最終話
4.
三日後、事件の結果を伝えるために達矢は再び樹理のもとを訪れていた。
達矢の話によると、
樹理のした推理を聞かせた谷村は、あっさりと罪を認めたらしい。
だが推理には追加事項があり、被害者の妻も共犯だったそうだ。
と言うのも二人は不倫関係であり、
「被害者が死ねば多額の保険金や遺産が手に入る上に、後ろ暗い思いも無くて済む」
そんな理由で協力していたのだという。
「あんな顔して…恐ろしい女だな…」
「やっぱりね」
「…は?」
さして驚く様子も無く、むしろ知っていたかのような樹理を見つめて停止する達矢。
「言ったじゃない。
何で奥さんだけ除外なのって。
奥さんが共犯じゃないと、暖房なんて入れられないでしょ。
しかもこの中途半端な季節、普通は暖房入れないし」
「…気付いてたんなら言えよ」
「だって達矢が聞かせて欲しいのは推理と、それで導き出された犯人だったんでしょ?
前提条件じゃなくて。
なら話す必要も無いじゃない?」
「…お前なぁ、」
人差し指を立ててあっけらかんと言う樹理に、米神を引きつらせる達矢。
「それに…やっぱりなんでもない」
「何だよ?」
「何でもないって」
「…ま、いっか。
それにしても、あの奥さんを恐ろしい女って言ったけど訂正。
…女特有の薄情さが恐ろしいんだよな」
「…って達矢、女がみんなそうだと思わないでよ」
完全に男女差別じゃんそれって、と眉を顰める樹理。
「安心しろ、お前がそうだとは誰も言ってないよ」
「?」
「…俺は今まで、お前をまともな女性として見たことは無いからな」
「ちょ、それってどういう…」
憮然とした顔で達矢に詰め寄る樹理。
その瞬間、暖かい何かが頬に当たる感触。
「…嘘だよ。じゃあな。また何かあったら頼みに来てやるよ」
少し早口で別れの言葉と樹理にとっては不穏な言葉を残し、片手を振って去っていく達矢。
「今のってまさか…。
はぁ…何でいつもいつも振り回されて終わっちゃうんだろう…」
と、肩を竦めてから、浮気調査―依頼人:小寺邦一、と書かれている―の依頼書が
載っている事務机から引き出した椅子に座る樹理。
「…でも。
何かあったら、また、盗んであげるよ」
扉に向かって呟かれた言葉。
その声を聞いていたのは樹理の足元の黒いシルクハットだけだった。




