第41話 研究馬鹿の成すべき事
さて、今日も様子を見に行ってみるかな。
西の森での依頼を終えレオンリバーに戻って来てから約半月の時間が流れた。
その間にも様々な出来事があったのだが、中でも僕の生活に影響が大きかったのはピッセルさんとの出来事とロメットさんがレオンリバーに越して来た事の二つだろう。
ロメットさんはあの時から1週も経たないうちにレオンリバーにやってきて引っ越しの手配から仕事の準備までと驚きの行動力で全ての手続きを済ませていった。
もちろん僕も手伝いには行ったのだが、テキパキと予定をこなしていく彼女には特に必要なかったかもしれない。
住む場所はレオンリバー内で見て南西方面の居住区で、魔法関連に限らず私塾の様な施設も多いらしくそちらで教鞭をふるっているらしい。
まあロメットさん程の魔導士なら引く手あまただろうな。
皮肉にも西の森の魔女なんて呼び名がその事に拍車をかけているようであった。
「おっ、ララじゃないか、飯でも食いに行くのか?」
「あ、クリフ、それに皆さんも」
中央通りを歩いているとクリフから声を掛けられる。
仕事の後もクリフ達との関係は変わっていない。
帰って来てすぐは一緒に行けなかった二人、特にクリフからは何度も謝られたが、僕としては特に気にしていなかったしこんな事で二人との関係を悪くしたくはなかった。
なのでちょっとだけ豪華な食事を僕とリリナの二人分奢ってもらう事で今回の件については完全に水に流すという形でお互いに納得する形となった。
「例の方の所ですよね? 事情は伺っていますがやはり…」
「ええ、でも放ってはおけませんから…」
クリフとレノンさんには西の森で起こった事の顛末を伝えてある。
危険は無いと言われていた場所なのにカレンさんとシアさんは防具が破損した状態で帰って来たのだ。
理由を話さない訳にもいかないし二人なら無闇に他言するような事もないのでロメットさんへの紹介を含めて一通りの事情を知ってもらう事にしたのだ。
「そういえばお二人はケガの様子はいかがですか?」
カレンさんとシアさんのケガについては魔法薬による早めの治療を施したので大丈夫だと思うが、魔核が関わっている事だけに安心は出来ない。
帰ってからもリリナと二人で容体の確認はしたので大丈夫だとは思うが見落としが絶対に無いとは言い切れないのでしばらくは様子見を続けようと思う。
「もう、心配性だなララさんは。
リリナさんの魔法薬を使ったんだからあの程度のケガはなんて事ないよ」
「うん…すぐに良くなった」
「そう、ですか?」
うーん、やっぱり避けられてるよな…。
あえて変化を挙げるとしたらやはりシアさんの事だろう。
今の受け答えもレノンさんの背に隠れながらのものだったし、こちらから話しかけてもすぐに逃げるようになってしまったのだ。
無視をされたりではないので嫌われているという事では無いと思うが正直どう対応したらいいものかと悩んでいる。
「……」
見られてるな…この感じ、なんだかミルス村に居た頃に戻ったような気がする。
あの時と同じならまた何か言いたい事か聞きたい事があるのだと思うが、避けられている現状ではそれを確認することも難しかった。
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クリフ達と別れてからさらに中央通りを北へ進むと中央の交差点に出る。
この街で最も賑わう場所であり人通りも多いのだが、ここ最近になって軍の兵士が周囲を捜索している姿を見かける事が多くなった。
最初は以前レオーネさんが言っていた見まわりをしているだけだろうと思ったのだがよくよく考えてみると少し違和感があった。
ただの見回りにしては武装が重すぎるし人数も多い、それに街を見まわっているというよりは何か、誰かを探しているかのように見えるのだ。
何かあったのだろうか…? ただの見回りにしては物々し過ぎるよなあれは。
街の住人は特に変わった様子もないので軍内部で何かがあったのかもしれないが…まあ聞いても答えてはもらえないだろう。
そんな兵士や住人を横目に目的地である北中央エリアまでやってきた。
この辺りは街の入口に近いこともあり宿や食事所が多く、街の住人以外も大勢やってくるのでレオンリバー内で最も活気に溢れている場所なのだがその分治安も悪かった。
なぜわざわざそんな場所にやって来たのかというと…肝心のルプラさん行方が分かったからだ。
「あいお、あはひはほ?」
正直拍子抜けだったのだがレオンリバーに戻って来た翌日に見つける事が出来ていた。
まあ見つけたってよりは普通に居たんだけどね…。
