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フルメタル・ドラグーン  作者: 長物守
33/33

最終話「新しい朝へ」

・今までのあらすじ


 空だけしか存在しない世界は今、謎の敵メタドロンに脅かされていた。

 竜騎士だった少年カイムは、新たに屍棺機龍という力を得て立ち上がる。

 仲間たちと共に戦い、旧世紀の秘密に触れ、メタドロンへの怒りに燃えて戦う。

 そんな泣かで、空の底へと落ちかけた浮島を、必死で救おうとした。

 その時奇跡が起こって、そして少年は……変わらぬ日常に戻ってきたのだった。

 カイムは夢を見ていた。

 最後の力を使い切って、ここは天国かとも思った。

 だが、違った。

 目覚めた時は白い天井が見えて、自分はベッドの上に寝かされていた。そして気付けば、(ほお)に涙の乾いた感触。


「僕は……あれ? いつのまに……?」


 どうやらここは、どこかの病室のようだ。

 床を伝ってくる振動から、飛翔船(クラフトシップ)、それも軍艦だとわかる。母艦のバハムートの医務室は、まだ世話になったことがないから知らないが、ここがそうかもしれない。

 そして、自分が寝ているベッドに身を投げ出し、眠りこけている少女がいた。

 それは、同じ孤児院で育った妹分のメイムだった。


「メイム……そっか、心配かけちゃったんだな」


 身を起こして、そっとのツインテールの髪に触れる。

 メイムは「ん……」と鼻から抜けるような声を零して、起きる様子はなかった。

 でも、どうやら無事らしい。

 彼女が無事ということは、母艦も助かったということだ。

 あのメタドロンの大群は退(しりぞ)けられ、アダムもイヴごと破壊された。

 だが、バルティア共和国の首都はどうなったのか?

