14
味方。
誤解されてしまった日の翌日。
浅い眠りから目を覚ましても尚、誤解されたままでは嫌だという答えは変わっていない。
これは執着なのか、それとも何か別の名前が付く感情なのか。
その正体に思考を割り当てるよりも、結局はどうやって謝罪の場を設けるかの方法も何一つとして考えられないまま、僕は朝を迎えていた。
昨日から考え続けたにもかかわらず何の解決策も生み出せていない僕は、何故か楽観的な気の持ちようでいた。
それは半ばパニックに陥っては思考に脳のリソースを割かれていた昨晩の反動のようで、一晩が経って冷静さを取り戻した朝の時点では、楠木さんの誤解を解くべく意気揚々とした心持ちで学校に乗り込んでいくのであった。
だがしかし、そんな僕の楽観的思考は登校して早々、朝の早い時間の段階で現実を叩き付けられる。
僕は今日、一日の殆どを用いてでも楠木さんの誤解を解くべく奔走するつもりだった。
だというのに、楠木さんは朝一番に僕の顔を見つけるなり、眼力で人が殺せると思わせるような鋭い眼光を向けてきた。比喩でもなんでもなく、生まれて初めて感じる命の危機。
当然、死の恐怖に対抗する術など持ち得ていない僕はすごすごと引き下がる羽目になり、彼女の視界に映る度に怪訝な眼差しを向けられてしまうため、声を掛けることすらできないまま午前の時間を無駄にして過ごした。
ならばと思い昼休みの時間を狙ったのだが、この日は僕の所属する美化委員会の持ち回りの担当日であるが故に、僕は貴重な昼休みの時間を職務に捧げざるを得ず、昼休みも誤解を解くには至らなかった。
今日を過ぎれば明日以降で声を掛けるハードルは更に上がっていくばかり、と考えた僕は残りの時間で全力を尽くすと誓い、今度は昼食後初めの時間にある体育の授業を狙った。
二クラス合同の授業は体育祭に向けての測定が多く、もしかしたら隙の時間が生まれるかも、と思っていたが、そんな僕の期待は容易く裏切られる。授業は当たり前に男女別で進行され、僕は見ての通り誰からも期待されることのない平凡以下の成績を収めるに至った。
授業後、汗一つかいていない佇まいで戻って来た楠木さんはきっとすばらしい成績を収めたに違いない。
他の女子たちが口々に彼女を噂する声が聞こえてきたので、多分、きっと、そうだと思う。クラスメイトが大勢いる前で彼女の口から昨日のことを聞く、なんて勇気があれば、朝の時点で今日の目標は達成していたことだろう。
僕が悪いんだ、僕が浅はかだったんだ。
そんな自責の念ばかりが募っていき、時間が経過するごとに増えていく不安から吐き出される溜め息が吐かれる度に一晩かけて作り上げられた勇気の結晶が少しずつ削り取られていくかのようで、放課後になった頃には「無理かもしれない」という強い不安が僕を包んでいた。
「遊佐さんは今日もサボり? 全く困ったものね」
「もう、慣れたので」
「私からも声かけて見てるんだけどねぇ……。涼村くんはこの後も部活? 二人で仲良くね。はい、お菓子あげるわね」
「あ、ありがとうございます」
そうやって楠木さんに接近しようと試みた今日一日の時間はどれも無為に終わりを迎えてしまう。
昼休みにもあった委員会の持ち回り日。
担当箇所を掃除して、手入れしてと与えられた仕事を全うした後に委員会の担当教員である勅使河原先生に報告を終わらせる。
毎週火曜は僕ともう一人の美化委員が担当なのだが、当たり前のように僕一人に押し付けられ、いつもの倍の時間がかかってしまう。時間がかかると部活に顔を出すのが遅れるのが酷く恐ろしかったのだが、美化委員の仕事である掃除は嫌いからこそ、ありとあらゆる面で間が悪くて鈍臭い自分に苛立ちをも募らせる。
