ」

 低い声。熱い声。


「今は、それで十分です。……いずれ一生、離れられなくしてさしあげますから」


 いや十分じゃないし、後半のセリフが重すぎる!

 でも、今はそれを突っ込む余裕がなかった。


 私はただ、自分の胸の痛みの正体を、何度も頭の中で反芻していた。


 嫉妬。

 恋心。

 私が、推しを『誰にも取られたくない』と思ってしまったのだ。


 ◇ ◇ ◇


 その日の夕方。

 学園中に、凄まじい勢いで噂が爆発していた。


「見た!? 中庭で……!」

「見た!見た! アリア様を衝撃波で気絶させたって……!」

「こわ……」

「つまり、あの子に手を出したら終わりってこと?」

「完全な終わりだよね」

「エルグラン公爵令息に跡形もなく消されるって……」


 噂は、あっという間に絶対のルールとして広がった。


『クロエ様に手を出した者は、エルグラン公爵令息に消される』


 ……様?


 私は寮の自室で、その噂を耳にして白目を剥いて固まった。


「様……?」


 いや待って。

 私は平民の元モブメイドですけど?

 様付けされるような高貴な立場ではないんですけど?


 でも、たぶん、今日の一件で“そう呼ばざるを得ない”絶対的な恐怖の空気が完成してしまったのだろう。


 私はベッドに座り込み、真っ赤な頬を両手で押さえた。


 どうしよう。

 やってしまった。

 私が嫉妬したせいで、アリアが気絶して、学園中にとんでもない不可侵条約が定着してしまった。

 推しの『激重な護衛圧』が、公式に伝説化してしまった。


 そして何より、問題はここからだ。

 私は今日、自分の限界を超えた感情を知ってしまった。


 推しを見て、胸が痛くなる。

 推しが誰かに触れられそうになると、許せない。

 私だけのものにしたい。


 それはもう、推し活の範疇ではない。


 私は枕に顔を埋めた。


「……終わった……モブとしての私が終わった……」


 その時、控えめなノックがした。


「クロエ。入りますよ」


 レオン様の声だった。

 私は心臓を跳ねさせながら扉を開ける。

 そこに立っていた最推しは、昼間と変わらず顔面国宝の整った顔で、でも瞳の奥だけが妙に甘く熱い。


「……大丈夫ですか」

「大丈夫、です」


 レオン様は私の顔をしばらく見て、それから部屋に入り、扉をカチャリと閉めて低く言った。


「今日のこと、後悔していますか」


 私は息を止めた。

 アリアが気絶したことは、さすがにやりすぎだと思う。

 学園中にヤバい噂が広まったのも困る。

 でも――


 私は、ゆっくり首を振った。


「……後悔は、していません」

「……」

「ただ」

 胸が痛む。だから、正直に言う。

「自分が、あんなふうに取り乱すなんて……びっくりして」

 言葉が詰まる。


 レオン様は、私の震える手元を見る。

 そして、一歩距離を詰め、静かに、確信を持って言った。


「嫉妬したんでしょう」

「……!?」


 言われた。

 はっきりと言葉にされてしまった。逃げ場がない。


 私は耳まで沸騰するように熱くなるのを感じながら、どうにか小さく頷いた。


「……たぶん」

「たぶん、ではありません」

 レオン様の声が、ひどくやわらかく、狂おしいほどの歓喜を帯びる。

「あなたは俺に嫉妬しました」

「……」

「俺が、頭がおかしくなるくらいに嬉しくなるほどに」


 ああ、だめだ。

 だめだこの人。

 こんな密室で、そんなふうに甘く重く言うな。

 自分の胸がショートして壊れそうになる。


 レオン様はさらに一歩近づいて、私の耳元で低く囁いた。


「もう二度と、あなたにあんな不安な顔はさせません」

「……」

「誰にも」

「……」

「俺に、指一本触れさせません。俺のすべては、あなたのものですから」


 その言葉は、甘い永遠の愛の誓いのようでいて、逃亡を許さない絶対の宣戦布告みたいでもあった。


 私は小さく限界の息を吐いた。


「……レオン様」

「はい」

「愛が重いです。ほどほどに」


『無理です!』


 私は、思わず真っ赤な顔で苦笑した。

 そうだろうね。

 知ってました。


 でも――


 私はきっと、もう本当の意味で“ただの限界オタク”には戻れない。


 その事実だけが、今日の夜、静かに私の中へ沈んでいった。

 そして同時に、学園中にも沈んでいったのだ。


『クロエ様に手を出すな』という、絶対ルールが。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いいなぁ~(*´ω`*) わざと嫉妬させるやつも多いなか、嫉妬されるのは嬉しいけど、嫉妬されないように努力する人すごく相手を大切にしていて素敵だわ。魅了もってるヒロインなんかに負けないで……!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