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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
16章 国王マークスチュアート、魔族領を歩く

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04 ターナから情報収集

 その日は再びモンスターが出現することはなく、夕方ごろ魔族の小さな村に着いた。


 ただ残念ながら、そこの住人は人族、というよりよそ者を嫌うそぶりを見せたので、俺たちは村のはずれで野営することにした。


 野営といっても『モバイルフォートレス』があるので、宿などに泊まるよりよほど贅沢である。


 ターナは女の子なので、こんな腹黒陰険国王と2人きりで野営はどうかと思ったのだが、


「いえ……今日一日でマークスチュアートさんが……とても信頼できる方というのはわかりました……から。それに錬金術のお話もしたい……です」


 と気を使ってくれた。いい娘さんである。


 それより『モバイルフォートレス』を見た時の反応の方がすさまじく、


「ふへぇ~……! こんなすごい魔導具は……見たことがない……です!」


 と言いながら、我を忘れたように内外装を詳しく調べまくっていた。


 特にシャワーや風呂にいたく感動していて、早速使いたいというので使ってもらい、その間俺は料理を作ることにした。前に作って好評だったトマトソースのスパゲティとサラダを用意していると、風呂上がりのターナがやってきた。


「こ、こんな立派な料理が……野営で食べられるんですか……?」


 料理を見て目を丸くするターナはローブ姿ではなく、ブラウスとミニスカートという軽装だった。ちょっと無防備では? と思ったが、それだけ俺を信用してくれているのだろう。


「マジックバッグに材料を入れていればこれくらいは誰でもできよう。ただ、普通はやらぬかもしれんな」


「誰にでもできるものでは……ないと思います。それにとても美味しそうな……香りがしますし……」


「冷めぬうちに食べてしまおうか」


「は、はい。でもマークスチュアートさんは……王様なのに、料理をするんですね……」


「若いころは冒険者をやっていたのでそれなりにな」


 本当は前世のスキルだけどね。そもそもこの料理に使ってるスパゲティもコンソメも前世知識だし。


 というわけで2人で夕食を食べ始めるが、ターナは一口食べて「ん……美味しい……!」と言いながらのけぞった。そういう激しい動作をすると、どうしても大きく動くものがあるので目のやり場に困るのだが……。こんなのをフォルシーナやヴァミリオラに見られたら大変なことになりそうだ。


「こ、これ……とても美味しい……です。こんな美味しいものは……食べたことない……です」


「そう言ってもらえるのは嬉しく思う。もっとも、麺と調味料は錬金術で作ったものということもあるだろう」


「こ、この麺も……錬金術で!? この美味しい味の調味料も錬金術……なんですか?」


「うむ。よければ少しおゆずりしよう」


「ぜ、是非お願い……します! こういう錬金術も……研究したいので……」


 やはりターナは研究熱心な錬金術師のようだ。


 しかしスパゲティやコンソメは単にゲーム知識で作り出しただけのものなので、彼女のような真面目な人間相手だと申し訳なさを感じてしまう。


「そ、そういえば、シャンプーとコンディショナー……も使ってみたのですが、これもすごい……ですね。驚きました……」


「ふむ……? なるほど、確かに髪が美しくなっているな。気付かず申し訳ない」


 言われてみれば、彼女の銀髪は、ピンクのメッシュはともかく、全体的にくすんだような色だったのだが、今はフォルシーナにも負けないくらいの輝くような銀になっている。やっぱり錬金術で作ったものは魔法的な効果もあるようで、前世のそれより効能が強力らしい。


「美し……、あ、ありがとうございます……」


 俺が褒めたからか、ターナは顔を赤くして下を向いてしまったが、どうやらかなり初心な娘さんのようだ。このあたりは魔族と言えど人間と変わらず、少し安心してしまう。


「そういえばターナ殿、少し込み入ったことを聞くが、この魔族領では魔王殿が首長を務めているということで間違いないか」


「はい……? あ、ええ、一応そうですけど……」


「ところが、我が国に攻めて来た者たちは、一様に魔宰相殿の名ばかりを口にして、魔王殿のことは口にしていなかった。なにか理由があるのだろうか?」


「え……、それは……」


 ターナは言いよどんで、すごく複雑そうな顔をした。


 まあ要するに、俺はこの魔族領が魔王と魔宰相の2派に分かれているとして、それをターナのような一般魔族が知っているのか、知っていればどう考えているのかを聞いたのである。だまらまあターナのように頭の良さそうな人間なら答えには悩むところだろう。


「……ええと、多分……マークスチュアートさんなら、魔族が2つに分かれているのは……知っていますよ……ね?」


「うむ、まあ予想はつくな。私も政治には多少詳しいのでね」


「ですよね……。今この国は……魔王派と、魔宰相派に分かれているんです。そして……力があるのは魔宰相派だったのですが……戦争に負けて、それが少し変化しているんです……」


「ふむ」


「といっても……魔王派が強くなったわけではなくて、力を失った魔宰相派が……魔王派に近づいているという形です……」


「ほう」


 それは面白いと同時に、ゲーム通りの展開であった。


 実際ゲームでも、ドブルザラクとエルゴジーラを失った魔宰相ロゼディクスは一旦は魔王に擦り寄るのである。もっともそれはロゼディクスの策略で、実際は魔王を倒して自らが魔王になり代わろうとしていただけなのだが。


「ですが、魔宰相派の目的は……結局は魔王派の力を得て、再び人族の国に攻め込もうというお話なので……魔王派は相手にしていないと……そう聞いています」


「なるほど。よく分かった。詳しい話を聞かせてもらって感謝する」


「いえ、誰でも知っている……話ですから」


 そう言って笑おうとしたターナだが、その表情には時折見せる屈託が現れていた。


 ゲーム通りなら実際魔王派は結構な圧力をロゼディクスから受けているはずで、恐らくはターナの言葉通りの状況ではないのだろう。そう考えると急いで魔王のもとに行かなければならないが、フォルシーナたちと合流できれば。3、4日で魔王城には行けるはずだ。


 その日の難しい話はそこまでとなり、いくつかの世間話をした後、俺とターナはそれぞれ離れたベッドで横になった眠りについた。


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