表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/41

016:あねさん、あねさん、強いのね。

ティスベの口調がだいぶ壊れてきています……一応、意図的、なハズ。

プルリと震えたら、またしても肩を抱かれそうになった。

それで私側の手を空けていたんだな!

懲りない男と無言の攻防をしている間も、姉と殿下の会話は進む。

姉さん、殿下のうそ寒さは無視ですか?


「お調べ頂いているのならば、既にご存知のことと推察申し上げます。我が家の内情はあまりに振るわず、やんごとなきお方をおもてなしすることなど、とてもとても……」


しかし、素晴らしい口上は、途中で遮られる。


「儀礼口調は止めなさいと言ったよね?」

「申し訳ございません」


先程とは違った冷気が漂ってきて、流石の姉も身を震わせ即座に謝罪した。


「で、端的に言うと?」

「お客様をもてなす余裕も無ければ、お部屋もご用意できません」


殿下が冷気を引っ込めたからって姉さん、ぶっちゃけ過ぎでは?!

目を剥く私など居ないかのように、殿下は姉に向けて安心させるように悪戯っぽく笑んだ。


「食材に関しては少し持ってきているから、それを調理してもらおうかな」

「しかし、料理人も家庭料理の域を出ないかと……」


渋る姉さん、頑張れ姉さん!

心の中で声援を送る私は、気付かない内に手の中のものを握りしめていた。

それをどう解釈したのか、隣から余計な助け船が飛び出す。


「夜食をもらったが、美味かったぞ?」

「はあ?いつの間に家の賄いを食べた?!」


反射的に斜め上を仰ぎ見た。

睨まれた方は悪びれもせず、あっさりと白状する。


「乳母を押し込んだ後、一息如何かと、そこの補佐?に供されたぞ?」


示し合わせたように、姉と二人で補佐をギッと見る。

もう、そのハゲ散らかった頭に同情なんてしてやらないぞ!


「お前の忠誠はどこにある!」


私の叱責が先に飛んだ。

その声を受け、補佐はゆるりと首を垂れる。


「勿論、(おん)子爵家にございます。お取り潰しの憂き目を見たくなければ、隠密に協力せよとのお達しで……」


言葉が途切れ、胃を擦る。

ああ、それで胃が痛かったのか。

小心で苦労性な補佐に、やはり憐憫の念を抱いてしまった。

気勢を削がれ、姉とどうしようかと目を交わしていると、その視線は顔ごと逸らされる。

殿下の手によって。


「ダンディーニの口に合ったのなら問題ないよ。楽しみだな、君との食事」


わざわざ見つめ合って、無駄に何かを垂れ流すな!

と、言ってやれたらどんなに楽だったことか。


「この際ですから、殿下も無意味に薄ら寒い芝居がかったお言葉遣いは、止めて頂けないでしょうか?」


姉ぇぇえええっ!

真顔で殿下になんてことを言っちゃってるんだ!!

横で物足りなさそうにウロウロしていた手も凍る。


「善処しよう」

「その、多義的で空虚なご返答も」

「……中庸さを求められる立場であることは理解してもらいたい」

「わたくしは求めておりませんので」

「君には敵わないな」


殿下は何がそんなに楽しいのか、蕩ける甘さで微笑んでいた。

そして、一種異様な空気のまま居間から食堂へと移る運びとなる。


で、泊る所の話が宙ぶらりんなんですけど?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