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三人の転生者《イレギュラーズ》 ~神様チートはないけれど、仲間と一緒にやっていく~  作者: 凡鳥工房
第4章 三人の転生者《イレギュラーズ》、何歩か踏み出す

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4-04.ウヅキPの野望・ユニット伝

 失敗とは、成功のための踏み台である。

 などと言い訳しつつ、俺たちは『はじめのぼうけん』を終えて伯都へと戻ろうとしていた。


「こいつ、騙りポーション野郎なんでさぁ」

「言ってない。勝手にポーションだって勘違いしたてめぇが間抜けなんだ」


 迷宮街の門を抜けようとしたのに、もめていた自警団のあんちゃんとガラの悪い小僧が絡んでくる。


「ブツはこいつなんですがね」


 ガラの悪い小僧にはにらみつけられ、自警団にはなれなれしくされる。

 だから何だと俺も両者をにらみ返したら、自警団側が専門家のご意見を、などとぬかしやがる。

 迷惑な話だ。


 迷惑な話だが、顔をつなぐ、縁ができるというのは、こういうもたれあい関係を生じるということで、相互に利をもたらしあわなければならない。

 これもしがらみ、お付き合いは大事である。


「借りるぞ」


 キサラギ・ポーションの瓶に、ドロッとした緑色の液体が詰まっている。

 空き瓶の回収率は百%にはならないから再利用されるケースも想定はしていたが、そりゃあ、消費者の皆様がまがい物だ騙りだに敏感になるわけだわ。


 今回の冒険に備えて購入した携帯用食器セットからコップを取り出し、ひっくり返して底の裏部分に液体を少々注ぎだす。

 におい……あれ?