 落ちゆく浮島(うきじま)を救えたのだろうか。

 そう思っていると、不意に(となり)で声がした。


「おはようございます、カイム」


 突然のことで驚いた。

 全く人の気配がしない、それくらい物静かな少女が座っている。静謐(せいひつ)とさえ言っていい空気の中で、彼女は手にした何かを静かに()んでいた。

 カイムの視線に気付いて、イデヤはそれを口から話す。


「これですか? ビーフジャーキーです。調理場からもらってきました。食べますか?」

「いや……ずっとここに?」


 カイムの声に(うなず)きながら、イデヤは手にしたビーフジャーキーを二つに裂く。

 イデヤはこう見えて、とても肉食だ。

 動物性のタンパク質が大好きなのである。

 彼女は真っ二つになったビーフジャーキーを、難しい顔で交互に見詰める。最近何故(なぜ)か、カイムはイデヤの無表情に感情を拾うことができる気がした。

 やや悩んでから、イデヤは大きい方をカイムにくれた。


「しょ、食欲は特に……っていうかこれ、さっき凄く(かじ)ってたよね」

「大丈夫です、まだ味がします。旨味(うまみ)が凝縮されてます。……一週間ぶりですね、カイム」

「えっ?」

「カイムはあのあと気を失って、一週間眠りっぱなしでした」


 驚きに右手で顔を覆う。

 ひんやりとした義手の硬さが、夢ではないことを教えてくれた。

 そして、実際に夢見た中での再会を思い出す。


「……アダムは? セシリア先輩は」

(すで)に格納庫で、アダムの調査と検証が始まっています。完全に機能を停止、無力化しましたので。セシリア・アーベントは……ごめんなさい。私が殺しました」

「それは違う! もう、死んでたんだ。奴らは、死体を、死人を……」


 夢の中で何度も、セシリアに会った。

 話したし触れ合った、昔のような二人になった気がした。

 そしてそれが、悲しいほどに過去だと今はわかってしまう。

 死んだ人間はもう、戻らない。

 この世に戻してはいけないのだ。

 そんな簡単なことさえも、メタドロンの脅威は(くつがえ)してくる。

 決然たる怒りが湧いて、拳を握れば爪が食い込む。

 だが、半分以下になってしまったビーフジャーキーを一口で食べてしまうと、イデヤはいつもの透き通った声で話し出す。


「でも、目が覚めてよかった。もし起きなければ」

「……起きなければ?」

「また鼻を噛みます」

「ごめん、それは困る。そういのさ、メイムやアディに見られたらどうするのさ」

「少し説明が必要になりますね。私のアモンは、それはもう賢い竜でしたので。そう、あれは確か12の時です。その頃、私は」


 イデヤは相変わらず、マイペースだ。

 とても、絶叫を張り上げ鬼神の(ごと)く戦っていた少女とは思えない。

 彼女は、その可憐な容姿に不釣り合いな義足で立ち上がった。

 そして、そっとドアの方へと歩く。


「みんなに知らせてきます。とても、心配していましたから」

「あ、ありがとう」

「私も、心配しました」

「えっ……? な、なんで、かな」

「……噛みますよ?」


 本気ではないが、少しイデヤの気分を損ねたようだ。

 だが、彼女がドアを開けると、大勢の人間が病室に雪崩込(なだれこ)んできた。

 リュミアやアディータ、それに整備の面々である。驚いたことに、ブリッジ要員までチラホラと見受けられる。誰もが皆、折り重なって悲鳴やうめき声をあげていた。

 その騒ぎで、メイムもムニャムニャと目を覚ます。


「あ……お兄ちゃんっ! よかったあ、起きたんだ。もぉ、バカァ!」

「ごめん、メイム。心配かけちゃったね」

「わたしは平気、いつものことだから。でも、みんなが」


 改めて見れば、立ち上がったリュミアが真っ先に駆け寄ってきた。彼女の眼鏡(めがね)の奥で、片方だけ瞳が(うる)んで揺れていた。義眼と違って、生まれながらの眼からは涙が溢れそうだ。


「カイム君、なんて無茶をしたの! もぉ……お姉さん、怒ってるんですからね! 君の判断力は信用してるけど、一言相談して頂戴(ちょうだい)!」

「す、すみません! ……以前、セシリア先輩にも同じことを何度も」

「……彼女のことは残念だったわ。遺体はできるだけ集めたから、改めてリヴァリースの土地で(とむら)ってあげなきゃ」

「やっぱり、死んでたんですよね」

「ええ。そして、その遺体からアダムはかなりの情報を吸い上げていたみたいね。そういうこと、平気でするのよ……メタドロンって」


 リュミアの笑顔が(かげ)りを帯びた。

 そういえば、彼女の右目が義眼になってしまった訳をまだ、聞いていない。

 そしてそれは、あまりにも冷徹で冷酷な、メタドロンの所業(しょぎょう)だと察することができた。

 だが、彼女はすぐに微笑(ほほえ)み抱き締めてくれた。

 妙に気安くて、家族のように親身になってくれる。

 セシリアのことを思い出したが、カイムは今はリュミアに感謝した。

 しかし、アディータは不機嫌そうである。


「で? アンタ、アレはなに? 参號騎(さんごうき)、大変なことになってんだけど」

「あっ、ジークヒルト! どうしてるかな」

「格納庫に運んだけど、コクピットのハッチを開けてくれないの。あの双頭(そうとう)の、人龍(じんりゅう)? だっけ? 意志があるのよ。多分、アンタ以外を中に入れないつもりね」


