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三人の転生者《イレギュラーズ》 ~神様チートはないけれど、仲間と一緒にやっていく~  作者: 凡鳥工房
第6章 三人の転生者《イレギュラーズ》、巣作りする

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6-01.モラトリアム

■ここまでのあらすじ(抄)


 金髪碧眼美少年の俺ウヅキ、黒髪黒目で腹も黒いのがミナヅキ、一見は常識人の赤髪青目のハヅキ。


 中世風ファンタジー世界に農奴の子として転生した俺たちは、協力して生き延びる盟約を結んだ。

 口減らしで売り飛ばされたことも前向きにとらえ、それぞれ錬金術師、聖職者、商人へと成長。


 実践を踏まえ幼少期の野望を見直す俺とミナヅキと違い、ミナヅキは悪徳領主を目指して地歩固めに乗り出した。

 俺たち三人の転生者(イレギュラーズ)、仲間とともに巣作りだ。



 起こされた土に新緑芽吹く春半ば過ぎ、俺たちは伯都ツェルマットに帰還した。


 大陸中央にある教会総本山までの行脚を依頼してきたのはヤマトゥーン男爵家だが、俺にとっての拠点は師父たちのいるツェルマット。

 ニートナル魔術師学園の敷地内に移築されたパーティー・ホームで旅の疲れをいやす日々である。


「だらだらしすぎとちゃうか?」

「充電ちゅー」

「これからを考えつつの骨休めです」


 幼少期に互いを転生者であると認識した俺とミナヅキとハヅキは、協力して生き延びるために盟友となった。

 ここ最近のハヅキは、湿地帯の領有権を書面上確保するなど、幼少期からの野望、悪徳領主をやるための仕込みに忙しく動いている。

 対してミナヅキは、旅をするための旅に魅力を感じないという悩みを抱えている。


「やっぱり、僕の根っこは引きこもりなのかなあ」

「夢と現実の差ってのはあるよなあ」

「なんやなあ、ええ若いモンが人生にまよとるんかい」


 俺たち数え十五歳の少年期から青年期へと差し掛かるあたり。

 モラトリアムっすよおと言えば、前世あわせたら幾つだよと容赦のないツッコミが返された。


 といいますかね、いつでもお腹ぐぅぐぅのカッツカツの生活を生き延びるためのモチベーションであった夢に、いざ手が届いたらなんか違うというのはあると思うんですよ。

 幼児期に知りえた世界と、見分が広がった状態で見る世界とは違う。

 俺やとミナヅキの野望は、生き延びるための遠い目標ではあっても、かなえるべき目的ではなかった……なんて言ったところで、いまさらの話である。


 俺の野望は冒険者稼業をやることだった。

 異世界ファンタジーとくれば冒険者稼業だろう。そう定めたことに後悔はない。

 しかし、この世界の冒険者にあたる魔物狩り(ハンター)になってみたものの、それでどうしようというものでもないというか。


 これが農奴の末子のまま成長し、あてもない村を出て成り上がりを目指したというのなら、迷宮で魔物を倒して倒して倒しまくって、財産と名誉、地位を得ようとしたかもしれない。

 俺の兄貴のスコールが、街に出てきて再会した当初はそういうノリだったんだから、この世界での底辺層の見る夢としては大きく外れていないと思う。


 しかし、口減らしで売られた先に恵まれた結果、現在の俺は師父から一門衆として名を頂き、ニートナルを名乗れる。

 錬金術師として食っていけるあてはあるし、願えばどこぞの貴族様に魔術師として仕官もかなうだろう。はっきり言えば、平民の中ではエリート層なんだよ。


 間違っても戦いが楽しいなんて戦闘狂ではないし、パーティのリーダーとして仲間を無駄な危険にさらせないという意識もある。

 ヒル子は残念だし、ミルディーフは月のものが重いし、フィルさまは怖い……いえ、なんでもありません。


 ともかく年頃のお嬢さんたちを抱えたパーティとして、魔物との戦闘に明け暮れるようなのは事実上無理だし、でなくとも稼ぎのあてはあるし、冒険者稼業する意味って特にないよねという現実と向き合わされていたのが俺なのだ。

