第七十六話 せっかく異世界に来たんだから、欲はかいてはいけない
夜遅くの投稿です。
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リリシアがギーレンの町に向かって三日が経った。
ギーレン公爵からの増援はいまだ来ない。
だが、よく考えれば戦争があるかもしれない状況で大きくは兵を動かすことはできない。
「だとすると、冒険者ギルドが主体でダンジョン管理をすることになると思います。それでも、公爵側も何かしらを送るはずではありますが」
「それでも、増援は来るんですね」
「こんな金の生る木を無駄にする人はいないかと」
「そうですね」
ダンジョンに入ればモンスターとの戦闘などで命を落とす人もいる。
だが、それでもダンジョンに人が入っていくのは魔鉱石はそれ以上に利益をもたらすものなのだ。
以前の世界では機械を動かすのに電気というエネルギーを使っていたが、この世界では魔力を使って魔道具や機械を動かすのだ。
この世界では多くの人間が魔力は持つが、全員が自由に扱えるわけでもない。
人によってはMPや魔力が低かったり、魔法適性を持っていない人もいる。
そんな人にでも扱えるようにするのが魔力を多く含む魔力結晶である。
これを使うことで誰もが魔道具や機械を使うことができるのだ。
また、魔力結晶は魔力の強さや内蔵するMPによって値段は変わるものの、決して安くない値段で取引されている。
魔力結晶を多く採掘できるダンジョンはまさに金の生る木であり、誰もがその所有権を欲しがるのだ。
しかし、ダンジョンの所有権は通常その土地の所有者が手にすることになるので、このダンジョンはキングレオ王国の所有になる。
だが、それでもダンジョンには他にも副次的な金策は多くある。
その一つがダンジョン村の形成だ。
ダンジョンに多くの冒険者が潜るのだが、その冒険者向けに宿屋や武器、雑貨屋ができ、その周りに人が住み始める。
そして、村が形成されるのだ。
そんな村に最初に長に認められた人が村長になる。
その座を多くの人間が求めているのだ。
「まあ、俺には興味がないことだな」
「教会の〈聖帝〉様ですものね」
教会ももちろんダンジョンに興味はあるが、別に村長になる必要はない。
だって、教会を建てしまえばいいのだから。
教会を建てれば、そこに寄付する寄り子や回復魔法を求めてくる冒険者が少なからずいる。
そこからもうけを出せばいいのだ。
それに多くの人と競い合ってまで村長の座を勝ち取ろうとする聖職者は世間体的にどうかと思うし。
「それにしても、潜ってみたいなあ」
前世でオタクだった俺はもちろんダンジョン物のゲームやマンガも多くたしなんできた。
入ってみたくなるのもサガなのだろう。
「入ってみます? 入り口までですが」
「え? でも、こういうのって冒険者じゃないとだめとか、何歳以上じゃないとだめとかあるんじゃないの?」
「基本、冒険者ギルドでは冒険者になる事。つまり十五歳以上じゃないと入ってはいけないってことになってますね」
「それなら」
「でも、今は誰も手を付けてないんですよ。大量の魔結晶が眠ってるんですよ」
デバミがそう、そそのかしてくる。
でも、俺は聖職者だ。
守るものもある。
危険に手を出すなんて!
「それに、お金が入ればご家族に色々買ってあげれるのでは?」
「デバミさん、俺はあなたがもっとまじめな人だと思ってましたよ」
「俺も公爵家お抱えとはいえ冒険者です。そこにお宝があるなら入ってみたいですし、何より今が暇すぎます。家族に土産の一つも持って行かないと」
「では、行きましょうか」
本当はダメだと分かって入る。
だが、ノンノやリリシアが喜ぶ。
その誘惑に勝てなかったのだ。
早速準備が終わると俺とデバミさんの二人で中に入るのだった。
「中は暖かいのですね」
「ダンジョンの中は常に気温が一定らしいです」
「なるほど、つまり夏は涼しく、冬は暖かいと」
「そう言う事になりますね」
入り口から少し入ると暗くはなるが足元が見えないほどではない。
それも、魔結晶が光っていたからだ。
「この魔結晶は光か火の魔結晶ですね。この二つの魔力が持つ魔結晶は光るんですよ」
「だから、これとかは魔力を帯びてるのに光ってないんですね」
「そう、なんですね。俺とかは魔法が使えないうえに魔力も少ないので、どれが魔力を帯びてるのか分からないんですよ」
「なるほど」
俺は入り口付近の魔結晶をスコップで掘っていく。
そんな時だった。
〈採取〉のスキルを所得しました。
頭の中にそう響いた。
前々から欲しかったが、ここで手に入ったか。
俺は再度スコップで掘っていくと先ほどより簡単に魔結晶を掘り出すことができたのだった。
「こんなものにしておきましょうか」
「そうですね」
俺は掘った魔結晶を風呂敷代わりにしたボロ布で包んで運び出す。
そんな時だった。
入り口を出ようとした時に足元が光り始めたのだった。
なんでここで魔術が!?
「ボルヴァード様!」
デバミの声で我に返りすぐに逃げ出そうとする。
デバミも俺を助けようと手を伸ばしてくれる。
だが、一瞬遅く。
気づくと俺は暗闇の中にいたのだった。




