動機の自白と解決
佐藤刑事は目を丸くして叫んだ。
「ひ、被害者が犯人!? 自殺だったということですか!?」
「違います。彼は自分自身を殺害した……つまり『セルフ無差別殺人』の犯人なのです!」
太郎は遺体に近づき、朗々と自説を語り始めた。
「鈴木一郎は、自分自身のことが大嫌いでした。しかし、ただ自殺するだけでは面白くない。そこで彼は、隣の田中さんに『背中を刺してくれたら100万円あげる』と持ちかけたのです!」
田中次郎が「あ、はい。確かに100万円もらう約束で刺しました」と頷く。
「そして刺された後、彼は自ら背中に包丁を刺したままセブンイレブンへ行き、大好きな揚げ鶏を購入。一口食べた瞬間『美味い!』と感動し、そのままアパートへ帰ってきて息絶えた……!! これが事件の全貌です!」
佐藤刑事は感極まった様子で涙を流した。
「なんて悲しい事件なんだ……! 自分を殺すために他人を利用し、最後に揚げ鶏を味わって死ぬなんて……!」
「待ってください」と、田中次郎が手を挙げた。
「じゃあ、僕が刺したから、やっぱり僕が犯人じゃないですか?」
「何を言っているんですか田中さん」と太郎は呆れたように首を振った。「あなたは頼まれて刺しただけでしょう? 悪いのは、自分を刺させた鈴木一郎の強い殺意です。あなたに殺意はなかった。ただ100万円が欲しかっただけだ。違いますか?」
「あ、まあ……金が欲しかっただけですけど……」
「ならばあなたは罪に問われません! 刑事さん、彼は無罪だ!」
「分かりました! 田中さん、ご協力ありがとうございました! 気をつけてお帰りください!」
「あ、どうも……失礼します……」
田中次郎は血まみれのナイフを持ったまま、首を傾げながら帰っていった。
太郎は満足そうに帽子を深くかぶり直し、窓の外の青空を見上げた。
「また一つ、難事件を解決してしまいましたね……」
「さすがは金田一さんだ! 完璧な推理でした!」
こうして、居間で起きた不快で謎めいた(?)殺人事件は、誰一人として納得しないまま、見事に解決したのであった。




