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自由の星の下で  作者: そーゆ
自由を求めて
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第八話:パウルスブルクの恐怖

パウルスブルクは、ルスラント・レーテ大管区の心臓だ。ドイツ・レーテ社会主義共和国が誇る「模範都市」は、コンクリートのビルと電灯の海で輝く。人民広場にはカール・ラデックの像が聳え、赤と黒の党旗が「団結は力、平等は未来」を謳う。だが、1957年の冬、その輝きは偽りだった。ゲルマニアの政治的混乱が影を落とし、ルスラント全土に不穏な風が吹く。赤剣団の監視が強まり、「協力者狩り」の恐怖が民衆を締め上げる。パウルスブルクの市場も、ノイシュタットの団地も、静かな怒りと怯えに震えていた。マンフレート・ベルンハルトとナディア・シュミットの小さな世界は、その嵐に飲み込まれようとしていた。


ノイシュタットの朝は、凍てつく霧に閉ざされていた。マンフレートは、人民学校の機械修理の授業に向かうため、ナディアの部屋――405号室――に立ち寄った。彼女は、革のコートとウシャンカを着て、配給のパンを手に待っていた。「マンフレート、遅いよ。電車、行っちゃうよ!」ナディアの声は明るかったが、瞳には昨夜の赤剣団の記憶が残っていた。あの調査以来、二人は監視の目を意識していた。


電車でパウルスブルクへ向かう途中、マンフレートは車内の異変に気づいた。いつもは労働者のざわめきで賑わう車内が、静かだった。窓の外、人民広場の検問所には、赤剣団の黒いコートが増えている。電光掲示板は、「フライエス・オイローパのテロリストに警戒せよ」と繰り返す。ナディアが、少年の袖を握った。「マンフレート……何か、変だよ。市場も静かだった」


マンフレートは、彼女の手を握り返した。「大丈夫だ。党が騒いでるだけさ。俺たち、関係ねえよ」だが、少年の胸には不安が広がっていた。ゲルマニアでの「政治的混乱」の噂――ラジオでは報じないが、市場の囁きが届いていた。党指導部の対立、ルスラントの抑圧への不満。それが、赤剣団の新たな弾圧を招いている。




人民学校に着くと、教室の空気はさらに重かった。マンフレートのクラスメイト、いつも冗談を飛ばすハンスの席が空いている。隣の席のエリカも、姿を消していた。教師は、無表情で授業を始めたが、黒板の後ろに貼られたスローガン「労働で未来を築け」が、虚しく響いた。休憩時間、クラスメイトのヨハンが、囁くように言った。「ハンスとエリカ、昨夜、赤剣団に連れてかれた。『協力者』だってさ。フライエス・オイローパのビラ持ってたって噂だ」


マンフレートの背筋が凍った。「協力者」狩り――フライエス・オイローパに関係すると疑われた者は、夜の闇に消える。教育指導所行きか、それとももっと悪い結末か。[[///検閲済///]]の笑顔が、少年の脳裏に浮かんだ。彼は、ナディアを疑った冗談を口にした男だった。だが、今、その軽口が命取りになったのかもしれない。マンフレートは、教室の窓から赤剣団の監視塔を見た。ルスラントの空は、灰色に閉ざされていた。


パウルスブルクの街は、赤剣団の網に覆われていた。市場の入り口には検問が設けられ、配給の列には身分証の提示が求められた。赤い腕章の民兵が、市民の鞄を漁り、怪しい目つきで質問を浴びせる。「フライエス・オイローパのビラを見たか?」「反体制の話を聞いたか?」――その声は、脅しだった。マンフレートは、ナディアを連れて市場を避け、裏路地で配給のパンを買った。だが、路地の壁には、赤いペンキで殴り書きされた言葉があった。「ラデックは嘘つきだ。自由を!」


ナディアが、少年の腕をつかんだ。「マンフレート、これ……フライエス・オイローパ? 怖いよ。あの人たち、爆弾とか使うんだよね?」彼女の声は震えていた。マンフレートは、彼女を落ち着かせようと笑った。「ただの落書きだ。気にすんな。赤剣団がすぐ消すよ」だが、少年の心は重かった。フライエス・オイローパの名は、恐怖の象徴だった。学校で教わった「テロリスト」のイメージ――血と炎に塗れた怪物――が、ナディアの怯えた瞳に映る。


