↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
94/97

閑話 地獄の始まり


「お姉ちゃん、成人と結婚おめでとう」


「アナ、ありがとう」


その日お姉ちゃんは成人を迎え、それと同時に結婚式が行われました。

これから嫁ぎ先に行ってしまうので、寂しくなるけど、キラキラした綺麗なドレス姿で笑うお姉ちゃんを見ているととてもうれしくなりました。


「宴もたけなわですが、パグワグ様とテティーナの結婚式を終了させていただきます」


お父さんがそう言う。

けど、ほどんどの人が会場に残って話をしています。

私もお母さんの後ろについてたくさんの人と挨拶をしました。


「アナ、大丈夫?」


普段はあまり人前に出ないので、会場の人に酔ってしまいました。

そんな私をみんなが心配してくれます。


「ごめんね、ちょっと休みたいかも」


「アナももう少ししたら社交界デビューしないといけないのだから、こういった場所も慣れなきゃだめよ」


お姉ちゃんはそう言って注意しますが、手を握って私を支えてくれます。


「とりあえず、母さんと帰りなさい」


「え、でも。お母さんは」


お父さんはそう言いますが、新婦さんは初夜の日は直前まで母親と過ごし、礼儀作法や失敗しないための秘訣などを習う伝統があります。

だから、今日はお姉ちゃんがお母さんと過ごさなきゃいけないのに。

でも、もう立っているのもやっとな私はみんなに支えられながら会場を後にしました。


「あなた、後はお願いします」


「分かった。アナ、ゆっくり休むんだぞ」


そう言ってお父さんはやさしくなでてくれました。

それが、私の知る最後の幸せな時間でした。


「大丈夫? あんまり無理はしちゃだめよ」


馬車に乗ると緊張の糸が切れたのか私は座席で横になってしまいました。

そんな私にお母さんは膝枕をして優しく頭を撫でてくれます。


「うん、少し気分がよくなった」


「それは良かった」


キキッツ!!


甲高い音と主に馬車が急停止しました。

いきなりの事で私はお母さんの膝の上から落ちて、頭をぶつけてしまいました。


「何が起きたのですか!?」


お母様は外の馬車の業者に声をかけますが、答えは返ってきません。

そして、周りからは悲鳴や苦痛にもだえる声が聞こえてきます。

夜闇の静かな空間から聞こえてくるそれはあまりにも不気味で体が震え上がりそうになりました。

でも、数分もすると完全なる静寂に包まれます。


バン!!


いきなりの音に身を縮めました。

音の正体は馬車の扉を無理やり開けたために起きた音で、開いた扉の先には恐ろしい顔をした人族の男たちがいたのでした。


「こいつが例のか?」


「白毛の狐人だから間違いねえですぜ」


「そうか、なら袋をかぶせろ。後、生き残りの女騎士も何人か乗せてけ。結構な上玉ぞろいだ。高く売れるだろう」


「へい」


男どもは汚い袋を私たちにかぶせようとします。

私を守ろうとお母様は必死に抵抗しますが、男性の力には勝てず馬車の外に連れだれてしまいました。


「や、やめて!」


怖くて必死に抵抗しました。

ですが、男どもはニヤニヤと薄気味悪い笑顔を私に向けます。


「イヤ!」


そう言って右手を伸ばすと、一人の男の顔に当たってしまいました。

その顔は先ほどとは打って変わって、怒りに満ちていました。


「お願い、やめて」


そんな私の願いなど聞いてくれるわけがなく、頭部の強い痛みと同時に意識は薄れていくのでした。


何かの悲鳴が聞こえる。

どこか遠いところ?

いえ、どんどん近づいてくる。

え?


目を覚ますとそこは惨状でした。

私は大柄な男に抱きかかえられ、首元にはナイフを突きつけられていました。


「ほら、この嬢ちゃんがどうなってもいいのか!?」


その声に見覚えのある女騎士たちが剣を握ります。

そして、逃げ惑う人族を殺して回りました。


「お願いやめて」


十数人いた人族達は皆抵抗もできずに殺されていきます。

その殺している女騎士たちの中にお母さんも。


「なんで、なんでこんなことを」


恐ろしくなり、体が震えました。

助けてほしくて涙が流れて。

でも、救いの手がないこの状況に体は動けなくって。


「助けて、お願い、誰か」


恐怖のあまり思わず目を閉じてしまいました。

しかし、本当の恐怖はまだそこで私を待っていました。


「こいつを殺せ」


そこには体中傷だらけの男の子が横たわっていました。

私にそう言った男は私にナイフを持たせます。


「痛くてつらいってよ~。なら、さっさと楽にさせてやりな」


そう言って薄気味悪い笑顔を私に向けてきます。

でも、そんなことできない。

人を殺すなんて。


「無理です」


「は?」


「できません」


「あっそ、なら」


少し離れたところで倒れているお母さんの髪を掴んで私の前に引っ張ってきます。

そして、大きな腕を振り上げると、お母さんに拳を振り落とす。


「やめ「おい!!」


男の大声で私は動けなくなった。


「お前が五秒そいつを殺さないごとに、こいつに拳をぶち込む。いいな?」


なにもよくない。

何もできない。

何もしたくな「ほら、二発目!」


「うぐっ」


お母さんのくぐもった声がもれる。

その口からは血が垂れだして。


「三発目!」


「かはっ」


とうとう口から血を吐き出して。


「やめて、死んじゃう」


「なら、お前はそいつを殺せ!!」


「でも!!」


「いくぞ、よんはつ「やめてえええええ!!」


気づくと、私は男の子の心臓を一突きにしていた。

内臓の潰れる感触。

鉄と生臭さの混じったような匂い。

目の前で小刻みに震える男の子。

そのどれもが悪夢で。


「早く覚めて」


しかし、これは現実で目が覚めることは無かった。

その後、私は目をふさぎ。

耳をふさぎ。

震えて過ごした。

たまに女性騎士のくぐもった声や悲鳴を聞くと恐怖のあまり、一睡もできなかった。

でもそれ以上に。


お母さんがどうなったか、分からなくて、怖かった。

感想やブックマークと☆☆☆☆☆を★★★★★にしてくれると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。