今日という今日は遅れてはならなかったと痛感しつつ、勅使河原先生の手から受け取った『かりんとうまんじゅう』は、今日一日で疲弊し切った僕の心を潤す宝石のように見えて仕方がなかった。
勅使河原先生の城である保健室を後にした僕は、急く気持ちが表れているかのような早足で部室に向かう。
「今日は来てるかな……。遅くなっちゃった」
ただし、昨日の今日で彼女が部活に顔を出しているとは考えにくい。
決して急ぐことはないのだが、もしも万が一彼女が先に待っているようであれば、待たせる訳にもいかないだろう。
視界の端で過ぎ去っていく外の景色に見向きもせずに部室に向かっていると、部室の近くまで来た辺りで僕は違和感を覚える。
「……声? 部室からだ」
映像研究部がある部室は技術棟と呼ばれる本校舎の中でもとりわけ人気のない一角。
特に放課後になれば技術棟に用があるのは四階にある美術部員か、もしくは一階の映像研究部員のみ。
だからこそ、これまで部室の周りは静寂に包まれていたのだが、どうしてか今日は部室のある方向から騒がしい声が聞こえてくることに若干の恐怖が湧いてくる。
「……」
楠木さんが映画を見ている、なんてお気楽な思考ができれば万々歳ではあるが、部室から漏れ聞こえてくる声に彼女のものが混ざっていることからその可能性は限りなくゼロに近くなる。
であるならば一体部室の中で何が起こっているのか、と恐る恐る近付いて覗き込むと、そこに居たのは楠木さんの他に、複数名。
見覚えのある、教室でも目立つクラスメイト達だった。
「はははっ、マジかよ。あの女王様が補習受けてるとか!」
「お高くとまってた割に、学力は平均以下ですかぁ!?」
「それに、こんな埃っぽい部活に入ってるなんて、女王様の名折れじゃないっすか?」
「女王様っていうか、灰被り?」
「だっさ。こんな頭悪いやつにあたしら見下されてたのかよ」
「はっ、見ろよコレ。半分くらい間違えてやがる」
「っ……! 返しなさい、よッ!!」
どんな達人でも、三人相手にすれば負ける可能性がある。
そんな言葉があるくらい数の有利というのは大きいもので、目立つクラスメイト四名に迫られる楠木さんは、自分の身を守ることで精一杯だった。
そもそも彼女自身人との付き合いが上手い方ではないからこそ孤立しているのである。こうして真正面から相手取れる程口が達者なわけでも、ずば抜けて強いわけでもない。
いつだって余裕のある楠木さんの声からは威勢が抜け落ち、どこか恐怖に竦んだ声に聞こえるのは気のせいだろうか。
だからといって、教室の隅で存在感を消すことしか取り柄のないような僕が助けに入ったところで何ができるというのか。
そもそも助けに入るという行動自体が間違っているのではないか。楠木さんは僕に助けてもらうことを望んでいるはずがない。昨日、あんなにも怒らせてしまったのだから。
であるならば、ここで僕が取るべき選択はただ一つ。今すぐに教員の誰かを呼びに行って間に入ってもらうこと。
そうと決まれば、僕は早急にこの場を離れるべきなのだが、部室から聞こえてきた声に僕の足は地面に接着剤でも付いているかのように離れなくなり、身動きの一つも取れなくなってしまうのだった。
「お? なんだこれ。って、楠木のやつ、自分が載ってる雑誌を部室に置いてるぜ! イテぇ~!!」
「っ、それは、駄目……ッ!!」
「おっと。そう言われると余計返したくなくなるもんだ。ほら、パス」
「へへっ、はい次ッ」
あぁ、最悪だ。
彼女の声が、濁っている。
そのせいで後ろに向いたはずの足を止めたというのに。
それでも僕は、部室に入る勇気が得られないでいた。
昨日聞かされたから、分かる。
