『エメル』の戦い
郷に向かう途中に、敵に襲われたジュリ、闇の生き物に襲われる。
緑に満ちていた郷のまわりの木々は無残に倒れたり黒コゲになっている。
「ジュリさん、ご無事でしたか。」
マントを頭から被った少年が現れる。
「翔、久しぶりだな。」
鳥に意識をのせれる『水の郷』の密偵翔だ。
「こちら側の敵はなんとか追いはらいましたが丘に近い場所はまだ戦いが続いてます。敵に魔術を使う者もいて苦戦しているようです。タイガーの子供ですか?連れて行かないほうがいい敵は聖獣や魔術師の気を取るんです。」
一羽の妙な鳥が頭上を飛ぶ。
翔が弓をひいて鳥を落とすがまた羽ばたく。
「雷烈剣!」
ジュリが作り出した光の矢にいおたされ鳥はギャーと悲鳴をあげ落ちる。
「これは気封じの玉、その子を俺に預けてください。この玉と一緒に『水の郷』に連れて行きます。」
翔に子供をあずける。
「森に敵がひそんでいるから気をつけろよ。」
翔が頷きかけだす。
そして茂みに消えた。
「こいつも闇の生き物だ。操れるやつがいるということだな、やっかいだな。」
気を引き締め、集中する。
近くに術師はいないようだ。
黒コゲの大地の向こうに緑のコケの生えた塀が見える、エメルを囲む塀のだ。
その一部が大きく崩れている。
住民たちだろうか人の長い列が見える。
黒い、毛皮のベストをきた兵士は『雲の郷』の兵士だろう。
頭に巻いたバンドに刺したティの羽が輝いている。
レッドを降りて金髪の男性に近づく。
「ピース、久しぶりだな。」
同士で今は『雲の郷』、鳥の守りを務めているピースだ。
「ああ、ジュリきてたのか。」
戦いの刺青を目元にいれているので表情がきつくみえる。
「住民は無事か?」
「男達は戦いでだいぶ犠牲になった。俺たちがついた時はだいぶこの辺も激戦になっていたけど魔術で操れた人間ばかりだったからなんとか治った。守りはかけてるが魔力を吸い取る術を使える敵がいるから長くはもたないだろう。ベルガモット様は最後まで残ることを決意された。長の屋敷に敵がくるのをカシスが防いでいるが、強い魔力にはおてあげだ。
俺は民達を安全な場所に避難させたら戻るからジュリ、応戦を頼んだ。」
頭に刺していた灰色の小さな羽をジュリにたくす。
鳥の羽を託すのは鳥一族の独特なやり方だ、渡す者への信頼をしめしている。
「ああ、闇の獣を使う獣使いもたぶんいる。」
ジュリの言葉にピースが眉をあげる。
「先にいる仲間に知らせよう。」
手をあげると手首に刻まれた色鮮やかな模様が宙を舞う。
「キリエ、伝言を頼んだぞ。」
小さな灰色の鳥は異世界から迷いこんだコノハズクという鳥でピースの小さな相棒だ。
軽くピースの耳を噛んでから飛んでいく。
言葉がなくても心の声でピースと会話できるようだ。
「ピース、レッドを使え。こいつなら岩のも駆け上がる。」
蔵の後ろから荷物を取り出し体にしっかり巻きつける。
「ありがとう助かる。」
レッドをピースの元におき剣を片を片手に進む。
ベルガモットの屋敷は郷の中心にある。
水のせせらぎが聞こえる、緑豊かな郷なのだが、せせらぎが聞こえない。
水が湧き出す岩場で立ちどまり顔をしかめる。
水が出ていないのだ、たまった水だけが揺れている。
突然、黒い蔦が地面から伸びる。
「あぶねえ、地火風!」
焼き払ってもまた生えてくる。
食い止めなきゃやべえな、あんまりやりたくねえけど。
「地石氷!」
バリバリ、大地までの壁ができる。
「ああ、後でベルガモットに怒られるな。」
隠れるきもネエてわけだ闇の気をこんなに出しちゃ俺だってわかる。
剣でなぎはらいながら術の主を探す、やがて剣が太い幹にあたった。
「人じゃねえてことは呪符か、なら話ははやえ。地火烈火!」
ボーと激しい音ともに木が燃え尽きた。
「ああ、暴れすぎっすよ。森がもえちまう。」
指から水をとばしながらチビの少年が飛び出してくる。
「仕方無えだろ。こいつの根が予測できなかったんだよ、確かにやりすぎたな。」
しっかりと大穴があき残骸が激しい地下の流れに飲まれていく。
「たちが悪い術師っすね。ああ自己紹介おくれました。俺の名前はアクアていいます。水を使う術師です、まったく頭上がいきなり燃えたからおどろいた。」
髪の毛が少し焦げている。
「わりい、邪魔しちまって。俺は『牙一族』のジュリだ。水源に以上でもあるのか?」
「今のところはこの郷だけなんすけど水が地下に吸い込まれて以上なぐらい早く流れてるんす。俺や水にたけた者でもこいつを使わないと流されちまう。」
指につけた長い鉤爪のようなものを見せる。
「そうか、森の中でも大地にヒビがはいってところどころで水があがってる。何が起きてるかは俺にはわからねえけどな。『火の山』近くいくなら気をつけろよ赤い滝が流れているからあぶねえぞ。」
ジュリの言葉にアクアの顔がけわしくなる。
「あっちのやつらにすぐ知らせなきゃ情報ありがとう。んじゃ俺はまた水路の詮索に戻るっす。大地をえぐる技はなるべく控えてほしっす。」
そういうと少年は水路に消えていった。
空を見ると先ほどと同じ鳥が何羽かいる。
よく見るとタイガーの丘あたりをみんな目指してるようだ。
獣使いはあっちか。
目をこらすと白いタイガーの毛皮をみにまとった兵士が来るのが見えた。
「敵の襲撃かと思ったらジュリじゃないか。」
ベルガモットの息子、ライムだ。
「暴れすぎた。オヤジさんはぶじか?」
「ああなんとか今のところは食い止めてるけどもつか、カシスさんが来てくれて助かった。戦いを知らないものばかりで血気だけはさかんだからボロボロだったんだ。」
毛皮のあちこちがきれて傷が見える。
「よし、応戦にいく。」
ライム達と合流して郷の入り口をめざす。
木々とこの地、特産の麦がある大地が黒コゲだ。
「みな者、峰打ちで頼む。術をとけばこの者達は敵ではない。」
カシスの声が聞こえる、目をこらすと牙龍達が地に攻撃するのが見える。
「あれが敵さんの艦隊か。」
ギラギラ光る乗り物がみえる。
「ああ、飛行していた奴は牙龍達が倒したが、敵の攻撃は収まらない。」
また地面が騒ぎだす。
「きたな、獣か植物か。」
その時だ頭が痛くなるような呪波がおそいかかってきた。
「ウワッなんだ。」
その時、強い光が舞った。
頭を抱えこんでいたジュリは顔を上にあげる。
一頭の美しいペガサスが通り過ぎた。
黒い気が薙ぎ払われていく。




