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VRMMO RPGで記憶を取り戻す為にレアジョブ【合成士】で冒険する  作者: 語黎蒼
第3章 【|奪取領域《バトルフィールド》】
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8.妖精『エリー』

「エリー…やるしかないみたいだ」

「うん…」

「安心しろ、お前は俺が守る!」

「うん!」


 元気のないエリーを励ます。それと同時に自分にも気合を入れる。


「こっちは準備が出来た。いつでも良いぜ」

「それじゃあ始めようか!…っと言ってもPvPは君を呼んだ時点で始まってるんだよね」

「それなら勝手に始めさせてもらう!『召喚!』ナイト!」

「良いね!『召喚!』フレト!さあ!始めよう!召喚士同士の戦いを!」


 俺の前にナイトが召喚され、朔實の前には炎の模様が入った赤い狼が召喚される。


「赤い狼?」

「マリー!あの召喚獣は『フレイムウルフ』レッドウルフが進化して火を操ることができるようになった狼だよ!」

「なるほどな、サンキュー」

「さすが詳しいね、エリー」


 ここは様子見なんてせず、攻める!


「ナイト!鎧を半分だけ剣に変えて攻撃だ!」

「フレト!迎撃しろ!」


 朔實は手に持っていた鞭を地面に打ち付けて命令する。


「ワウ!」

「ギャウ!」


 鎧の剣とフレイムウルフの生み出した炎がぶつかり合う。


「今だ、ナイト!残った鎧で手裏剣を作って横から攻撃しろ!」

「ワウ!」


 残った鎧が手裏剣となって、フレイムウルフに飛んでいく。


「ギャガ…!」


 フレイムウルフのお腹に直撃しHPが半分ほど削れる。


「やったぜ!…朔實、お前案外大したことがないようだな!」


 このままいけば勝てる!朔實の召喚獣は俺のナイトには絶対に勝てない…明らかにヤツの召喚獣のレベルが低い。


「フフフフフ…中々やるね。でもその程度じゃあ僕には勝てない!」

「強がるなよ。お前の召喚獣と戦って分かった。朔實、お前の召喚獣のレベルは低い!俺のナイトの敵じゃないぜ!」

「なるほど。たしかに僕の召喚獣のレベルは低い…でもそれを補う秘策があるんだよ!『召喚!』フーリエ!」


 朔實の側に小さな魔法陣が描かれる。


「…まさか?!妖精!」

「そのとおり!見せてあげるよ!僕の所持している妖精をね!」


 エリーのような可愛らしい妖精が召喚されると想像していたが、朔實の召喚した妖精には大きな首輪と手足には手枷がはめられていた。


「これは…!エリー、あの妖精はいつもあんな物を着けているのか?」

「違う…!!あれはレアリティ8の『服従の枷』…信頼度が低くても自分の命令を絶対に聞かせる召喚士専用のアイテムだよ!」

「コイツ…!!そんな装備を!」

「そんなに睨まないでよ。これは仕方ない事なんだからさ」

「仕方ない事だと?召喚獣に無理矢理アイテムで命令する事が仕方ない事だと!!」


 枷をはめられた妖精は意識が無いのか虚ろな目をしており微動だにしない。その姿を見ていると怒りが込み上げてくる。


「召喚獣とプレイヤーは互いに認め合い信頼し合っていくものだ!そんな悪趣味なアイテムを使って良い理由なんてない!!」

「フン!くだらない。説教なら僕に勝ってからにしてよね!」

「くっ…」


 コイツに勝ってあの妖精を解放してやらないと!

 そう意気込んだ後、疑問が浮かぶ。


「…待て、この状況で妖精を召喚してどうだっていうだ?妖精にはスキルもアビリティもないはずじゃ…」

「プッ…ハッハハハハハ!!本当に言ってるの?妖精にはスキルがないって!!?」

「なに…」

「そうか、そうか!君はエリーだから、そう思うのも当然だよね!妖精は皆んな、召喚士をサポートする絶対的なスキルを持ってるんだよ!」

「え?!」


 そうだったのか…そういえばエリーを召喚した時に何か言っていた気がするな。


「でもエリーは『飛行」と『翻訳』だったか…?」

「…ふ〜ん。エリー、嘘を教えるのは感心しないな〜」

「嘘?」


 エリーを見ると、目を逸らして俯く。

 エリーが俺に嘘を吐いていた…?