 ちょびっと指につけて舐めてみる。うん。


「傷薬の草すりつぶして水加えたもんだな」

「そうさ。俺は嘘は言ってない! ちゃんと傷薬だって言って売ったんだ」

「出来栄えはともかく傷薬にはちがいない」

「腕自慢かよ、クソが」

「腕じゃない。道具の差だ」


 職人仕事の何が素人と違うかって、段取りと道具だと思うんですよね。

 腕なんて数年やってりゃある程度までは行けるわけで。そっから先は言いたくないけど才能ってことで。


「さすがにこれを大銅貨で売ったなら問題だが、幾らだ?」

「小銅貨三枚」

「ぼったくりとまでは言えんし、ポーションの値段じゃないなあ」


 原料は傷薬の草だし、フレッシュな香りに、変な雑味もなかったし、ただの傷薬としてなら十分だと思います。


「だろ! なのにこいつ、俺が騙りだなんだって喚きやがって!」


 勝手にキサラギやニートナルの名を使っていたならともかく、俺は本件の第三者専門家であって裁定者じゃない。

 当事者同士で好きにして頂戴。


 勘違いを誘導するのも、前世ならば景表法かなんかにひっかかりそうだが、今生だと騙されるほうが間抜けで終わる話なんだよなあ。

 そもそも、小銅貨三枚でポーションが買えるわけないじゃん。

 ただし、完全に自己責任であっても、勘違いした側が報復をしないという保証はない。だからこそ小僧はボコられてたわけで。


「クソガキが、覚えてろよ」

「はん、ソッコーで忘れたぜ」


 続けざまに、俺にまで吐き捨てる。


「あんたも、俺は別に、助けてほしいなんて言ってないからな!」


 いいねえ。全方位に敵を作るかのごとき言動。クソ生意気だが、ピンとくるものがある。


「待てや小僧。俺はウヅキだ。てめぇの名前くらい置いていきやがれ」

「俺はレオーネだ。小僧呼ばわりすんじゃねえ」


 いえいえ、どうみても小僧です。

 うちの弟弟子おとうとでしのヤクート君八歳も線が細いが、それよりさらにチビでガリ。力があるのは青い瞳だけ。灰色系の髪の毛なんて汚れきって見る影もない。


「そうかレオーネ。モノはついでだ、ありったけの傷薬の草もってこい。全部買い取ってやる」

「こきゃあがればっきゃろー。財布空にして泣くんじゃねーぞ」


 走り去ったレオーネ君を見送り、俺たちは門のそばに荷と腰を下ろした。


「みんな、すまん! 俺のわがままで足止め食らわせちまって」

「まあ、ウヅキのやることだし。どうせ買い集めた傷薬の草で採集依頼達成に持ち込もうとか、そういうことでっしゃろ」

「金で達成を買うの、いいのか、それ?」


 ハヅキは、俺の狙いの半分は理解していたようだ。

 だって、初仕事で黒星とか、嫌じゃないですかー。

 スコールの兄貴の疑問には、護衛のウェンレイトンさんが応じる。


「褒められた話ではありませんが……この場合は、金を落として度量を見せることと、下手なポーションもどきをつくらせないことの方が大事、ですかねえ」

「変な誤解で、こっちのブランドが傷つけられたら血を見るからなあ」

「メンツってもんか。ウヅキも偉くて面倒な立場になっちまってるんだな」


 しばしのち、俺たちは街中から集まってきたんじゃないかってガキの集団に包囲されていた。


「じゃーんじゃんもってこーい。俺の財布はもう死んだが、ダチの財布はまだ生きてるぞぉ」

「いやいいけど、ろくに検品もせんでええんかい?」


(組合への卸値だから、工房で買入する値との差額でまあなんとか?)

(足元見てもええと思うんやがなあ)


 よろしいんですのよ、ハヅキさん。あたくし、もうかってますの。

 民草への施しは義務みたいなものざぁますから。おーっほほほほほ。


 ほどなく背負子にみっちみちに傷薬の草……じゃないのも混じってやがるが、まあ、いいだろう。手土産ってことにしてやる。ヤクート君の選別練習に使えばいいや。

 てなことで全部積み込み、俺はレオーネに礼を言った。


「べ、別に、お前のためなんかじゃないし」

「その言葉を待っていた!!」

「え?」


 これだよこれ、これこそツンデレだよ!

 ツンツンツケドンがたまに見せるデレ! これこそ至高、これこそ至極!

