第二話 夫とのすれ違い
時が経つほどに自分が自分でなくなってゆく
どこかに自分を置き去りにしてきたかのような
空っぽの自分がいた
夫は仕事が趣味というような
もっぱら仕事人間だ
新婚旅行が唯一とってくれた休みだろうか
そんな夫を頼もしく思っていた
結婚してすぐに産まれた佳奈はもう五歳になったとてもかわいい
目に入れても痛くないとは本当だった
いたずらをしても笑えてしまう
この子がいてくれて本当によかった
夫も佳奈にはさからえない
佳奈はいつもパパにいう『早く帰って来てね』
その約束は果たされていない。
朝は佳奈が寝ているうちに出勤し、夜は寝てから帰ってくる
ほとんど母子家庭だ
それでも佳奈は今日はきっと早く帰ってくる、そう思っている
私はとうに諦めた
というか、この生活に すっかり馴染んでしまっていた。最初のころは佳奈も赤ちゃんで大変だった
初めての育児
それも結婚する予定もなくハプニングで産まれたような佳奈
かわいらしさと同時にとまどいも多かった
夫は仕事が忙しく休みの日には佳奈の世話も少しはしてくれたが
初めて佳奈が熱を出した日…
夫はいなかった
初めて佳奈が寝返りした日…
夫はいなかった
初めて佳奈がおすわりした日…
夫はいなかった
初めて佳奈がハイハイした日…
夫はいなかった
初めて佳奈がたっちした日…
夫はいなかった
初めて佳奈が歩いた日…夫はいなかった
私は次第に夫との距離ができていた
少しずつ何かが違ってきていた
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