01 ようやく元のルートへ
魔族の大攻勢を追い返し、その機に乗じて攻めてきた2国を退け、国が荒れそうだったベランゴル民主国に恩を売った。
ここまで休みなく動いてきて、国内外ともに多少落ち着いてきた感はあるが、それでもまだ気になることもある。
まずはミルザム王国で、こちらはキルリアン王がなんとかまだ王座にあって踏ん張っているらしい。ジャマザ将軍にも聞いたことだが、キルリアン王の代わりになりそうな兄はまったくその気はないらしく、ミルザム王国はそのままの体制で行くしかないようだ。
戦後交渉については、キルリアン王をミルザム王国に近いゲントロノフ公爵領に呼んで行った。ミルザム王国もそこまで兵を減らしたわけではないが、賠償金をそれなりの額取ったのでしばらくは何もできないだろう。
というより、前回会ってからまだ一月も経っていないというのにキルリアン王はげっそりとやせ細っていてかなり酷い有様であった。ある意味チート中ボスの被害者とも言える彼だが、同情する余地はない。忠義に厚いジャマザ将軍や、捕虜になっていた兵たちは全員返したので、それなりに頑張って生きて行ってもらいたい。
問題は、ミルザム王国と呼応したように幻獣フェニックスをけしかけてきた連中だ。フェニックスが言うには「白い服を着たニンゲン」とのことだったが、会談の場でキルリアン王を問い詰めたところ、
「私が神聖インテクルース国に対して戦いを決めた直後に、白い服を着た男が謁見を申し出てきたのだ。そして幻獣をけしかけるという策を私に伝えてきた。だが、今思うとなぜ私がその男に会ったのか、そしてなぜ幻獣などという話を簡単に信じてしまったのか理解できぬ。何らかの術に掛けられていたとしか思えぬのだ。ともかく、その白い服の男が何者であるかは誰も知らぬ」
という話であった。
ただキルリアン王も、「その白い服は、どことなくミュールザンヌ教国のものだった気もする」と付け加えていた。
実はマークスチュアートとしての知識でも、「白い服を着た人間」となると、真っ先に思い浮かぶのはミュールザンヌ教国の神官であった。
教皇ハルゲントゥスや聖女オルティアナも白い服を着ることはあるが、ラファルフィヌス教の神官は青基調の神官服を着る。それに対してミュールザンヌ教の神官たちは、白一色に近い服を好んで着ると言われているのである。
そんな話を執務室でフォルシーナにしていると、フォルシーナは期待に満ちた目を向けてきた。
「では次は、ミュールザンヌ教国に正義の鉄槌を下されるのですね」
「いや、今のはただの憶測に過ぎぬ。ミュールザンヌ教国が関わっていたという証拠はなにもない」
「ですが、お父様のお考えが誤っていたことは今までに一度もないのではありませんか?」
「そのようなことはない。現にお前に関しては一度過ちを犯していたではないか」
好感度アップを重ねてから、フォルシーナは俺をやたらと評価するようになった感があるが、度が過ぎると逆に少し怖い。過剰な評価が裏返ることの危うさは、俺もマークスチュアートもよく知っているところである。
なので俺は自戒をも込めて自らの過ちを指摘したのだが、フォルシーナには不満だったようだ。
「そのことについては、私もお父様のことをよく理解して、仕方のなかったことと納得をしております。ですから過ちではないと申し上げておきます」
「お前がそう思ってくれるのはありがたいのだがな。いや、いずれにしても今ミュールザンヌ教国をどうこうすることはできぬ。監視の目は強めておき、いずれ向こうが動いた時に尻尾を掴めばよかろう」
「お父様がそう判断されるのであればこれ以上はなにも申しません。他に先に対応しなければならないことがおありということでしょうし」
フォルシーナがどう納得したのかはよくわからないが、本人がそう言っている以上追及しない方がよさそうだ。藪蛇は元中ボスとしては避けておきたい。
問題はフォルシーナが言うように、「先に対応しなければならないこと」があるということだ。それはむしろ俺としては本来的に進めるべき、原作ゲームのシナリオの話である。
そう、いよいよ魔族領に向かって旅に出る時が来たのである。
「フォルシーナの言う通りだ。先日魔族の大軍を退けたところだが、この機に乗じて魔族との因縁に終止符を打たねばならぬ。今我々がなにより優先しなければならないのは、長きに渡って続いた不毛な争いを永遠になくすことだ」
「私もその通りと思います。そして、お父様ならきっと成し遂げられることと思います」
「うむ。これが解決されれば、この国は今までにない繫栄を築くことができるだろう」
「私も全身全霊をもってお手伝いいたします。ところで魔族との因縁を終わらせるといっても、お父様は魔族を滅ぼすつもりはないとおっしゃっていたと思いますが、どのように事を進められるおつもりなのでしょうか?」
フォルシーナの言う通り、俺はこれまで周囲の人間に、魔族とは可能ならば講和を結ぶつもりだということをほのめかしている。ただ、先日までは国の復興に注力していたため、詳細については口にしていなかった。
「そうだな、その話をしなければならない時が来たようだ。が、この先は国の重鎮には知ってもらわぬとならぬこと。必要な人間を集め、そこで説明をしよう」
さて、ここから先の話は、長年魔族に悩まされてきたこの国の人間には受け入れ難い話となるはずだ。すんなりと受け入れてくれるといいのだが。
ここで他サイトの先行掲載分までが終わりになります。
次回は2月18日の更新となりますが、その後は他の小説同様3日に一回の更新となります。
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