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オレの必殺技が炸裂

 魔力を常に使っていると、オレの魔力では長時間の戦闘は無理なので、身体強化は使わずに拳にだけ纏わせて攻撃してみよう。


 わざと1匹だけ収納の指輪にいれず、血の匂いで敵を誘き寄せる。

 オレたちは木の上に隠れて、すぐに攻撃されないようにする。


 仲間の血の匂いを嗅ぎ付けてコボルトが数匹やって来た。

 オレはすぐに飛び降り、赤く光る拳を叩きつけた。

 嫌な音を立てながらコボルトの頭が粉砕する。もう少し威力を抑えても大丈夫そうだ。


 敵の攻撃を躱しながら、確実に頭蓋骨を砕いて殺す。

 必殺技を考えたほうがいいかもしれない。ザコは大丈夫だとしても、硬い敵に出会ったら威力が厳しい。


 魔力を拳に纏わず殴ってみる。さすがに一撃では倒せないが、頭部を執拗に殴れば素手で倒せる。

 収納の指輪に全ての死体をしまうと、結衣たちを木から降ろして、その場を離れた。


「魔力はどんなだ? ないなら先生に任せるんだぞ?」


「さっきの戦闘2回くらいなら、まだ大丈夫です」


 先生が拳を腰に当てる勇ましいポーズで、自分が戦うことを提案する。声も相まって魔王ラハ○ル様のようだ。

 しかし、身体強化でなければ、消費は半分以下のようだ。威力も全体を強化するより、体の外側に出して直接ぶつけるほうが、高いダメージを与えられる。防御力は落ちるけど。


「叔父ちゃん、汚れちゃったから結衣が洗ってあげる~」


 血の汚れがついたオレの服を触りながら、そう言うと光を放つ。


「…………これって浄化魔法みたいな物か? 結衣ちゃんは魔法をさらっと使うな~」


 子供の理解力は凄いのか? 洗濯すると綺麗になる、みたいなレベルでの理解でも大丈夫なのか?