 現実と向き合っているのはミナヅキも同様だろう。


「まあなあ。俺も英雄目指すだなんてアホなことは、もう言う気ないしなあ」

「無理せず食べていけるって、もしかして最高なんじゃないかしら?」

「ん(そだねー)」


 俺とミナヅキのモラトリアムに同意を示してくださったのは、スコールの兄貴にヒル子とミルディーフ。

 ハヅキは肩をすくめた。


「自分、しばらくキタのみなとのほうの家を拠点に動きますさかい、魔石と商材の補充だけは頼んまっせ」

「あいよ。ダミーの荷馬車ルートも併用だな?」

転移門トランスファー・ゲートは任せろー。バリバリ」

「やめないで!」


 ミナヅキぃ、マジックテープ式財布のネタなんていきなりブッコムんじゃねーよ。

 ネタがわかってしまう俺たち三人だけでゲラゲラと笑いあい、それを生温い目で見守るみんなといういつもの構図だが、話そのものは資金繰りとしても命綱としても重要だ。


 ここ伯都ツェルマットの拠点と、ヤマトゥーン男爵領キタの津の屋敷、そしてヤマトゥーンの領都の三か所に設置した魔道具【リターン・アンカー】の魔力線マジック・ラインを目印に、俺たち三人は転移できる。

 転移門の魔法は、距離と転移量で消費魔力が変わるが、ツェルマットとキタ、キタとヤマトゥーンの間なら、一頭引きの荷馬車の一台分くらいなら余裕で動かせる。

 通常だと陸行・水行それぞれ二日の計四日かかる時間が、ほぼゼロでだ。


 圧倒的な物流アドバンテージなわけだが、それだけに表立って使えるものでもない。

 魔道具【リターン・アンカー】併用の限定的な転移門の魔法だが、偉い人にばれたら強制召し上げになるだろう。

 俺たちワガママだから、自分勝手に生きたいのよね。


「そこんとこ、ヨロシク」

「うん、いまさらの話だけど、僕の都合もついでによろしく」

「しょうがないにゃあ」


 『黒髪黒目は大事にしろ』との家訓をもつヤマトゥーン男爵家の四男、ハイラルとの付き合いも長い。

 巡礼行名目であっちこっち一緒に旅もしているし、互いの手の内も知っている。

 他人に致命的なことをしゃべらず、自分や実家の都合でもこっちに損のないように提案してくる分には互恵関係でいられる。


 春期の日々は過ぎていき、夏至祭でちょっとした騒動があった。


「ちょっとしたで済まさないでくれよ」

「ハイラルぅ・ェーンド・ミナヅキぃ、司祭叙階おめでとうパーリィー!!」


 教会総本山でもらった「司祭昇階推薦状」の効果で、助祭ハイラルと助祭ミナヅキは階梯を上り司祭に叙階された。

 早すぎる出世だが、文句あるなら総本山まで巡礼してこいや。総本山のお墨付きもろたモン昇階せなんだら、うちらのほうが非難されるとちゃうんかと、ツェルマット教会上層部が日和った結果らしい。


 俺たちはヤマトゥーン家の金にモノを言わせて船旅メインだったから片道一か月程度ですんだが、てくてく歩いていくと三倍は固いんじゃないかなとのこと。

 そんだけの巡礼行されたら、そりゃあ推薦状の一枚も発行するか?


「いいことなんだけどさ、予定が狂っちゃったよ」

「いよいよ、どっかの教会に入って組織運営の研修か」

「最終的には領内教会すべての指揮権を握る、権力闘争の始まりやねえ」

「がんばれー」

「逃がさん。ミナヅキも道連れだあ」


 助祭捕に叙されてからこっち巡礼名目でふらふらし、組織運営の経験のない者がいきなり教区教会を任されても自滅するだけである。

 ハイラルと、そしてミナヅキは領都ヤマトゥーンを管する教会にて実務研修に励むこととなった。

 これに伴い、フィリアも領都ヤマトゥーンのアジトに移動。愛の巣計画をぶち上げている。頑張れ。


「てかハイラルも、断れなかったおめかけさん領都に集まってるんだったよな?」

「……一門衆を増やさなきゃという、我が家の都合もある」


 あっちもこっちも愛の巣だなあとつぶやいたら、兄貴とハヅキに変な顔をされた。


「あんなあ、自分とスコールの兄貴はキタの拠点メインやし、ツェルマットに残るの、ウヅキとその嫁たちだけなんやで?」

「なん…だと……」


 いつの間に嫁扱い?

