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#16 3人だけの密会

『見てよこなっちゃん、これ、一緒に受けてみない?』


『……これは?』


『あの有名な企業Vtuberの会社のオーディション。高校の時に目にしてからもう憧れちゃって。どうしてもこなっちゃんと一緒に受けてみたいんだ』


『Vtuberって……あの画面の前でたくさんお喋りするやつだよね。私……いけるのかな。あんな元気よく喋れないよ』


『大丈夫大丈夫、オーディションはトーク力より歌唱力を見られるから。こなっちゃん歌めっちゃ上手いじゃん』


『……やってみよっか』




『やった〜!受かったよ!』


『え、私も……!』


『やっぱこなっちゃん可愛いし歌上手いからね〜』


『そんなことないよ……』




『こなっちゃん……炎上しちゃった……』


『えっ……!?大丈夫?私でいいなら色々話聞いてあげるよ』


『え〜ん…大好きぃ、』




『200万人超えた〜!!』


『え、凄すぎ……!いつになっても追いつける気がしないよ……』


『大丈夫だって、数字を気にしすぎるのはよくないよ。まずは目の前のタスクを自分なりに努力してこなす。そこに結果と数字はついてくるから!こなっちゃんも頑張って!』


『……頑張ってみる』


◇◆◇◆◇


「……ちゃん、」


……?あれ、今なんか声が……


「汐ちゃん」


 聞き覚えのある声。どんな時も私のことを支えて、逆に支えたこともあった大親友の女の子の声が。


「汐ちゃん!」


「ひえっ!?」


 どうやら私、寝落ちしてたらしい。胡夏が私の顔を覗き込んでくる。私が寝落ちすることはとても珍しく、胡夏の顔からは心配の表情が読み取れる。


「……ごめんね、私、気づいたら寝ちゃってた」


「ほんと……?遊びの途中に寝落ちなんて……汐ちゃんらしくないよ……何か悩みとかあるの?」


 鋭い。胡夏、昔からこういうところあるんだよなあ。本当にとにかく感が鋭い。女の感レベル10くらい。

 心配性の胡夏に心の負担をかけるわけにはいかないし、私は事を1から話した。


「というわけなんだ」


「なるほどね。汐ちゃんなりのアタックだったってこと?」


「まぁね。私の性格上、お気に入りの相手には自分の秘密を言いたくなっちゃうの」


「……私もだよ」


 2人の間には晃司に対する感情の昂りの空気感がこれでもかと流れていた。当の本人はトイレに行っていた。


「汐ちゃんは言っちゃうの?」


「いつか言うつもりではいたけど、やっぱりいざとなるとほんと怖い。こなっちゃんの苦しさを今痛感できたよ」


「じゃあ言わないの?」


「いや」




 汐、寝落ちしてたな。寝顔可愛かったなぁ……はっ、なんでもない。

俺はさっきの寝顔を思い出しながら廊下を歩いていた。それと同時に、一つの疑問が生じる。


「汐のあんな表情見た事ないかもしれない」


 初めて会った時や、それ以来の遊び、ご飯を食べに行った時とかの汐のテンションや表情の中で、唯一の不機嫌。これは何か裏ありそう。

 ……え?待って?裏あるの?もう胡夏さんと千冬でお腹いっぱいなんだけど。もう勘弁してほしいな。これ以上意外を通り越した事実を聞くと脳がパンクして死ぬけど。でも流石にそこまですごい事じゃないはず……


「はははっ……」


 なんかよくわからなくなって、自分に向けて愛想笑いを放つ。……ちょっとでも脳の情報の容量を節約するために戻ったら聞いてみるか。




「汐、なんかさ、あんな不機嫌になるなんてなかったよな。なんかあったのか?」


「えっ……」


 部屋に戻った俺は開口一番汐に聞く。返事を待っているとまた汐は見たことのない顔をする。少し青ざめているようにも見えた。


「……まぁあそこまでして疑われないわけないよね」


「?」


「じゃあ幻夢、急遽リアルコラボしちゃう?」


「急すぎるって。別にいいけどさ、晃司くんのためなら」


 そう言って何やらゴソゴソしている。全く何を言っているのかわからない。ていうか何故急に幻夢の名前を呼ぶんだ。


「……やっぱ普通に言うよ。変なことするのやめよ」


そして汐は改まった態度と口調でゆっくりと口を開く。


「実は私、幻夢と同じ企業Vtuberの鴉舞陽毬なんだって言ったら晃司は信じる?」


「……は」


えっ。

じゃあ昨日のスパチャは。そういうことというわけですか……?

ちょっと待って、じゃあ最初のカラオケは、もしかして……


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」


俺は今までの行動を全て振り返った。その間実に0.8秒。その後全てを把握した。


「驚いた?」


「……驚かない方が不思議だわ」


 まさかの俺の視界に映っている人は全員超有名企業Vtuber。しかも両方100万人以上。幸せだけど俺は幸せな感情よりも驚きが勝つ。脳もパンク寸前だった。もうカラオケどこらじゃねぇ。

 そのまま俺は立ち尽くしたまま口をパクパクさせていた。そんな俺を見かねて、胡夏さんが俺の元に寄ってくる。


「驚かせてごめんね、晃司くん。汐ちゃんは本物の鴉舞陽毬なんだよ。本当は必要ないから言わないつもりだったんだけど、汐ちゃんが言いたいっていうから」


「そうなのか……?」


なんでだろうと思って汐の方へ顔を向ける。


「……」


汐の顔は赤くなっているような気がした。


「やっぱり言わないと。こなっちゃんと同じで仲良い人に隠し事するの嫌だし。それよりほら、歌おうよ。こんなこと気にしてたら楽しくないよ」


「晃司くん、みんなで歌お?」


「こんなこと」? いやいや、俺にとっては宝くじ1000万円当たったくらいの大事なんですがね。ていうか、これ、一種のハーレムだ。あんまり漫画でないようなケースの。レア度高すぎる。もしかしなくても夢な気がしてきた。


「じゃあ私から歌おうかな。もう言っちゃったし、この曲を堂々と歌える」


そう言って汐はさしてあったマイクを勢いよく引っこ抜く。


「聞いてください、『カゲロウHeart』」


 これは……正真正銘、陽毬のデビューオリ曲。まさかのリアル生ライブ。もうこんなのフリータイム代の1200円よりも100倍以上の価値があるだろ。

 今まではバレないために、歌声を少し変えていたらしいが、今回の歌声は圧巻だった。これが本物の陽毬の歌声か。


 この日の耳はとても心地が良かった。汐はもちろん、胡夏さんも自分のオリ曲を歌ってくれる。嗚呼、幸せ。


結局その日は11時から夜までぶっ通しで歌い続けた。


「もう9時かぁ、早いね」


「最後の方意識失いそうだったんだけど」


「晃司くんの歌声死ぬほど響いた。また明日も2人で来る?」


「流石に勘弁してくれ……」


そんなバカな話をしながら俺達はそれぞれ帰路につく…………はずだったのだが。




「あ、すいません、2名で素泊まりいいですか? はい、分かりましたありがとうございます」


「……え?何してんの汐」


素泊まり……? って、あの泊まるだけの予約方法だよな……?


「……っちょっと、私の彼氏!勝手に晃司くん連れて行かないでよ!いくなら私も!」


「あちゃー、まぁいっか。こなっちゃんも来ていいよ」


「やったー!」


「すいませんやっぱり3名に変更でお願いします」


ん? え?ちょっと待って?もしかしなくてもそういう事か?





やめてくれよ……

……マジで言ってんのか————!?!?

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