その夜、ノイシュタットに暴動の噂が届いた。パウルスブルクの工業地帯で、労働者が配給の遅れに抗議し、赤剣団と衝突。ルスラントの他の都市――クルスク、ヴォルゴグラード――でも、市民が街頭に溢れた。ラジオは、「帝国主義者の扇動」と報じたが、市場の囁きは真実を語っていた。ゲルマニアの混乱が、ルスラントの民衆を焚きつけたのだ。赤剣団は、暴動を鎮圧するため、装甲車を繰り出し、催涙ガスで街を満たした。パウルスブルクの空は、煙と怒りに染まった。


マンフレートは、405号室でナディアとラジオを聞いた。放送は、「人民指導者の下、団結せよ」と繰り返すが、窓の外では、遠いサイレンが響く。ナディアは、膝を抱え、革のコートを握りしめた。「マンフレート……みんな、怒ってる。党が、こんな風に人を消すから。私、怖いよ。もし、私たちが……」


「そんなことねえ!」マンフレートは、彼女の肩をつかんだ。「ナディア、お前は俺の妹だ。書類も完璧だ。誰も疑わねえよ。俺が守るから」


だが、ナディアの恐怖は収まらなかった。彼女は、旧帝国の記憶を思い出した。燃える村、銃声、両親の叫び。ユダヤ人とロシア人の血を引く少女にとって、赤剣団のブーツの音は、過去の悪夢を呼び起こす。彼女は、配給のスープを口にしたが、すぐに吐き気を催し、バスルームに駆け込んだ。マンフレートは、慌てて後を追い、彼女の背をさすった。「ナディア、大丈夫か? 無理すんなよ」


ナディアは、床に座り、涙をこぼした。「ごめん……食べたのに、吐いちゃった。怖くて、頭がぐちゃぐちゃで……赤剣団が来たら、私、隠せないよ。パパとママみたいに、消される」彼女の手は、壊れたヴァイオリンの弓を探したが、それはもうなかった。骨董品店で売った50万マルクは、配給のパンに変わったが、彼女の心の支えは失われた。


マンフレートは、ナディアを抱きしめた。「消させねえ。お前はナディア・シュミットだ。俺の家族だ。赤剣団が何をしようと、俺がそばにいる」彼の声は、少年らしい不器用さで震えた。だが、その言葉は、ナディアの凍えた心に届いた。彼女は、少年のコートを握り、そっと頷いた。「ありがとう……マンフレート。あなたがいるから、私、頑張れる」


夜の誓い

その夜、二人は405号室で毛布にくるまった。窓の外では、ノイシュタットの団地が静寂に沈む。パウルスブルクの暴動は遠く、サイレンは止んだ。だが、赤剣団の監視塔の灯りは、闇を貫いていた。マンフレートは、ナディアの手を握り、囁いた。「ナディア、どんなことがあっても、俺たちは生き抜く。約束だ」


ナディアは、少年の目を見つめ、答えた。「うん……約束。私も、負けないよ」彼女の声は、恐怖を越え、かすかな決意を帯びていた。それは、ルスラントの凍てつく大地に根を下ろす、小さな火種だった。

Ziel: Hans Jürgens

Anklage: Besitz regierungsfeindlicher Propaganda, versuchte Aufstachelung zum Regime.

Behandlung: Teilnahme am Bildungscamp.

Ergebnis: Es gibt Raum für Rehabilitation.


---Im Namen des Volksführers, 9. Dezember 1957




Ziel: Erica Beitzel

Anklage: Mitgliedschaft in einer regierungsfeindlichen Organisation, versuchte Volksverhetzung gegen die Regierung.

Behandlung: Teilnahme an Bildungscamps.

Ergebnis: Tod durch Dehydration aufgrund von Erbrechen und Durchfall im Bildungslager


---Im Namen des Volksführers, 9. Dezember 1957

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