 いやヒル子もミルディーフもダメってわけじゃないけど、あれ、俺まだ十五歳だよな。


「自分もミナヅキも同い年やん。他人ひとんこといじったら、次は我がことやん?」

「ウヅキはなあ、エゲツないくせにどっか抜けてるんだよなあ」

「なん…だと……」


 と、鈍感系主人公っぽいムーブを楽しんだところでラチはあかない。

 女の子は十四~十八が結婚適齢期、二十越えたら売れ残りの年増扱いのご時世、その気がないのなら、俺はともかく女子たちには相手を探す時間の猶予というものが存在する。

 引っ越しだーと一部住人が騒がしいパーティ・ホームで、ヒルデガードとミルディーフと三人で真面目な話し合いを持った。

 幸い、嫌われてはいなかった。一気に全身から力が抜ける。


 いやだってさ、勘違い野郎とか最悪じゃん?

 下手に確かめてマズったらと思うと聞くに聞けないし、その後どんな顔してパーティ・メンバに会えばいいのかわからないし、今の関係性を守るためにはこう、着かず離れずの関係性というものをですね、高度に柔軟性を維持しつつ臨機応変に慎重な対処をしなければなんて人知れぬ苦労がありましてですね。

 俺、今生の常識的な基準で考えると間違いなくイレギュラーな思考持ちって自覚もあるし、嫁になってもらっても苦労かけるだろなあと思うとですねえ。


「バッカじゃないの?」

「ん」

「バカっていうほうがバカなんだぞバカぁ!」


 ……。

 大変お見苦しい場面をカットさせていただきました。ご了承ください。


「てなわけでな、子作りは待ってほしい」

「なんでよ!」

「ん(魅力、ない?)」


 そうじゃなくてと、ヒル子の腰をつかんで抱き上げた。


「このほっそい身体に赤ちゃん産ますって、怖くてしょうがないだろ」

「ん~」

「授かっちまうぶんにはしょうがないが、せめてもう三年待ってくれ」

「むう」


 さて、俺の前世知識にはオギノ式という、本来は妊娠法なのだがさかさまにした避妊法のほうが有名という知識がある。

 そして二人の生理周期は、これまでの生活の中でおさえている。

 変な意味じゃなくて、移動一つとっても気配りがいるのよ。特にミルディーフには。


 魚の浮袋の類は使わないので、俺に種がないなんて衝撃の事実が隠れていない限り当たるときは当たるはずだが、なるべく避ける方向ということで了解を頂いた。

 序列?

 変に情がどうこう言いだすと泥沼なので、出会った順で納得してもらうことにする。


「そうか、身を固めるか」

「いつまでも、宙ぶらりにしておくわけにもいきませんでしたので」


 師父ネイトナル様に報告したところ、翌朝にはヌビア奥様が襲来、三人娘を引き連れてお出かけあそばした。

 あなたはウチに行きなさいとのご命令に、泡を食ってニートナル屋敷に参じたところ、師父は諦めろという。師父との対話中だというのに、執事さんが俺にまっすぐ立てと言ったり腕を伸ばさせたり。

 昼過ぎには仕立て直された礼服が届けられ、夕刻には揃って晒し台の上にあげられた。


「何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからない」

「ウヅキだけならともかく、僕まで巻き込まれたのはどうしてなのか、これがわからない」

「自分には相手おらんのかと、過酷な尋問をされるよりマシだと思え」


 ちょっとね、いきなりで驚いたけどね、ニートナル屋敷のみんなに祝ってもらえたのは嬉しかったよ。

 ただちょっとね、いきなりでね。


 結婚披露宴まで執行されたことで覚悟が決まったのか、ミナヅキはモラトリアムを脱し、世界旅行という野望を放棄すると宣言した。

 代わる何かはまだ未定だが、当面は司祭としての修行にフィルとの家庭を大事にしつつ、ハヅキの計画に協力するという。


「最初、世界旅行放棄で引きこもり宣言かと思った」

「確かに根っこは引きこもりですけど!」


 俺もミナヅキ同様、守りに入らざるを得ないのだろう。

 いまさら冒険者稼業で身を立てる必要はないし、ミナヅキとハヅキの野望をサポートできればいいや。

 そのためにはなるべくフリーな立場を確保しておく必要がある。兄貴と一緒に、転移門トランスファー・ゲートを隠すためのダミー交易も続けないといけない。


「つまり、当面のプロジェクトは自分主体で巣作りっちゅうこっちゃね」

「そうなるな」

「ハヅキの領地づくりであり、個々人の家庭づくりでもありですね」


 交易以外で、すぐに協力すべきことはあるのかと問えば、ハヅキはにやりと笑った。



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