買い物がてら何か手掛かりでもないかと散策していたのだが、中央通りを歩いている時に手掛かりどころかその本人が食事をとっている所に出くわしたのだ。
もちろん魔核の魔力は健在でありルプラさんが元に戻っているなんて事は無いのだが、こちらを見つけても逃げる様子もなく普通に会話に応じてくれている。
ただ…問題と言って良いものかは分からないが、まったく予期していない別の事態に発展してしまっていたのだ。
「ルプラさん、口に物を入れたまま話したらいけませんよ、ちゃんと飲み込んでから話してください」
「……」
ルプラさんはこちらを睨みつけたままもごもごと口を動かしている。
こういう表面的な部分は以前とあまり変わって無いのにな…でも。
「…で?何の用?」
「いえ、何度も言っていますがそろそろロメットさんの所に帰りませんか?」
「はぁ…またその話?」
ロメットさんの所に帰るように促したり、魔核の魔力をどうにかしようという話を持ち掛けると途端に反抗的になってしまうのだ。
「嫌だって何度も言ったでしょ、私はもっともっと、誰にも負けない魔法が使えるようになるまでは絶対に帰らないから!」
「ではせめてその魔力だけでもどうにか「いっ!やっ! そんな話ばかりするんだったら私もう行くから!」
「あっ!ルプラさん!」
ルプラさんはこちらの制止を聞かずに精霊を呼び出して飛び去ってしまう。
あんまり目立つことはしないで欲しいんだけどな…。
食事時の中央通りという事もありもともと人通りは多いのだが、それに加えてルプラさん自身が目立つ容姿と服装をしている事でかなり人目を引いてしまっている。
ただ、周囲の人もその美しさや鮮やかな精霊魔法に驚いているのだが、ここ最近は同じようなやりとりを何度が繰り返していた事もあり慣れて来た人もけっこう居たりするのだ。
それでもあれはちょっと問題あると思うんだよね…。
僕が視線を向けた先はこの露店街の一角にある異様な雰囲気を持ったスペースだ。
そこには『ルプラちゃんを見守る会』という趣旨の分からない…分かりたくない幟が立っていた。
多分ファンクラブみたいなものなんだろうけど…何考えてこんなもの作ったんだろうな。
確かに魔核の魔力について知らなければ今のルプラさんは、
特に周囲に被害をもたらすわけでも無く、
(むしろ食い逃げ犯を捕まえた事もあるらしい)
人里ではほとんど見る事のないハイエルフ、
幻想的なまでに綺麗で可愛い女の子、
ほぼ毎日のようにやって来ては美味しそうに食事をとって行く、
並の精霊魔法では見る事の出来ない精霊を披露してくれる、
と、居るだけで自然と客引きまでしてくれる存在のため人気が出るのも分からなくもない。
ただ悪さをしないでくれるのはありがたいんだけどこの状況は僕達にしてみればあまり良いものとは言えなかった。
こんなに人目を引く所では強引にルプラさんを確保する事も出来ないし、下手な事をして暴れられたら目も当てられない。
話を聞いてもらえるだけましかもしれないが、なんらかの有効な手段を見つけない事には進展が見込めない、つまりは膠着状態になってしまっているのだ。
ちなみにロメットさんに来てもらった事もあるのだが結果は同じだった。
ルプラさん自身は怒られるんじゃないかとビクビクしていたのだが、ロメットさんはそれをしても意味が無い事を悟っているのかあまり多くは言わなかった。ただ最後に…
「ルプラ、少しだけ待っていておくれ、私がちゃんと助けてやるからね」
と、言葉を残していたのでロメットさんはロメットさんで僕とは違う何らかの手を用意しているのかもしれない。
「よう兄ちゃん、またフラれたのか?」
「いやだから…別に口説いているわけじゃないですから…」
ルプラさんが食べていた肉串を売っている店のおっちゃんから声を掛けられる。
同じような場面を何度も見せたことでこの辺りの人とは顔なじみになって来ていた。
どうも僕はルプラさんの保護者か何かだと思われているようで、見守る会の人達からも特にお咎めはなくこうしてルプラさんに逃げられては微笑ましい顔で見られるのだ。
何やってるんだろうな僕は…もっとしっかりしないといけないな。
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そんな感じで僕の生活には結構な変化があったものの、レオンリバー自体は概ね変わりは無く表面上は平和な様子だ。
だが先の兵士の事もあるし僕の知らない所で何かが起こっているという可能性もある。
もしかしたらまた何か、それこそミルス村のような事件が起ころうとしているのかもしれなかった。
3章本編終了
2章と同様しばらくは別の話を挟みます
次回更新は日曜予定




