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槁木死灰の私から  作者: 案山子 劣四
流れ出る血潮

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第121話 飛花落葉の私から⑤

『GingAモール』に来て2時間後。私は楽しそうに専門店でシスター服を眺める3人を少し近くのソファに座りながら眺めていた。そんなお店があるんだ、と思いながら。



そうしているのには理由がある、とは言っても大した理由じゃない。


さっきまでいろんなお店で散々着せ替え人形にさせられたから。


『寝巻以外はいつも同じ服ばかりだから、試しに色々な服を着てみるのです。』と二葉(ふたば)が言うと、それに同調した2人に色々と着せられた。



私はあまり自分の身体が好きではないから、更衣室の姿見に痩せた自分の姿が映るたびに劣等感を覚えたけれど、着替えた服装を彼女達に褒められるのは、正直、嬉しかった。


それはそれとして疲れたから、今ソファに座っているわけだけれど。



平日の午前中なのもあってか、この規模の施設にしてはまばらな人数だ。それでも楽しそうに笑う子供や、楽しそうなカップルたちを見るとどこか非日常的な気持ちに浸れる。



いつか、(りょう)ともこういう所に遊びに行きたいし、一度でいいから、涼が黒以外の服を着ているのも見てみたいと思うけれど、彼は人混みが嫌いそうだし、夜でないと来れないから、少なくとも日が短くなる秋までは無理そうだな、と私は少しだけ肩を落とす。



「お待たせなのです。」


そんなことを考えていると、大きな買い物袋を持った二葉(ふたば)一果(いちか)、そしてニコニコとした表情で大きく手を振る小春(こはる)がこちらに向かってきた。


2人が満足げな表情をしていることから、きっといい買い物ができたのだろうな、と察することが出来た。全部シスター服なのだろうけれど。



「もうすぐお昼だし、どこかでご飯食べよっか。つばきち、どこ行きたい?」


そう言って一果は小春に訊ねた。ちなみに、



「なんでもいいです!槿(むくげ)ちゃんは何が良いですか?」



「味が濃くないもの、かな。」



「凄いですね。ここまで意見の聞きがいのない2人もそういないのです。」



二葉は感心するように言う。彼女のいう事はごもっともだ。私もそう思う。



「じゃあ、いつも通りファミレスね。」



という一果の呆れと笑いが混じった言葉に私達は頷き、そのままショッピングモール内のファミリーレストランに移動した。




ーーーーーー





「それでさ、最近れーくんとはどうなの?」




皆がおおよそ食べ終わるくらいの頃に、一果は小春に身を乗り出しながらそう訊ねた。何故かその目にはじっとりとした湿り気を帯びた熱のようなものがあり、関係ない私でも少し不気味なものを感じる。実際、小春もその異質な様子に少し困惑した様子だった。



「一果。ハルが困っているのです。あと目が怖いのです。」


パフェのそこに残ったコーンフレークを冷めた目でつつきながら二葉はそう指摘した。一果は少し恥ずかしそうに、椅子に座りなおし、再び口を開いた。



「ごめんごめん。ちょっと食い気味だったね。普通に恋バナしようってだけだからさ。」



改めてそう言われた小春は、


「わ、私と連花さんはそんな関係じゃないですよ!」


と大きな声に負けないくらい大きく手を振り、顔を真っ赤にして否定した。



「えー本当?でも別に嫌いじゃないんだよね?」



にやにやとした表情で一果は頬杖をつきながら小春に問い詰める。なんで自分から心の傷を負いにいこうとしているのかが私には理解できない。



もしかして、もう連花のことは諦めたのか、とも思ったが、それにしては少し辛そうな表情もしている。首を傾げながら、私はうどんを噛んだ。



「き、嫌いじゃないし、かっこいいとはおもいますけど…………。」


赤面をしながらもじもじと答える小春は乙女らしい表情をしていて、同性の私でもときめいてしまう程可愛らしかった。



「絶対好きじゃん、それぇー。」


それを嬉しそうに、けれどどこか辛そうに眺める一果が少し怖くて、私は話を変えることにした。



「そういえば、二葉は朝の幽霊の人はどうするつもりなの?」



その言葉を聞いて、二葉は分かりやすく肩を落とした。


「これ以上一緒にいるのはあの人も苦しむことになるから、明日除霊するのです…………。」



「絶対そうしてよ?」


釘を刺すように一果は厳しい目線を二葉に向ける。


「幽霊の人ってなんですか!?」



「ああ、あのねーーー」



今日の朝の事を小春に説明すると、彼女はみるみる顔が青ざめていった。



「めっちゃ危ないじゃないですか…………!?」



「まあ、めっちゃ危ないけれど教会ないなら大丈夫だよ。なんなら明日の朝、一緒に見守る?」



「ええっ!?怖いからいいです!!」



慌てた様子で、小春は断る。何度も会っている涼が実は吸血鬼だと伝えたら彼女はどんな反応をするのか少し悪戯心が芽生えたけれど、流石にそんなことはしない。



「というか、金良(かなよし)さんを見世物にしないでほしいのです。」


「だって、いつもより本気っぽいからさ。他の人にも見守られてた方が引っ張られずに済むかなと思って。つっきーは、どうする?」



むくれる二葉を宥めて、一果は私に聞いた。正直興味はあるし、それが二葉の為になるというのなら、私はーーー



「そうしたら、私も一緒に見てようかな。」







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