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(そ、そんなのありっ?!)
声にならない困惑を、熱や光の奔流が押し流していく。
キラキラと足や手が次々に輝きだし眩しくて目を開けていられない。
キュラーン、という不思議なエフェクト音がどこからか響き、なぜか洋服が脱げる感覚が……っておい。勝手に乙女を裸にすんな。犯罪だろ。で、……しばらくして光が収まったかと思うと……うん。まぁ、予想はついてたけど、お約束の大きなリボンついたフリフリのドレス姿の格好で先に星がついたステッキをもっていた。
「推理系魔法少女まじかる★スミレ参上っ」
っていうのは、黒猫が裏声で叫んだ。断じて私じゃない。イタいわ。
「……………なにそれ」
じろり、と冷たい目で黒い猫を見てやると、
「もうっ!駄目じゃないか!」
なにやら憤慨のようすである。またタシタシと前足が地面をたたく。
「魔法少女は変身時に自分の名前と必殺技使用時に技の名前は絶対叫ばないといけないんだよ!? これは守るべき様式美だっ! 分かったらイエスサーと言いたまえっ 僕がかわりに言ったのは、初回サービスなんだからね?!」
ノリノリで説明された上に、最後にぴこん、と片目ウィンクされた。
なんていうか……変身魔法(?)の発動からこっち猫のテンションが高すぎる。
話が通じそうにない。
ちょっと頭を冷やしてもらおうか。
かわいい猫だからって容赦してると話の主導権が握れない。
力任せに黒猫をがっと掴み、ぷらーんとぶら下げて、宣言する。
「未成年(以下甲)に詐欺的な契約を無理やり結ばせて、甲の裸を問答無用で路上で露出した罪は重い。執行猶予で3年。罰金35万の支払いを命ずる」
「なに?!その罪状の微妙なリアリティ?!」
があん、と頭をゆらしながら猫は叫ぶ。
「とにかく法廷で戦われたくなければ、キリキリ魔法の契約とやらを説明なさい。全部よ。聞かれてないから言わなかったとか後から言わないで、今、全部はきなさい。で、願いの代償はなに?」
「えーと。君が心配するようなことはとくにないんだけどなー。
下級世界に魔法もちこんで、少女が奮闘して夢と勇気と希望の物語が紡がれるところを、上級世界でエンターテイメントとしてテレビ的なもので放送してるだけだから。」
「……肖像権をとても侵害される気がするけど。
まぁ、放送されるのが、別世界ならいいか……」
どうやら、魂がぶんどられる系の悪魔の契約ではなかったので、一安心でした。
ゆっくり
ゆっくり
っーか、全然推理に入らなくてすみません。