「ケガしたら結衣が治すよ!」


 結衣は戦いに向いた魔法は苦手でも、回復魔法や生活に必要な魔法は得意みたいだ。家でも家事を手伝ってたしな。


「結衣、ちょっと魔力を込めてオレを応援してみてくれ」


 ひょっとしたら、支援魔法が発動するかも。


「ん~? 叔父ちゃんがんばれー!」


 瞳を赤くした結衣が呪文? を唱えると、オレの体が一瞬だけ強く光り、赤く薄い膜で覆われた。


「やっぱり支援魔法っぽいのが発動した。試してみよう」


 素手で岩に殴りつけると、ひびが入る。ジャンプすると4mくらい跳べた。

 アリス先生に石を投げて貰ったが、体に当たっても痛くないので、全体的に強化されているらしい。宿に帰ってから他の魔法も練習させよう。


「結衣には後ろから支援を頼んだほうがいいな。オレたちも助かるし結衣も安全だ」


「そうしようか。結衣ちゃんはまだ小さい女の子だし」


「結衣も役に立つならいいよ!」


 結衣も納得してくれたし、宿に1人で残すわけにもいかないので、戦い方はオレが前衛、アリス先生が中衛から魔法攻撃、結衣が後衛で支援と回復がいいだろう。



 それから敵を求めて森を歩き、見掛けた薬草などを採取しながら、3人で連携の練習をする。

 結衣がオレを強化した後、斬り掛かり動きを止めてから、アリス先生の風の魔法で切ったり吹き飛ばす。

 生き残った奴は剣で止めを刺して、素材の状態をなるべく良くする。


「結衣のお陰でオレの魔力は温存できるから、オレの魔力は必殺技のために使うことにするな」


「必殺技なんてあるんだな~。勇人の通ってた道場で習ったのか? 必殺技を習ったって、言ってて変な感じだけど」


 道場で必殺技なんて有るわけない。普通の技術としての技なら有るけど。


「オレが、魔力を使用する威力が高そうな技を考えたんですよ」


「漫画の見すぎな気もするけど、必要なことだよな! アタシもお前たちを守るために考えとくよ」


 ちょっと呆れたような表情だったけど、考え直したのか気合いを入れている。

 先生の魔力だとオレの必殺技が霞みそうな気がする。もっといろいろな必殺技を考えないと。


「グオォォォォォォォォォ!!」


 猛獣の雄叫びが少し遠い位置から聞こえて、木がメキメキと悲鳴を上げるように倒れていく。


「結衣、強化をしてから離れるんだ。アリス先生も!」


 オレはそう言って前に出る。


「みんながんばれ~」


 結衣の呪文は気が抜けるが、オレたち3人の体に赤い光が膜を張る。


 木を倒しながら現れたのはクマの魔物、魔炎熊だった。魔物は瞳の赤い生き物の総称だ。

 赤ければ魔物。赤くなければ普通の動物というふうに、大雑把に分類されている。

 平たく言えば、魔法を使うか使わないかなので、魔物は普通の動物より圧倒的に強い。


「正面に立つな! 炎を吐くぞ!」


 結衣と先生に忠告してから、突進してくる魔炎熊の鼻面に、指先から魔力をレーザーのように飛ばす。


「サイレント・キルレーザー!」


 この技は威力が低い分、発射が早く、レーザーの速度自体も速いため牽制には持ってこいだ。


「グアッ」


 片目を潰されて魔炎熊の突進が止まった瞬間、アリス先生の魔法が撃たれた。


「アイスエッジ・ガトリング」


 アリス先生の前方に向けた手の平から、氷の刃が連続して放たれる。

 魔炎熊はズタズタに切り裂かれて、堪らず炎を吐く。先生の魔法が押され始めたので、オレは魔炎熊の背後に回り、渾身の必殺技を放った。


「フィニッシュ・ブラスト!」


 結衣の身体強化と拳に纏った魔力、そしてオレの全力のパンチが魔炎熊の背中を貫き、熊の吐いていた炎が止まった。

 すかさず距離を取ると、魔炎熊の体内に残した魔力を炸裂させた。

 穴が開いた魔炎熊の背中で爆発が起こり、5mはある巨体が吹き飛んでいく。


「うわわっ!」


 真正面に居たアリス先生が慌てて飛び退く。


「ハァハァハァハァ…………。死んだみたいだ」


 息を整えながら10mくらい先に転がった熊を見ていると、ピクリとも動かないので構えを解いた。


「凄かったな~。あんなデカイのが吹っ飛ん来て、ちょっとびっくりした」


 自分に向かって5mの熊が飛んできたら、それは驚くだろうな。結衣の身体強化の魔力と、オレの残った全魔力を込めたので、あの威力になったんだろう。


「初めてなんで威力の調整ができなかったんですよ。すみませんでした」


「いいって! お前たちの安全が最優先だ。倒せてよかったよ」


 オレの魔力は使い切ったので、街に帰ることにした。

 道中の魔物はアリス先生が倒してくれた。結衣も攻撃魔法を試したが、あまり威力は出なかったので、結衣は攻撃魔法が苦手なのだろう。


 冒険者ギルドに討伐の報告と、素材の買い取りをして貰ったら、採取した薬草に、コボルトや帰りに倒したゴブリンが多かったので、戦闘ランクと採取ランクが10級になった。

 カードに10を示す文字が印字されて戻ってきた。受け取る結衣は嬉しそうだ。


 先輩冒険者の祝福を受けていると、素材の買い取りが終わったので金を受け取った。

 魔炎熊はランク7の魔物だったので、そこそこ高く売れて、コボルトなどの魔石を含めると、全部で17万2500シリンになった。


「けっこう稼げたな~。取りあえず戦っても大丈夫そうな服とか下着を買いに行くぞ」


 入市税を払っても、今日だけで17万シリン近く儲けたわけだし、服も下着も必要だろう。

 アリス先生の言う通りに、服屋に向かって5万シリンほど使って、3時間ほど掛けてそこそこの服と下着を買った。



 宿は1人1万2000シリンほどの所に泊まり、風呂に入ってさっぱりした。


「ここは煌力製品があっていいな~。蝋燭より明るいし、お風呂も簡単に沸くしな! この宿をしばらく使お~」


 結衣の髪を拭きながらアリス先生が提案する。オレも結衣も現代っ子なんで、便利さには勝てない。

 煌力製品は煌力収集施設に煌力料金を払うと、各建物に送ってくれる。そのため、宿代が高い。


「で、お金が貯まったら不動産屋に行って、家を借りたほうが安いだろうから、3人で住める家を借りよっか?」


「結衣たちのお家? やったぁぁぁ! 結衣、可愛いベッドが欲しいな~。叔父ちゃん買ってくれる?」


 頭に質の良くないタオルを載せた結衣が、ベッドの上から聞いてくる。


「今のところ儲けられるし、いいぞ。貯まったら家を借りて家具も買おう」


 両親のことも悲しくないわけじゃないだろうに、気丈にも泣かないので、ご褒美に可愛い家具や服も買ってやりたい。


 結衣に言うには昨日より豪華な夕食を食べて、疲れを癒すように早めに寝た。


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