 男の子だけどこの際目をつぶろう。

 にこやかに差し出した俺の手をとったレオーネに、シェイク・ハンドで魔力を通す。通った。


「ぎゃ! ……てめ、なにしやがった!」

「サイコーだよ、おまえ! 魔法使いの才能あるよ! 俺に任せろ」

「は、はあ?」


 P魂がうずきますねえ。

 俺ウヅキがうづきます、ってシャレかよ、ウッヒョー。


 母はこの街で娼婦をしていたが、すでに死別済み。今は魔物狩り相手に傷薬を売ったり、荷物持ちをしたりして生き延びているという。

 戸惑い気味のレオーネを引き連れて伯都ニートナル屋敷に戻り、垢と汚れを落とし輝く銀髪ボーイに仕立て上げて師父ネイトナル様にお目通り願う。

 師父はどういうわけかあきらめ顔であられた。


「……弟弟子おとうとでしの増員? 金と銀でユニット編成? ……好きにしろ」

「お任せください。三年で魔術師組合に……」

「それはもういいから。とにかく、おまえが責任を持って面倒を見るように」

「イエス、マスター」


 晩秋から冬の間、スコールの兄貴を護衛兼荷物担ぎとし、ハヅキは毎週のように迷宮街へ通った。

 持ち込んだ荷の半分くらいはヨス傭兵団へ卸し、半分くらいを露店で売りさばくが、自警団との顔つなぎができているので、妙なトラブルはないらしい。


「姉が十九で、妹のリュクレースが十三だって」

「貴族的婚姻政策には重要な年代っぽいけど、肝心の領地を失ってはどうなんだろな」

「んー、家臣たちもおるけん、平民落ちを甘受するわけにもいかんようで、困っとるいうとこらしいわあ」


 スコールの兄貴には闘気術の基礎になる錬気瞑想に加えて読み書きと計算、養成院流の護身術もさわりだけ教授中。

 養成院流は棒術よりなので、剣を使う兄貴にはあまり向かない。体裁きについては、俺自身がろくなものでないので教えようがない。実戦の中で覚えていくという。


「死んだら終わりだかんな。無理しない範囲でやってくさ」

「そうしてくれよ、本当に」


 俺が迷宮行きに参加できるのはよくて隔週。

 魔物狩り(ハンター)のウェンレイトンさんの都合がつくときに、護衛を頼んでの迷宮チャレンジとなる。

 ポーションの仕込みや弟弟子たちの世話、自分自身の修行と勉強もおろそかにできないので、仕方ない。


 弟弟子たちに関しては、自分より下の子が加わったことがヤクートにもよい刺激となったのか、以前にもまして積極的になった気がする。

 迷宮街から連れてきたレオーネは、何で俺がとかわけがわからないよとか言いながらも、逃げもせず工房で働き、俺の課した修行もこなしている。

 ヤクートの母のユリアさんに甘えている姿は見て見ぬふりをしてやるのも、男の情けというものだろう。

 齢六歳だそうだし、ねえ。


「突然子どもを連れてくるから驚いたが、悪いことにはなっていないようだな」

「ウヅキー、護身術の訓練、あがったぞー」

「つ、つぎは、詠唱ですね」


 師父の視察に俺は胸を張ってこたえた。


「歌とダンスはアイドルの基本ですからね!」

「……ああ、うん、詠唱と護身術か。うん、そうだな」


 やる気に満ちた弟弟子たちが、自ら鍛錬に進んでいく。

 P心に響くよい光景だ。だというのに師父は、なぜか弱い声で呟いて去って行った。せぬ。

 それはそれとして、兄弟子らしい講義もビシッときめてやらねばな。


「つうわけで、【マジック・アロー】の呪文、通常語に訳してみ」

「はいっ。ええーと……我がうちにある命のかけらよ、我が前に集い、我が前の敵を打て。【魔法の矢】」


 どういうわけか呪文って、やけに詩的表現にこだわるんだよなあ。

 いや意味はあるか。中二病は魂奮わせるものでありますから。

 俺だってその気になれば、竜をスレイブしちゃうような呪文とか、七つの鍵の力で地獄の門を開いちゃうような呪文とか、ソラで詠ずることはできちゃうけどさ。

 我ながら、よく覚えているものだ。


「『(魔力の)集中、(標的)指定、発動』ですむやん。やってることはその三ステップだけなんだし」

「そ、それはもしかして『短縮呪文』の極意でしょうか!」

「え、まじ? ウヅキって短縮詠唱できるガチもんなの!?」


 魔法語は手続き言語とはミナヅキの談だが、演算処理的な部分を自分自身で行う関係か、手順を示すに過ぎない呪文もわりかしファジーなのよね。


 スポーツや武術、日常生活でも、いちいちどの筋肉をどう動かしてなんて意識しないでしょ。

 魔法も同じ。術式の手順を意識しないでもできるように、身体や魂に刻み込む。


 だから、よく訓練したものは『短縮呪文』で問題ないし、発動語キーワードをショートカットにしてあとは無意識に任せる感じで放てちゃったりもする。

 もっと言えば『無詠唱』もできる。


 結局、イメージ。

 なので師弟関係によって、継承されたイメージの差で同じ呪文でも形状が違うという流派みたいなものもできる。


 中二病とイメージといえば、 ヤマトゥーン男爵家から教会に送り込まれた俺たちの友人、ハイラルを忘れてはいけない。

 無害なはずの光の術を攻撃魔法に変えた男として一部地域で有名なんだよ、あいつ。


 俗に【ハイラル・フラッシュ】と名付けた光の術の変形・改造魔法は、意外と難しい術になった。

 本来の法術でいう光の術や呪符の光玉は、術者が継続的に魔力を送り込むことで発光体を維持する。

 対してハイラル・フラッシュは、とにかく力任せに魔力を送り込んだ発光体を制御できなくての暴発、瞬間開放のため、初動の魔力消費量がわりとでかい。


 半ばおふざけの悪乗りで作用機序を整えて呪文化してみたものの、使い手は極めて少ない。

 ……いやだってほら、魔法語にある程度習熟したら、オリジナル呪文の作成はロマンですやん?


「僕専用呪文……フフッ、フフフ」

「非殺傷攻撃呪文って、ニッチな需要はありそうなんだがなあ」


 そんな手ぬるいこと言わずに、殺してから考えればいいじゃない?

 まあそうですね。そういう世情ですもんね。


 そのハイラルだが、安息日の友人のつどいでは、ミナヅキともども愚痴が増えた。

 勉強漬けの自分たちと比して、外の世界に出始めた俺たちがうらやましく思えるらしい。

 そう言われてもなあ。


 冬が過ぎゆき春の迫るその日の集会では、真剣な顔をしたハヅキが相談があると切り出した。


「買戻し、しよ思うてまんねん」



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