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化物列伝ピカタ三四郎  作者: ピカタ三四郎
第一章
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閑話休題 安宅真白の憂鬱


 肉の世界は斯くも玄奧也…。



 安宅真白の検索履歴は、肉の事項で埋没していた。

 その日、友人(人?)三四の兄、ピカタ三四郎の肉体を間近で目撃した真白は明らかに冷静を欠いていた。普段であれば、勉強も終わり入浴を済ませ、簡素だが趣向を凝らしたベッドにきゅうきゅうと沈んでいる時間である。それを何か、事もあろうに雄々しい肉体を思い浮かべては物憂げに溜息をついているのだ。



(なんか、おかしいな…)



 彼女の検索のお供、去年の誕生日の折に祖父母からお祝いとして買い与えられた小さめのパーソナルコンピュータ。乙女らしい淡い色合いに、気持ち丸っとしたフォルム。お気に入りの可愛いキャラクターのシールを貼って、彼女らしい飾りっ気も見える。

 とは言えとは言え、彼女もうっかり、万が一にも自分の調べ物を見られやしないか、秘め事を暴かれやしないか…至って健全な可愛らしい心配を抱えていた。家族共用ではないとはいえ、年頃に男も女も関係ない、調べ物の際に検索履歴は無論、アクセス先への履歴等にも各段の注意を払っていた。

 おぉ、それが何たることか! 今や彼女のブラウザの検索履歴は、物々しい迫力満点の単語に溢れかえっているではないか!


 その夜の彼女は、自身も認める程狂っていた。



(ちょっと、おかしいのかな…)



 深夜を鑑み、消灯しパソコンの灯りのみを頼りに検索は続く。視力に良かろうはずもないが、真白はただただ熱中していた。そして、画面右下のデジタル時計が子四つを示すと、彼女は一つ伸びをし、合点がいった様子で鼻から息を吐きだした。



「これは、シンソールだ。本物じゃない」



 素人では一見看破出来そうにない、完璧な仕上がりに見える肉体。殺気すら感じられる迫真のポージング。その画像を隅から隅まで舐る様な目線で鋭く観察する真白。少女の幼さを残す眼光は、一夜にして職人のそれへと変貌を遂げていた。そして、肉体の壮麗に隠された有るか無いかの小さな不自然を見出すと、見詰め、見破った。



「…私、何やってるんだろう」



 作業が終わり、熱が冷め始めると真白は今までの時間を思いつつ、惜しみない後悔を挟んだ。これは、睡眠時間を削ってでもやるべき事だっただろうか? 視力低下のリスクを冒してまで取るべき行動だっただろうか? 無論、結論は口に出すまでもなかった。


 それでも記憶に焼き付いて燻る、大きく、鋭く、それでいて美を宿す洗練された肉体。



「……」



 少女の夜更かしは、まだ続きそうである。

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