楠木さんは、周りが思っているよりもずっと、強くなんてない。
人並みの幸せ、人並みの生活を望む、人並みの価値観を持ち合わせたごく一般的などこにでもいる女子高生に他ならないんだ。
ちょっとしたことですぐにムキになるし、自分にも他者にも厳しいのは、自分自身を守るための鎧のようなもの。他の人たちみたいに仲間を作るのではなく、敵を作らないように孤立を選んだだけ。
ただそのやり方が不器用なだけ。こんなことを僕に思われるのも癪だろうが、彼女は僕と同じくらい、不器用な人だ。
そのせいで彼女は誤解され、結果的に敵を作ることに繋がっているのだった。
それが分かっているからこそ、昨日あんな風に言われたとしても彼女のことを嫌いになれなかった。
「うわっ、こいつ自分の所に付箋なんて貼ってる。気持ちわる」
「自意識カジョ―だな」
「えーっと、なになに。『綺麗だ。これ以外に表現する言葉が見つからないくらい、綺麗だ』、だって!! うわキモっ! なにこれ! キモ過ぎるんだけど!!」
「陳腐すぎて鳥肌立っちまったよ」
「聞いてる方が体調悪くなるくらい、だっせぇ……」
「ッ、やめて……ッ! それは、私の、大切なものなの……! 私の、ファンに貰った、大切な言葉なの……! あんた達みたいな、能無しの猿には相応しくなんてない、私の宝物なの!!! だから──」
「あーうるさいうるさい。捕まえといてね」
「痛いッ! 放してよ……、返してよ……ッ!」
だからこそ、僕は楠木さんの「仲間」でいたい。
同じくらい不器用な者同士、傷を舐め合うわけではないけれど、一人でいるよりはマシだろうから。
それも、唯一なんかじゃなくていい。
楠木さんの人間としての魅力が理解されるようになれば、彼女の周囲はすぐにたくさんの魅力的な花々で埋め尽くされるだろう。そうなれば蕾のまま萎れていくだけの名も無き草でしかない僕には見向きもしなくなるだろうけど、そんな御役御免になる日まで、僕は彼女の味方で居たいと強く願う。
それくらい楠木さんは魅力がある人だって、僕は知っているから。
だから僕は、何があっても味方でいることを証明しなければならない。彼女を、絶対に一人にしないために。
「……ようやくボロを出したようだけどさ、いつもいつもあたしらのこと見下してたのは分かってんだよ。目に見えて分かる運動神経じゃあんたに及びはしないけどさぁ、お前はあたしらより頭が悪いってことが分かった今、お前はあたしらより下なの。……見下してるやつよりも下なら、今度からお前はあたしらに見下される側なの。虐げられる側なの!! そこんとこ、分かってんの?」
「どっちが上とか、そんなこと知らないわよ! ……それに何かしたら、絶対、許さないからッ!!」
「……そんなにこれが大事なんだ。へぇ……、そう。なら、あたしらがあんたにやられてきたこと、お返しして上げる。……こう、やってね!!!!」
窓の向こうで目立つクラスメイトが雑誌を頭上に掲げた次の瞬間、僕は考えるより先に身体を動かしていた。
びりっ、と紙の束が破けるような音が部室に響いたかと思うと、駆け込んできた僕を見て驚愕に染まる目立つクラスメイトの表情が目に飛び込んでくる。
だが、僕の目が捉える先は彼女ではなく、その目立つクラスメイトの手の中で蹂躙される寸前の雑誌。
「きゃあっ!?!?」
僕は、ヒーローでもなんでもない。
ただの楠木さんの味方でありたいと願ったが故の行動は、目立つクラスメイトの手に捕まるまいと雑誌目掛けて飛び込んでいくという、自分の身も顧みない危険極まりない行動だった。
