015:暑かったり、寒かったり。
お互いに軽く自己紹介を済ませ、改めて客間に落ち着いた四人は、異様な配置だった。
私とダンディーニは先程と同じ二人掛けに隣り合って。
殿下は上座の一人掛けに。
姉は、何故だか殿下の膝の上で横抱きに。
何、この混沌っぷり。
居心地悪そうに俯く姉は、耳まで羞恥に染め上げている。
物問いたげに見詰める私たち二人を華麗にスルーして、殿下はダンディーニに報告を促した。
「状況は?その様子だと、そちらも上手くいったみたいだけど」
穏やかな頬笑みを浮かべたまま、少しずつ離れようとしていた姉を、背を支えていた腕で引き寄せる。
もう一方の手は姉の頤を掬い上げ、小さな子どもをあやす様に額に唇を落とした。
「大人しくして居なさい。それとも、お仕置きして欲しい?」
一連の仕草に照れなど一切なく、手慣れている。
世の女性の『憧れの王子様』を体現したような麗人が醸す濃厚な雰囲気に中てられて背中がむず痒くなり、座りの悪いお尻をモジモジさせていたら何を勘違いしたのか隣のいかつい男が肩を抱き寄せようとしてきたので、叩き落しておいた。
弾かれた手と私を憮然と見比べていたが、諦めて部下の顔に戻ったダンディーニは、殿下の方へ向き直る。
「まずまず、だ。昨夜、不審な動きを見せた女を拘束し、抑留してある。また、その女の不在に取り乱した末娘も、激しく抵抗したので同様に一室に押し込んでおいた」
「女と末娘?」
殿下の不審そうな声に思わず私は俯き、逆に姉はパッと顔を上げた気配がした。
「どうしました?」
うっとりとした問いは、姉に向けたものだろう。
案の定、姉が答える。
「発言しても?」
「何でも聞いていいよ」
「今回の視察、対象は我が子爵家だったのですね?」
「そうだね」
「経緯の全てをお聞かせ願えますか?」
緊張で少し震えながら口にした姉の願いは私と同じものなので、萎縮する気持ちを奮い立たせて殿下の方を見る。
――――しかし、話の内容にそぐわない空間だ。
睦言でも交わしかねない雰囲気で見つめ合う姉と殿下を目にして、早くも挫けそうになった。
その時、片手をきゅっと握られる。
そちらに目を向けると、ダンディーニが意外と穏やかな眼差しで頷いてきた。
大丈夫だ?俺が居る?貴方は私のナニのつもりなんだ!?
少し神経が毛羽立ったが、殿下に目を戻しても意外に落ち着いて居られたので、そのままにしておいた。
何かがダダ漏れている殿下は、やはり直視に耐えないが……。
しかし何故、彼は私とは反対側の手をわざわざ伸ばしてきてるのかな。
「そうだなあ、どこから話そうか。恐らく長い話になるから、夕食を挟んでにしよう」
「本日は、どちらにお泊りに?」
何かを察知したのか、強張った姉の声は如実に緊張を伝えてきた。
「おや、この寒空の中、放り出すつもりかい?小鹿の君は、実は雪の女王だったのかな」
悲しそうな眼差しで零す殿下。
憂い顔も秀麗デスネ、殿下。
デモ、暖炉がともるこの部屋の中で、何故か寒気がシマス。




