18.あとがき
編集者の私が裕子さんからお電話を頂いた時、すぐに編集室から飛び出し裕子さんとお会いしました。
Iの事件と裕子さんの事件、これは世間の記憶に間違いなく残った事件であり、それについて裕子さんが本にして執筆したいと伺った時は、本にしてよいものかどうか悩みました。
あまりにも悲惨な運命。執筆によって裕子さんの心を苦しめないか。そう思ったのです。
それでも裕子さんは、書きたいのですと強く意思を伝えてくれました。
本文は、出来るだけ編集の手が入らないように心がけました。
裕子さんの書かれた文章そのままを出来るだけ記すように編集し、誤字脱字だけを取り除いています。
編集者の私は、最初にこの話を読んで、とても皮肉な気持ちになりました。
一度目の刑罰は裕子さんを救いませんでした。二度目の刑罰は裕子さんを救いました。
何と理不尽な事なのでしょうか。人の社会そのものではありませんか。
この話は、自動車事故が起こした悲劇的な事件、そして裕子氏の復讐殺人事件の二つの出来事を主軸に語られています。
読む人によって様々な思いが呼び起こされたと思います。
自動車事故の本質のみならず、人の世の醜い所と明るい所が、はっきりと書かれているからです。
編集者の私から見れば、裕子さんは、一切救われていません。
不幸を飲み込んで、前を向けるようになっただけです。
裕子さんが救われるには、裕子さんのご両親が帰ってこなければなりません。
それは叶わぬことです。
ただ一つ間違いなく言えるのは、自動車とは危険な乗り物であり、乗る人に責任が求められているという事でしょう。
昨今では、煽り運転や携帯の脇見運転等、危険な運転行為が良く報道されています。
彼らは、「カッっとなって。今では悪い事をしたと思っている」と簡単に口にします。
彼らとIは本質は変わりません。
ただ、偶然で人が死ななかっただけなのです。
彼らは人を殺した後、なんというのでしょうか。
全てを暴力的に奪い去った時、どのような顔をするのでしょうか。
「Iよりはマシだ」「あんなひどい態度は取らない」
「そんなつもりはなかった」「死ぬとは思わなかった」
そう本当に思うのですか?
心のない怪物は、誰にでも潜んでいます。
その怪物はこう囁くのです、「好きなようにやれ」「おまえは悪くない」と。
そしていざ事を起こした時、Iのような心のない怪物に変身するのです。
貴方は、そんな運転していませんか?
他人を思いやらない身勝手な運転をしていませんか?
どうか、ハンドルを握る人は、責任を持って運転してください。
人は簡単に死にます。
最後にこの話を読んで、私が一番思う事を書きます。
狂った世の中ですが、ほんの一部の心ない人達がそれを作り出しているのだと思います。
裕子さんの周りは多くの人に恵まれていました。
ただ悪意ある一人に壊されたのです。
私はそう思いました。
<了>
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
もし最後まで読まれた方は、ご感想を教えてください。
作者の私自身、どう思われたか、とても興味があります。




