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守護霊

オルフェン平原での未曾有の戦いは終わり、世界を滅ぼすはずだった厄災は、リアムの「手の一振り」によって最初から歴史に存在しなかったかのように消滅した。

大陸のあらゆる国家、宗教、組織は、その圧倒的な神威の前にひれ伏し、リアムは名実ともに世界の救世主、そして「生ける唯一神」として崇め奉られることとなった。

――だが、世界がどれほど激変しようとも、王都ギルド本部の最奥に位置する「総帥の私室」の力学だけは、何一つ変わっていなかった。

「……あ、あはは。みんな、今日から僕は世界の神様になったらしいから、その、神聖な静寂というか、威厳を保つために、今夜は一人で静かに瞑想を……」

リアムは引きつった笑顔のまま、後ずさりしてベッドの角に腰掛けた。

しかし、重厚な扉にかけられた何重もの魔導結界が「カチリ」と音を立ててロックされ、室内を支配する空気の密度が、情欲の沸点へと一気に跳ね上がる。

「……何を仰るのですか、リアム様。世界を救った真の神にこそ、大陸のすべてを癒やす『最高の奉仕』が捧げられるべきですわ」

エレーナが聖女の法衣を滑り落とし、白く滑らかな肢体を晒しながら、ベッドへと這い寄ってくる。彼女の放つ極大の聖力は、リアムの疲労を瞬時に消し去り、その肉体を強制的に「戦いの最適状態」へと引き上げていく。

「……リアム様。……もう、我慢の限界。……世界の平和なんてどうでもいい。……私は、貴方だけを貪りたい」

リリーの背後から伸びた無数の茨が、リアムの四肢を優しく、しかし万力のような力でベッドの四隅に固定した。

「……リリー、抜け駆け、……許さない。……リアム様のすべては、……私たちが等しく分かち合うもの」

マリーがドレスの裾を豪快に引き破り、その逞しくも美しい肢体でリアムの身体を完全に組み伏せる。

さらに、エルドラドの女王アルテミスが、王の傲岸さを脱ぎ捨てて熱い息を吐きながら、リアムの胸元に指先を這わせた。

「神の伴侶となる資格、今夜ここで我が肉体に刻み込ませてもらうぞ、リアム!」

事務秘書のサオリも、眼鏡を外して潤んだ瞳を露わにし、普段の冷静さからは想像もつかない艶やかな手つきで、リアムの衣服を丁寧に、しかし素早く剥ぎ取っていく。

「総帥……いいえ、我が主。今夜の『運動会』は、大陸統一に伴う最大規模の祭典でございます。……最後まで、お付き合いいただきます」

「ひ、ひぃぃぃ! サオリさんまで! 誰か、誰かムドーさんを呼んでぇぇぇ!」

リアムの叫びは、アクアが部屋中に霧散させた特製ポーション「魔神の抱擁」の甘い香りに掻き消された。

「ふふ、リアム様。今夜のために、百日間の修行の成果をすべて注ぎ込んだ究極の精力剤ですわ。……さあ、朝が来ても、次の夜が来ても、私たちは止まりませんからねぇ……?」

新人のアリスも、先輩たちの圧倒的な熱気に当てられながら、頬を紅潮させてリアムの足元へとしがみつく。

こうして、王都の最奥で、人類史上最大規模の「終わらない愛の運動会」の幕が上がった。

一人が果てれば次の者がその特等席を奪い、エレーナの聖力とアクアの薬によって無限のスタミナを供給され続けるリアムは、快楽と絶望の底なし沼へと何度も何度も突き落とされる。

女王、聖女、秘書、剣聖、魔導師、そしてかつて彼に救われた数多の女性たちが、たった一人の「神」を求めて、夜を徹して狂乱の交わりを繰り広げるのだった。


ここで、一つの大きな疑問が生じる。

なぜ、リアムの周囲に集まる人間たちは、大陸のパワーバランスを一人で崩壊させるほどに、異常なまでの「最強」を誇っているのか。

リリーの際限なき大樹の魔力も、マリーの物理法則を無視したワンパンも、カエデの神速の剣閃も、元から彼女たちが持っていた才能だけでは、あそこまでの次元(天変地異レベル)には到底至るはずがなかった。

その答えは、世界の誰一人として知る由もない、リアム自身の「本質」にある。

リアムの背後に眠る、あの世界そのものを圧殺する不可視の【守護霊】。

それこそが、神が世界を創る際に切り離した「純粋なる因果の権能」そのものだった。

そしてその守護霊は、主であるリアムが「平穏に、安全に生きていくこと」を絶対の至上命題として稼働している。

守護霊は、リアムを害する可能性のある脅威を排除するため、あるいはリアムを保護するために、彼の周囲にいる存在――すなわち、リアムが「仲間」と認識した者たちに対して、その強大な権能の『一部』を無自覚に分け与え、強制的に進化させていたのだ。

彼女たちが「リアム様のために」と戦うたびに、守護霊からのバックアップは強固になり、世界の理を超えるほどの力を発揮できるようになる。

さらに言えば、この影響を最も爆発的に、そしてダイレクトに増幅させる儀式こそが、他ならぬ「夜の交わり」であった。

肉体と魂が最も密接に触れ合うその瞬間、リアムの内に眠る膨大な神聖魔素と守護霊の加護が、交わりを結んだ女性たちの体へと容赦なく流れ込み、彼女たちの限界値を際限なく引き上げていく。

昨夜よりも今夜、今夜よりも明日、彼女たちが強くなり、肌に異常なまでのツヤを湛えていくのは、すべてリアムという「無限の霊脈」から直接、至高のエネルギーを注ぎ込まれているからに他ならない。

……ここで読者諸君の中には、「では、あの筋骨隆々の漢、グレンは一体どうやってあの不動の重力魔力を手に入れたのか? 彼も男なのだが?」という、極めて真っ当な疑問を抱く者もいるだろう。

それについての真相は、世界の謎、あるいは読者諸君の「想像」にお任せする。

ただ確かなことは、彼もまた、リアムを「主」と仰ぎ、その果てしない恩恵(あるいは、何らかの秘められた儀式)を授かった一人であるということだけだ。


「……あ、……あはは。……朝だ……。……でも、みんなの目が、……まだギラギラしてる……」

翌朝、眩しい朝陽が差し込むベッドの真ん中で、全身の水分と魂を吸い尽くされ、真っ白な灰のようになってピクピクと痙攣しているリアムの姿があった。

その傍らでは、サオリがツヤツヤの顔で眼鏡をかけ直し、アルテミス女王が満足げに髪を整え、マリーが「……次、……お昼の部、……いつ始める?」と拳を鳴らしている。

窓の外では、何も知らない大陸の民衆が「救世主リアム様万歳!」と、彼を称える聖歌を大合唱していた。

世界を完璧に救ってしまった代償として、世界一過激な「愛の檻」に囚われた男。

彼が本当の平穏と、のどかな隠居生活を手に入れられる日は、おそらく、この世界が滅びるその時まで、永遠に訪れることはない。

遠く事務局長室の床で、すべての現実を放棄して「ワシはカブトムシ……ワシはカブトムシ……」と呟きながら、静かに蜜の入った瓶を抱きしめているムドーの姿を最後に、この大陸の歪な神話の「第一部」は、ここに幕を閉じるのであった。




第一部 完




第二部あります

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