「教えてもらってないなら僕が教えてあげるよ。エリーのスキルは『召喚士のスキルで失うMPを100までなら何度でも肩代わりする』効果だよ。まあ、エリーは他の妖精のスキルに比べると遥かに劣る劣化品だからね」

「劣化品だと …!!」

「その通り、劣化品だよ!エリーにはたったの100しかMPを肩代わり出来ない。だからAIのくせに【N–EAW】について勉強して僕たち姉弟に取り入ろうとしたんだよ!まあ、知識があったところで能力が使えないんじゃ選ばれないけどね!」


 朔實の言葉を聞いて俺の心の中に怒りはなかった。


「ふっ…」

「…僕の話を聞いてエリーに対して呆れてしまったか?」

「いや、お前たち無能な姉弟がエリーを選ばなかったお陰で、回り回ってエリーは俺に召喚されたんだ。感謝しないとな」

「なに?僕たち姉弟が無能だと!!」

「ああ!そうだ!!エリーの優しさやユーモラスさ!ゲーム知識に状況判断能力!それに可愛い見た目!それに気付かずに選ばなかったお前らは無能だ!」


 ずっとエリーの悪口を言われていたので言い返せてスッとする。


「エリー…」


 俯くエリーの肩がビクッと動き、ゆっくりと俺を見つめる。


「マリー…ごめんなさい!私…他の妖精の姉妹達のスキルの中で1番弱いの!!だからマリーに話すのが怖かった…!あの時、誰にも選んでもらえなくて!…それで、マリーにまで必要ないって言われたら嫌だったから、何か特殊なスキルを持っているように思わせていたかったの…!!」


 エリーは悔しいのか、悲しいのか着ているワンピースの裾をギュッと握って謝る。その体は俺に怒られると思っているのか震えている。


「そうだったのか…エリー」


 エリーの頭の上に人差し指を置く。


「なんだよ…そうだったんなら言えよ。今まで俺のが召喚する度にMPを代わりに払っててくれたんだろ?」

「うん…怒らないの?」

「バーカ、怒るかよ。でも俺がもしエリーに怒るとするなら、それは黙ってMPを払ってくれてた事に対してだよ。隠し事はなしだ…だって俺たちはパートナーだろ?ありがとな、エリー」


 人差し指で頭を撫でてやる。エリーは顔を隠すように頭を下げる。


「ありがとう…マリー…!!召喚獣ってのはレアリティ×10のMPを払って召喚できるの。だから私には召喚を手助けすることしか出来ないけど…どうか、こんな私の事を…今ままでみたいに相棒って呼んでくれる?!」


 頭から指を退かすとエリーは顔を上げる。その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。


「当たり前だろ…俺の相棒はエリー、お前だけだ!」

「ありがとう!マリー!」


 俺とエリーはお互いに見つめ合う。


「美しい友情だね〜。でもこれが最後の会話になると思うと悲しい事だよね〜」

「そんなこと絶対にありえない!俺がお前を倒すんだからな!」

「その言葉、今から召喚する召喚獣を見ても言えるかな?」


 朔實が両手を上げる。


「マリーちゃん、君は『この状況で妖精を召喚してどうだって言うんだ?』って言ったね。教えてあげるよ!妖精のフーリエのスキルは『召喚に必要なMPを1度だけ0にする』能力がある!」

「そんなことをして一体…いや、まさか!!」

「分かったようだね!君に、僕の持っているゴッドを見せてあげるよ!『召喚!!』」


 朔實の両手の上に数十メートルの召喚陣が描かれる。


「現れろ!!!魔王討伐兵器エルフ製『機械神 ゴッドキューゴ!!』」


 召喚陣から大きな赤い塊が飛び出す。


「なんだ…?」


 塊がどんどんと広がっていき、真っ赤な孔雀のロボットが朔實の背後に降り立つ。


「これが僕が所持するゴッドシリーズの1体…『機械神 ゴッドキューゴ』だ!!」

「デカイ…これがゴッド…!!」


 こんなのに攻撃されてしまったら俺や召喚獣たちは耐える事が出来るのだろうか。


「くっ、ちくしょう…!」


 俺はゴッドを睨む。

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