 (えさ)は食べるんだけど、とアディータは肩を(すく)めた。

 それでカイムは、そっとリュミアやメイムを引き剥がす。ベッドを飛び降り、居並ぶ面々に頭を下げるや、走り出した。

 すぐに着いてきたのは、イデヤとアディータだった。


「カイム、格納庫へ。そこにあの子がいます」

「それよりアンタ、なんで裸なのよ! エッチ!」

「落ち着いて下さい、アディ。カイムはちゃんとトランクスをはいてます」

「そういう問題じゃないっての!」


 二人共、元気そうでよかった。

 アディータは、大好きな姉を二度も失ったのだ。一度だって耐えられない苦痛を、無理矢理繰り返させられたのである。それでも、自分が決着をつけねばと無理をしてくれた。

 だから、全てを背負ってイデヤが手を下したのだ。


「二人共、なんか……今まで通りだね。よかったよ。それより――ッ!」


 不意に、カイムは脚を止めた。

 小さな丸窓の中に、外の景色が見えたからだ。

 青い空。

 (まぶ)しい日差し。

 快晴の空に雲は高く、ゆっくりとたゆたっている。

 そして、少し上下に離れてしまったが、二つの浮島が重なるようにして浮いていた。バルティア共和国の首都、元は一つに繋がっていた土地である。

 ここからでもカイムの視力では、新しくケーブルを渡して交通手段を確保した人々がいた。少し危なっかしいが、(すで)にゴンドラの類が行き来している。


「無事、だったんだ」

「まーね。アンタが押し上げたんじゃん? 最後のなにあれ、火を吹いたわ。ビックリって感じ」

勿論(もちろん)、私やアディ、多くの竜騎士(ドラグーン)たちが手伝ってくれました。だから今、あそこに辛うじてあの大地は浮いています」


 カイムたちが戦った、その意味が、証が目の前にあった。

 食い入る用に三人で、(ひたい)を寄せ合って窓に張り付く。

 だが、そんな穏やかな時間も長くは続かなかった。

 突然警報が鳴り出し、その緊張感に不釣り合いな声がボソボソとスピーカーから響く。


『あー、ん、んっ……リュミア君、どこかね。その……敵襲、みたいだ。メタドロン、数は……沢山。早くブリッジに戻ってくれ(たま)え』


 その声は、イデヤの父アッシュだ。

 心なしか、世間や常識とは距離を置いてる男の声はぼんやりしてて、ぼやけて聴こえる。だが、彼が伝える危機は本物だ。

 まだ、この空には敵がいる。

 この空に浮かぶ大地の欠片(かけら)は、絶えず天敵に(おびや)かされているのだ。


「行こう、イデヤ! アディも! メタドロンは、叩いて潰すあっ! 僕たちで空を守るんだ!」


 頷きを拾って走り出す。

 その先では既に、格納庫から響く竜の咆吼(ほうこう)……時代の防人(さきもり)として覚醒した人龍ジークヒルトの雄叫びが二重に連なり聴こえてくる。

 終わらぬ戦いの中で、その意義を確かめる戦いは続くのだった。

この小説は




萌えて燃えろよ男の娘×巨大ロボ!『聖女禁装ゼスマリカ.XES-MARiKA』


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ロボット×女装男子!? 装甲<ドレス>を着せ替えて華麗に戦え……!




この小説は、宇宙の中で雲を飼う話『雲粒親娘』


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宇宙の神秘は女体の神秘、交わり混じれば……!?




現代日本でドラゴンに家族を奪われた少年がダンジョンに潜り復習を果たす物語『東京ドラゴンスレイヤー』


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遥かな未来で地球の少年と火星の少女が巡り会い、太陽系の星々の運命が巡り回る『オービタルエリス』


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影から影へと闇の中、現代の防人たちは鋼の魂に火を灯す!『KASTARD』


KASTARD:王叡知舞奈須著

https://cervan.jp/story/p/3715

柿丘市警察所・秘設特殊技能部隊群〈KASTARD〉――出動!




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甲王牙 ーKO-GAー:王叡知舞奈須著

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882739477

その異形、静穏を願う守護者也




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ACES ~極東の翼達~:柏沢蒼海著

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881500912

鋼鉄の翼に、無くした「希望」を乗せて……




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ミサキ~四つの御魂と縁の言霊~:結葉天樹著

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記憶喪失の幽霊が憑りついた!?逢魔が時に始まる退魔ファンタジー!




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イミテイター・イドル:靖乃椎子著

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逆襲物語ネイキッド・ブレイド

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異世界転生、しかして硬派な本格派SF!?『蟲狩りのアンダイナス』


蟲狩りのアンダイナス

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これは、少年が戦う理由を見付けるまでの物語。




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追放された錬金術師、実はトップクラスのパン職人!?日本のパンで旦那様を支える?:櫛田こころ

https://ncode.syosetu.com/n6496fe/

可愛い妖精相棒と共に、美味しい錬金術で日本のパンを作りまくる!




明日の未来を掴むため……竜を滅する竜となれ!『鋼殻牙龍ドラグリヲ』


鋼殻牙龍ドラグリヲ

https://ncode.syosetu.com/n4057be/

機械の龍と異能のケダモノが、未来を賭して殺しあう。




――の提供でお送りしました。

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