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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第14章 国王マークスチュアート、隣国で顔を売る

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13 帰りの開拓地

 リヴィヨン嬢の好感度アップ(推定)をした翌日、俺たちは聖女オルティアナと、その護衛としてクーラリアを残して帰国することにした。


 リヴィヨン嬢やフェルディナン王に見送られて城門を出て、あとは見えないところで『転移魔法』を使うだけである。


 一気に王城に戻ろうとも思ったのだが、マリアンロッテが北の開拓地を気にかけていたので寄ることにした。さすがに『土壌改良石』の効果はすぐには出ないだろうし、特に見るものもないのだが……。


 ちなみにリヴィヨン嬢の話では、開拓地に援助を送るのにも1週間は必要らしい。なので追加の『カロリーバー』を送るよう、マルダンフ侯爵には連絡を入れてある。もちろんそのお代はベランゴルの新政府持ちであるのでこちらの懐は痛まない。


 さてその北の開拓地だが、まず手前にある町に入ると、来た時と様子がまったく違っているのに少し驚いた。以前と違って通りには人が多く、しかも皆肌艶もよくなっていて、生き生きした表情をしている。


 配った『カロリーバー』はそれほど残ってないはずなので不安だと思うのだがそういう様子もない。まあこの世界の人間は基本楽天的なのでそんなものかもしれない。


 開拓地の代表者プレボア氏の家の近くまで来ると、そのプレボア氏がすごい勢いで馬車に向かって走ってきた。


「こっ、これはマークスチュアート国王陛下! お待ちしておりました!」


 確かに行きに通ったのだから帰りも通るのは自明なので、待っているのはおかしなことではない。が、プレボア氏の様子はそれ以外にも鬼気迫るものがあった。


「うむ。随分と慌てているようだが、なにかあったのかね?」


「そっ、それは、畑の方をご覧いただければお分かりになるかと思います!」


「ふむ……?」


 言われるがままに耕作地へと向かう。


 住宅地を抜けていくと、プレボア氏の言いたいことはすぐにわかった。


 一緒に歩いていたフォルシーナたちもそれに気付いて、全員が感嘆の声を漏らしたくらいである。


「お父様、もしやこれがあの『土壌改良石』の効果なのですか?」


「そういうことなのだろうな。まさかここまでの効果があるとは思わなかったが」


 眼前に広がる耕作地。


 来る時はほとんど枯れる一歩手前の状態であった荒れ地が、なんと今や目にしみるほどの緑をたたえた豊かな麦畑へと姿を変えていた。


 いやこれ、あれからまだ一週間くらいしか経っていないはずなのだが、ここまで変わってしまっていいものなんだろうか。いくら錬金術による特殊なアイテムだからといって、農業の常識が根底から覆るほどの効果が出るのはまずいのではないだろうか。


 という危惧は俺だけのもので、当のプレボア氏は両手を広げ、感極まったようにまくしたてた。


「国王陛下にいただいた『土壌改良石』のお陰です! 使い始めてわずか3日で、畑は完全に息を吹き返し、それどころか以前とは比較にならないくらいの麦の生育ぶりです! しかも『虫除け石』も素晴らしく、『麦食い虫』もまったく寄ってきません! あまりに素晴らしすぎて、私たち全員夢ではないかと目を疑ったくらいです!」


「そ、そうか、それはなによりだった」


 あまりの勢いに圧されてしまう俺。


 しかもプレボア氏の声によって農作業をしていた人々がこちらに続々と集まってきて、俺たちを囲んで拝み始める始末である。


 血のにじむ思いをして開拓したことが報われたんだから嬉しいのはわかるのだが、『土壌改良石』も『虫除け石』も俺が作ったものでもないので、感謝されすぎても良心が少し痛む。


「マークスチュアート国王陛下には本当に感謝の言葉もありません。近いうちに陛下の像を町の真ん中に建てさせていただきます!」


「いや待て、『土壌改良石』などは別に私が作ったわけでもない。それに単に試作品を渡しただけに過ぎぬから、そこまで感謝されるいわれはない。間違っても像など建ててはならぬ」


 だってそんなもの建てられたらベランゴルのお偉いさんたち立つ瀬なくなるし。国際問題にまで発展する話だから真面目に困る。


「なんと、さすが国王陛下、謙譲の美徳すら備えていらっしゃる! しかしそれではなおさら建てないわけにはいきません! 次にいらっしゃった時には、必ずや陛下の像をご覧になっていただくようにいたします!」


「いや、だからだな……」


 と断ろうとすると、フォルシーナとマリアンロッテ、アミュエリザの三人が目の前にやって来た。


「お父様、ここは開拓地の皆さんのお気持ちを受けとるべきと思います。お父様はそれだけのことをなさったのですから」


「陛下、私もそう思います。そういった心の支えがあれば、この開拓地はもっと栄えると思うのです」


「私も同じ考えです。陛下の御威光は、あまねく世に知らしめるべきです」


「えぇ……」


 う~む、この三人に言われると、逆らえないのが断罪恐怖症中ボスの悲しいところである。俺は渋々とプレボア氏に「派手にならぬようにせよ」とだけ注文をつけるだけに留めておいた。


 いや本当に、他国の王の像が飾られるのはマズいと思うんだけどなあ。後でリヴィヨン嬢には一言伝えておいたほうがいいかもしれない。


 しかしそれはともかく、『土壌改良石』については錬金術師リラベルの実家の領地で試させてはいるのだが、まだその詳細な報告は届いていなかった。


 なのでここまでの効果があるとは思っていなかったのだが、もしこんな劇的な違いが出るほどのものなら、『土壌改良石』は戦略物資として恐ろしいほどの価値がある。


『土壌改良石』は、『地の精霊』クーロのでしか採れない『精霊石』を必要とするものなので、神聖インテクルース王国でしか生産ができない。他国に融通するにしても扱いには一層慎重にしないとならないだろう。


 俺のそんな考えとは関係なく、満面の笑みをたたえた開拓地の住民たちに見送られ、俺たちは北の開拓地を後にするのだった。

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― 新着の感想 ―
主人公の困惑シーン、助かります。 (主人公が周りとのギャップでえぇ…?ってなってるのが好きなので。)
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