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密着七日目・最終日

 東村(ひがしむら)カマキリによって引き起こされた、清滝(きよたき)さん殺人事件は、犯人死亡という形で幕を閉じました。現場となった『東京スピリチュアル学院』は無期限の閉校。再開の目処(めど)は立っていません。


 東村さんのご自宅に再訪問しました。家の壁面にはカラースプレーで、ここには記載できないような罵詈雑言(ばりぞうごん)が書かれています。事件を知った誰かが落書きしたのでしょう。庭には空き缶や割れたビール瓶、卵の殻などが散乱。これらも誰かが投げ込んだものだと思われます。


 インターホンを鳴らしてみましたが、玄関が開かれることはありませんでした。家の裏側に回り込んで窓を見てみます。ガラスは大破し、部屋の中はタンスやテーブルがひっくり返っていました。まるで室内に台風が発生したかのようです。荒れに荒れた東村宅には、人が住んでいるように思えません。恵里香(えりか)さんたちご家族は、すでに別の場所へ引越したのでしょう。


「子どもたちを亡くなった祖母と再会させたい」、「家族が不自由なく暮らせるお金を稼ぎたい」。そういった想いで大きなリスクを背負い、家族の反対を押し切ってまで霊媒師を目指した東村さん。ですが、彼が掲げた理想は何一つ実現しませんでした。


 せめて、恵里香さんとお子さんたちが無事に生活できていることを心から祈ります。




 事件から一ヶ月後、「『東京スピリチュアル学院』を再開する」という連絡をもらいました。連絡してくれたのは、副学院長の磯野康男(いそのやすお)さん、五十四歳。彼が二代目学院長として、清滝さんの跡を継ぐそうです。


 磯野さんにもお話を伺いました。


磯野「私を含めた役員たちと協議し、学院を再開することに決定しました。まだ在籍中の生徒が大勢いるので、なるべく早く再開しようと考えた次第です。あの事件は非常にショッキングでしたから、当時現場に居合わせた生徒のケアをしつつ、慎重に運営していこうと思っています」


 決して安くない入学金を払っている生徒たちの手前、いつまでも閉校し続けるわけにはいかないと言う磯野さん。退学を希望する生徒には、残っていた受講期間分の返金も検討しているそう。


 生徒の中には、有名な霊媒師である清滝さんが直々に指導をしてくれることに魅力を感じて入学を決めたという人が多くいます。『東京スピリチュアル学院』にとって、清滝さんの存在が大きな強みでした。その清滝さんがいなくなってしまったとしたら、既存の生徒の維持も、新規の生徒を集めることも難しくなるでしょう。


磯野「確かに、清滝がいなくなったことは当校にとって大きな痛手です。けれど、対策は考えています。私も霊媒師の端くれ。亡くなった清滝の霊魂を私の体に憑依させて生徒を指導します。これで実質的に清滝が指導していることと同じになります」


 磯野さんが考えている対策は、まさに『東京スピリチュアル学院』らしい方法でした。この対策が成功するかどうかは、磯野さんの霊媒師としての力量次第といったところでしょう。


『東京スピリチュアル学院』が解決しなけらばならない課題は、これだけではありません。もし今後、東村さんのように憑依させた霊魂に体を乗っ取られてしまった生徒が出た場合の対策も用意しておくべきです。その点はどう考えているのかも伺います。


磯野「憑依した霊魂を強制的に取り去る、除霊師を雇います。聖浄院天蓮せいじょういんてんれん先生という、清滝とも親交があった腕利きの除霊師を雇う予定でいます。もし生徒が暴走し始めたら、先生に対処してもらいます。まだ決定してはいませんが、先生のスケジュールを確認しつつ、調整中です」


 磯野さんは、二度と東村さんのようなケースを生まないための行動を起こしていました。こういった働きかけのおかげか、既存の生徒のうち退学希望者は十パーセント程度に抑えられているとのこと。


 そう遠くないうちに、『東京スピリチュアル学院』は元の運営状況に戻ることでしょう。来年度の講座に向けて、新規の生徒を大募集中です。



<了>

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