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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第11章 国王マークスチュアート、国を防衛す

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11 ドラゴン懐柔

『心臓を止める魔法』が発動したのか、急に苦しみ始めるエルゴジーラ。


 白目を剥き口から泡を吹き始めるその姿に、俺は多少の憐憫を覚えてしまう。


 さすがに世界最強ドラゴンがそんな意味のわからない魔法で死ぬというのも、なんかしっくりこない話である。


「ふむ、魔法というならこれが効くか? 『ディスペルオール』」


 全魔法を無効化する黒い衝撃波が、エルゴジーラの全身を駆け抜ける。


 すると痙攣がピタリと止まり、エルゴジーラは咳込んだ後、激しく深呼吸を始めた。どうやら『心臓を止める魔法』は消え去ったようだ。


 実はレギルがかけられた『ソウルバーストボム』を無効化できなかったこともあって、『叡智の魔導師』エメリウノと共に『ディスペルオール』の出力を強化していたりもする。元から莫大な魔力を消費する『ディスペルオール』だが、今や完全に『魔の源泉(チート)』持ちの俺専用魔法と化していた。


「ゴヒュー……ゴヒュー……助カッタ……ノカ……?」


 呼吸が落ち着くと、エルゴジーラは今までの傲慢さが嘘のように、弱弱しい声を出した。まあ実際俺にボコボコにされた上に心臓が止まりかけたわけだからそうもなるだろう。


「どうやら私の無効化魔法が効いたようだな」


「ナンダト……? ナゼ我ヲ助ケタ……貴様ハ我ヲ殺スツモリダッタノデアロウ」


「気紛れだ。お前ほどの者がつまらぬ魔法で死ぬのは多少哀れかと思ってな」


「ナニガ目的ダ。生カシテ己ノ剣デ止メヲ刺スカ?」


「そうしてもよいのだがな。しかしエルゴジーラよ、お前は魔宰相ロゼディクスに脅されて従っていた。ならば本来のお前はどのような者なのだ?」


「本来ノ我ダト……?」


 エルゴジーラは一度目を閉じると、静かに声を出した。


「本来ナラ我ハ、卑小ナ者ドモノいさかイナドニ関ワルコトノナイ存在ダ。『幻獣境』ノ門番トシテ悠久ノ時ヲ刻ムダケノ存在ダッタノダ」


「『幻獣境』の門番、か。なるほど」


『幻獣境』というのは、ゲームでも存在した隠しマップである。エルゴジーラを倒した後あたりから行けるようになる高難度フィールドで、ボスとして出てくる幻獣を倒すと役に立つアイテムが手に入ることになっていた。行かなくても問題ないが、行ってアイテムを手に入れておけばその後の戦いが楽になるという、その程度の重要性のマップである。


 しかしエルゴジーラがそこの門番というのは初めて聞いた設定だが、ゲーム的にも納得できる話ではある。


「……ふむ、ならばそこに帰るか? こちらにこれ以上関わらぬのなら見逃してやってもよい」


「ナンダト……?」


 話を聞いたらエルゴジーラはただの被害者で、さすがに止めを刺す気にはならなくなってしまった。まあ素直に従うならばの話だが。


「ただし、間違ってもロゼディクスに復讐しようなどと考えるな。再び同じ魔法をかけられて私の前に立つならば、その時は一切の容赦はせぬ」


「グウウ……、貴様……イヤ、ソナタハヤハリ並ノ者デハナイナ……。マサカ『全テノ幻獣ヲ従エル者』、カ……?」


「そのような呼ばれ方をされたことはない。それでどうする?」


「承知シタ、ソナタノ言葉ニ従オウ。ダガ我ガ配下ノワイバーンハモウ止メラレヌゾ」


「問題ない。あれを見よ」


 はるか遠く、100匹のワイバーンが空を飛んでいくのが見える。彼らは地上に獲物を見つけたらしく、動作に一瞬の溜めを作った後、次々と地上へとダイブを始めた。


 その時、地上から無数の矢がワイバーンに向かって放たれた。すべての矢は螺旋の風をまとい長い尾を曳きながら、急降下するワイバーンに次々と突き刺さる。


 矢は命中すると、ワイバーンの身体を削るようにして貫通し、穴だらけになったワイバーンは空中で次々と消滅していく。空中から大きめの魔石と、『ワイバーンの発火器官』という心臓みたいな形をしたドロップアイテムがぽろぽろと落ちていく様は、なかなかにシュールである。


「ムウゥ……、アレホドノ射手ヲ揃エテイルトハ……」


「エルフ族だ。空を飛ぶモンスターにとってはまさに天敵とも言える者たちであろうな」


「エルフダト? ロゼディクスガ探シテイタノハ知ッテイルガ、ソナタノ元ヘ付イタノカ」


 魔宰相ロゼディクスがエルフに手を伸ばそうとしていたのは知らなかったな。まあエルゴジーラ配下のワイバーン部隊はロゼディクス側の最強戦力の一つだから、それに対抗できるエルフを押さえようとするのは当然か。


 見ている間に、ワイバーンたちは三分の一までに減っていた。


 時折、一際強烈な風をまとい一撃でワイバーンを落とす矢があるが、それは族長ゼファラのものだろう。もう一本、銀の光をまとっている矢があり、やはり一撃でワイバーンを射落としている。こちらはアルファラのものだろうが、技量で劣るアルファラがゼファラに並ぶのは、強武器『破邪の弓』のお陰だろう。


「初メカラ我ニ勝チ目ハナカッタノカ。ソナタハ恐ルベキ者ヨ……」


 エルゴジーラは目を伏せた。


 ワイバーンのようなモンスターは四至将にとっては使い捨ての存在ではあるが、それでも思うところがあるのだろう。


 やがてワイバーン部隊は、一発のブレスを吐くこともなく全滅した。


 エルフ族の対空戦闘能力は想像以上に高いようだ。ゲームだと多少被害が出たみたいな表現がされていたのだが。


「シカシマダドブルザラクノ軍モイル。ソチラハドウナノダ?」


「対策は万全だ。ドブルザラクに引けをとらぬ者たちも複数いる。問題はない」


「ソウカ……。シカシ確カロゼディクスハ、ドブルザラクノ親衛隊ノカオスデーモン何体カニ強力ナ魔法ヲカケタト言ッテイタ。ソナタモソレハ知ラヌノデハナイカ?」


「強力な魔法だと?」


「ウム。『ソウルバーストボム』ト口ニシテイタト思ウガ……」


「なに?」


 久々に聞くその魔法名に、俺はつい声を荒げてしまった。


 ロゼディクスまでがあの禁断の魔法を使ってくるとは、設定違いもいいところだ。


 しかし考えてみれば、エルゴジーラの心臓にかけた魔法も、『ソウルバーストボム』と同種の魔法と言えなくもない。とすると、その話の信憑性は高かった。


 なるほど、この世界、なかなか一筋縄ではいかないようだ。

所用により3日間更新を休みます

次回更新は1月26日になります

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