楠木さんが「宝物」、とまで言った半分まで裂かれた雑誌を手の中に収めた僕は、それだけでホッと胸を撫で下ろした矢先、目の前にまで迫った未来のこと、着地のことなど頭の中からすっかり抜け落ちているのだった。
それに加えて、雑誌を破ろうとしていた目立つクラスメイトまでもを巻き込んだ僕の突飛な行動を受け止めてくれる人など誰もおらず、勢いに任せて自由落下する僕の体は机を薙ぎ倒して、放課後の学校中に響き渡ってもおかしくはないような大きな音を立てて僕の体は乱雑に積まれた机の瓦礫の中へと吸い込まれて行く。
直後。
シン──と静まり返った部室の中で、僕は呻きながら体を起こす。
「い、ったぁ……!!」
「す、涼村くん、大丈夫……?」
「お、おい、大丈夫なのか?」
痛い。とにかく頭が、全身が痛い。
頭がガンガンする。
目の前がくらくらする。
僕の運動神経では片手に雑誌を、片手に目立つクラスメイトの頭を抱えたまま受け身を取るなんていう超人的な真似ができるはずもなく、僕の体は重力に従うようにして落ちて行った先で、部室内に並んだ埃を被った机の縁に額を激しくぶつけていた。それ以外にも大きく派手に転倒したことで全身に激しい痛みが走る。
その影響で一瞬視界がブラックアウトするに至ったが、それでも楠木さんの声になんとか反応を示すことができたのは、僕に欠けていた根性が今になって目を覚ましたお陰だろうか。
なんて、雑誌とクラスメイトのせいのように語ってはいるが、もし仮に両手が空いていたとしても結果は変わらなかったように思える。
「…………な、何してんのよ!? は、離れて!!!!??」
僕の突飛な行動に巻き込まれた目立つクラスメイトの女子に怪我がないか確認しようと思い、彼女の頭を抱いた腕を取り払おうとすると、彼女は怪我一つなかったようで、無事かどうかを伺った彼女の取り巻きの一人に連れ出されるようにして元気に立ち上がってみせる。
巻き込んで怪我でもさせてしまったら、と思っていたので何事も無くて良かった。
「はい、楠木さん。ちょっと破れちゃったけど」
「あ、ありがとう。取り返して、くれて……」
衝撃で部室の棚からは映画のケースが落ちたりしているが、埃がもうもうと立っていること以外何の変化もない。それくらいは後で片付ければなんとかなる。
問題は、目の前の目立つクラスメイト達だろう。
派手に打ち付けた額を手のひらで抑えながら、当初の目的が『突然現れては奇行に走った変な男』と言う存在の出現によって上書きされてしまい呆然と立ちすくむしかない目立つクラスメイト達に面と向かって、僕は言い放つ。
「な、何よ……!」
「楠木さんは、確かに、ちょっとだけ勉強の出来が悪い」
「ちょ、ちょっと、何言って──」
「でも楠木さんは、それを『やらない理由』にはしないんだ。どんなに嫌いでも、どんだけ苦手でも、クラスの底辺にいるような僕に対して頭を下げて教えを請うてでも課題に取り組もうとするくらい、自分に言い訳をしない人なんだ。僕はそれが、とてもかっこいいと思う。運動だって、なんでもできるわけじゃない。もちろん、生まれ持った才能とかはあるだろうけど、楠木さんが努力していることくらい、一目見れば分かるはずだよ。そうじゃなきゃ、モデルの仕事だってできるわけない。それで……えぇと、つまり何が言いたいかというと、楠木さんは、自分の才能に胡坐をかいて出来ないあなた達を笑っているんじゃない、っていうこと。それを勝手に勘違いして、見下されてるって思うのは、お門違いなんじゃない? それで、人の大切なものまで壊そうとするなんて、以ての外じゃない? って、僕は思うんだけど……」
こんなにも口がスルスル動くのは、生まれて初めてかもしれない。
もしかしたら、頭を打った影響かもしれないが、今はそんなこと関係無いくらい、彼女の魅力を語りたくて仕方が無かった。
