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槁木死灰の私から  作者: 案山子 劣四
桃李満門だった私達と紫苑

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148/189

第148話 桃李満門だった私達と勿忘②

「というわけで、連絡が取れるまでは(りょう)槿(むくげ)の処遇は保留となります。」


私がそう言うと、2人は小さく頷く。神妙な面持ちにはどこか安堵が見える。私よりも彼女達の方が彼等と関わる機会が多いし、きっと私と似た気持ちなのだろう。


まあ、彼女達も主に心配しているのは槿の処遇なのだろうが。


一瞬涼に同情しそうになるが、そうなったのも自業自得だし、そもそも彼が吸血鬼だったのを思い出してその思いを振り切る


「ちなみに今2人が作ろうとしている食事はーーー。」


「ああこれ?5人分作っているけど、もしかして今日いらなかった?」


「いえ、むしろ私が作ろうと思っていたので、とても助かります。ありがとうございます。」



そう言って少し照れたように手を振る一果(いちか)二葉(ふたば)が冷めた目で見つめる。私達の関係は昔から変わらないな、と今日見た夢の影響もあってか、少し懐かしい気持ちになる。



「では、月下(つきした)槿(むくげ)の朝食は私が持っていきましょう。ついでに先程の話を彼女にも伝えておきたいので。」


正直、保留している今の状況で顔を合わせるのは気まずいだろう、という私なりの配慮でもある。つい数日前までは友人関係であったはずだ。


それに、もし特にお咎めなしだった場合、あまり突き放し過ぎると関係の修復に時間がかかる。それはそれで考えものだ。



「私も行きます。」


そう言った二葉の声は、普段の冷めているがどこか楽しそうなトーンではなく、どこか怒気のようなものが込められているように感じた。


「別に、私だけでも問題ありませんが……。」



「昨日、色々あったので健康状態のチェックもしたいのです。それだとめーちゃんだけだとできないのです。」



二葉の言う事は一理ある。が、少し態度が気になる。ふと一果の方に目線をやると、私に目線で合図を送っていた。


読み解くと、どうやら昨日から槿に怒っているらしい。二葉の気持ちは理解出来るし共感出来るが、彼女がこんなに怒っているのは珍しいような気がする。



「一応言っておきますが、私にも伝わるのですよ、それ。」


「そうですが、口に出されるよりはマシでしょう。」


「口に出されるより癇に障るのです。」


「じゃあ口に出して言うね。なんか昨日から怒ってるんだよね、つ、……槿の事で。」



案の定、言葉にして出されたら出されたで二葉は顔をしかめる。が、気にせず話を続ける事にした。



「どうやらそのようですね。今日はやたらと珍しい事が起こりますね。」


天竺葵(てんじくあおい)大司教に連絡がつかなかった事といい、二葉が拗ねたことといい。



「それにしても、二葉がそれ程怒っているのも珍しい。念の為、理由を聞いてみてもよろしいでしょうか?」


「……言いたくないのです。それに今怒っている人が2人増えました。しばらく許さないのです。」


口をへの字に曲げて、二葉はそっぽを向く。私と一果は顔を見合わせて、困ったように笑う。こうして拗ねられるのは初めてじゃないので慣れたものだ。



「分かりました。しばらく許さなくて構いませんので、食事を持っていくのを手伝って頂けますか?」


「ご飯作るのも私がやるからさ。お願いしていい?」


「……分かりました。」



拗ねながらも二葉は承諾してくれた。こうして放っておけば、数分後には拗ねていたことを忘れている。



あまり引きずらない。それが二葉のいい所だ。



そんな二葉が引き摺る理由が少し気になるが、また質問して拗ねられるのも嫌だし、私は特に言及しない事にした。


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