楠木さんを理解して上げて欲しい。彼女はすごいんだと、分かって欲しい。
僕も彼女とたった一週間と少ししか接していないけれども、それだけでも十分彼女の凄さは伝わっている。
そして僕なんかよりもずっと人との関りが上手な彼女たちならば、僕よりももっと短い時間で彼女の良さを理解できるはずなんだ。
僕はそのことをどうしても伝えたくて、彼女が誤解されているのが許せなくて割り込んだのだが、果たしてこれは余計なお世話だっただろうか。
なんて考えていると、すっかり勢いの削がれた様子の目立つクラスメイトの女子が一番に口を開いた。
「で、でも、こいつは、あたしらのこと、能無しの猿だ、って……! はっきりと、見下してるじゃない!!」
「それは……、あー……、確かに、楠木さんは口も性格も悪いけど。で、でも、悪い子じゃないんだ。本当なんだよ」
「ちょっと、涼村くん!!」
「す、涼村……、あんたは、こいつのなんなのよ……!」
「僕? 僕は」
はた、とそこで言葉を止めると、思ったような言葉が出てこない。
知り合い、というには余りにも肩入れしすぎているような気もするし。
仲間、というとなんだか暑苦しいし。
そうなると、必然的に残されたのはあの言葉だけで。
「──僕は、楠木さんの友達だよ」
後ろから息を飲むような音が聞こえたけれども、目立つクラスメイト達からは意外そうな視線を受ける。
「君達のやり方には、あんまり賛成できないから、今すぐにでも楠木さんに謝って欲しいんだけれども……」
「な、なんであたしらが、こいつなんかに!!」
「そう? それなら……そうだね、さっきの音は結構響いたと思うよ。きっともうすぐ先生たちが駆け付けてくる。そうなったら、受験も控えてるこの時期に暴力を振るった、なんてバツが付くのは、誰も望まないと思うけど」
「っ、脅す、つもり?」
「ご想像に、お任せしますけど。逃げるなら今の内じゃないかな?」
「くそっ……!」
頑なに楠木さんに謝ることを拒否した目立つクラスメイト達は、それぞれの顔色を携えて部室に転がっていた各々の鞄を手に去って行く。
そうして乱雑に散らかされた部室に残ったのが楠木さんと僕だけになった時、僕はようやく深い溜め息を吐いて床に倒れるように転がるのであった。
「はぁぁぁぁぁぁぁ……! 痛い、痛いよぉ……」
「あ、あんた……何やってんのよ……! 先生もすぐに来るんでしょ?」
「よ、呼んでもいないのに先生は来ないよ。もしかしたら偶然通り掛かるかもしれないけど……」
「でも、だって、今」
「全部、嘘。あの人達が楠木さんに謝ってくれるならそれが一番だったけど……。ていうか、頭痛い、全身が痛すぎる。やばいよ」
「全部って、どこまでが──って!? 血っ!? 血が出てるじゃない!? だ、大丈夫なの!? と、とにかく、保健室に」
「だ、大丈夫だよ。ひ、一人で行けるから」
「大丈夫なわけないでしょ!!」
「ひぃぃ……ごめんなさい」
「ほら、肩貸してあげるから。歩ける? それとも、先生呼んでくる?」
「あ、歩ける。歩けるから……というか、近い」
「頭は危険なの! いいから黙って、歩くの!」
僕を立って歩かせるために密着する楠木さんからはなんだかいい匂いがする。
密着されたお陰で女性の柔らかな体が直に触れられているのだが、頭を打った場所がガンガンと響くせいでその感触に集中することは疎か、どんなものだったかも思い出せなくなりそう。
そんなろくでも無いことを考えながらも頭痛にうなされる僕は、額から流れるのが血なのか汗なのか分からないまま、楠木さんの手によって保健室へと救急搬送されていくのであった。