第七十五話 せっかく異世界に来たんだから、ニヤニヤしよう。
よろしくお願いします。
面白いと思っていただけたら、ブックマークと☆☆☆☆☆を★★★★★にお願いします。
「おにいちゃん、やだ~」
先にギーレンの町に行ってもらうことになったリリシア達だった。
公爵への手紙も渡したし、後は見送るところでノンノが泣き出してしまったのだ。
今まで忙しくて一日二日会えない事はあったものの、期限が分からず長期で会えないという不安から泣き出してしまったのだ。
本来ならもう出発しないといけない時間なのだが依然として俺の足にしがみついたままである。
「ノンノ、ここは危険なんだ。リリシアと先にギーレンの町に行っててくれ」
「やだ~!! ノンノもここにいる~」
いつもなら、聞き分けがいい方なのだが、そんなに俺をしたってくれているなんて。
「シラユリちゃんも、スピレイもいないのに、やだ!!」
「ああ、ああ~」
そうだな。
今まで家族としていたみんながいないんだから。
寂しいのは当たり前だ。
「えっと、「ノンノリア!」
「!?」
リリシアが大声でノンノを呼ぶ。
それに驚いたのか涙が引っ込んだようだ。
「今は皆忙しいのよ」
「でも」
「大丈夫、一か月後にはみんな集まってるわ」
「今集まって、寂しい」
「それはできないのは分かっていますよね、あなたは聡い子。なんたってルヴァンの妹なんですから」
「うん」
「なら、ちゃんと言う事を聞きなさい」
「はい」
リリシアのおかげでノンノは納得してくれたようだ。
最後にノンノと抱き合って別れようとしたが、機嫌が悪いようで目も合わせずに馬車に乗り込んだのだった。
「嫌われたな」
「仕方ないと思うわよ。最近のあなたは自分勝手すぎるもの」
「うっぐ」
リリシアの言葉が俺にクリティカルヒットする。
もう、ノンノと笑いあえる日々は来ないのだろうか?
「もう、情けない顔しないの。大丈夫、ノンノは任せて」
「ごめん、リリシア」
「なら、態度で示してほしい」
「分かった」
俺はリリシアにキスをする。
そして、離すと彼女の表情が目に入る。
その表情は嬉しそうにしている。
なのに、怒っているようにも見えた。
「ねえ、ルヴァン」
「な、なんでしょうか?」
俺は思わず昔のように敬語で話してしまう。
「私も理解はしたけど、納得はしてないのよ」
「え?」
「あんまり待たせるようだと、兵を動かして迎えに来ちゃうから」
出来るだけ早く終わらせよう。
そう、心に決めるのだった。
「お熱いっすね~」
隣で猫田がにやにやと笑っていてので軽く殴るのだった。
俺達はダンジョンの前でテントを張り見張りをすることになった。
いざという時にすぐに対応できるようにという事もあったが、今いる俺と猫田、デバミにその仲間一人の四人だけでダンジョン内に入るのは危険すぎる。
でも、出来るだけ調査したいとの事で、門から出てくるモンスターを細かく確認することにしたのだった。
「今回はトロールっすね」
「なら、さっさと倒すか」
そう言って冒険者二人はトロールの前に出る。
そして、デバミが前でトロールを抑えながら後ろで魔法をもう一人が打ち込み続け、あっという間にトロールを倒してしまうのだった。
この数時間で出てきた魔物は十体。
数自体はそんなに多くないが、やはり出てくるのは巨人種と呼ばれるモンスターのみだった。
「本来、こんなに大型モンスターが出てくることは無い。スタンピードが発生してるのかもしれない」
「すたんぴーど、とは?」
あまり聞きなれない言葉に俺は聞き返すとデバミは丁寧に教えてくれる。
「スタンピードとは本来魔物の大量発生の事なのですが、冒険者が言うのはダンジョンで多くの魔物がダンジョンから出てくることをさします。理由までは分かりませんが」
「なるほど」
理由は分からないとの事だが、なんとなく察することができた。
早い話がダンジョンは今人間でいう便秘の状態なのだろう。
本来冒険者が出入りすることで外に出される色々な魔物たちの亡骸や魔結晶がたまってしまっているのだ。
その為、飽和状態の魔力をモンスター達に還元し、数を増えさせ外に放出する。
その証拠に魔力やMPが低いはずの巨人種たちが弱いながらも強化魔法をかけているようなのだ。
俺は自分の考えをデバミに話してみる。
「それなら、確かに話のつじつまが合う。だから、変異種が出やすいのか」
「変異種」
「はい。まだ、多少強化魔法を使う程度でしたら問題はありませんが、それを手足のように自在に操るモンスターが出てきます。それが変異種と言います。今まででは魔法を操るゴブリン、雷撃を身にまとうコボルトなどが出てきました。歴史をさかのぼると呪いを扱うドラゴンなんかもいたようです」
今回は巨人種たちの変異種という事か。
種族によって魔力やMPの量は大きく変わってくるが、更に体が大きいいほうが魔力を貯めやすいのだ。
だからこそ、魔法自体の適性が変わらないドラゴンとエルフで戦わせると圧倒的にドラゴンの方が強いのだ。
魔法を扱うギガントやトロールなんて考えたくもない。
もしかしたら、この仕事中に何度も全力を出さないといけない場面が出てくるかも知れないな。
だが、残りのお酒は少なかった。
「あまり、子供のころからお酒を飲むのは、その」
酒を確認する俺を見たデバミがやんわりと注意してくる。
たまに忘れるが、そういえば俺もまだ子供だったな。
「俺は見ればなんとなく分かるかもしれませんが、ドワーフの血が入ってるんですよ」
「ああ、なるほど。でも、ハーフドワーフにしてはずいぶんと顔立ちがいいというか、まるでエルフが入っているような。最初はハーフエルフかと思ってました」
確かに今までエルフはセシアさんしか見たことないし、ハーフエルフも片手で数えるくらいしか見たことないが、その誰もが美しかった。
セシアさんに言わせれば見た目なんかより魔力の波長が合わなければ、結婚はおろか男性としても見れないらしい。
種族によって価値観が違うのだろう。
「でも、あんなかわいい婚約者がいるなんて羨ましいですよ」
デバミの声に猫田が強く頷く。
「そうですね。俺にはもったいないくらいです。でも、そんなこと言ったらデバミさんの奥さんに悪いですよ」
「ハハハ、それが、俺は結婚はまだ出して。恋人も」
そう言ってデバミは乾いた笑顔を見せた。
でも、平均で十八の頃には結婚するはずなのに。
「失礼ですが、年齢は?」
「お恥ずかしながら今年で二十になります」
「え!?」
てっきり、三十は越えてるかと。
「お袋の言うように見合いを受けるべき「ダメ!!」
今まで静かにしていたデバミの仲間の女性が大声を上げたのだ。
「ジーリー?」
いきなりの事でデバミも困惑しているようだ。
だが、ジーリーさんは顔を背け「来年成人するから」と小声で言ったのを俺は聞き逃さなかった。
猫田も笑っている当たり聞こえていたのだろう。
デバミさんの反応は!
「なんか言ったか?」
「「聞こえてない!!」」
思わず猫田と俺は声をそろえて突っ込んでしまうのだった。
「あれ? 今、その犬」
「わ、わふ~。わんわん」
デバミさんに突っ込まれて猫田が全力で犬の真似をする。
もう、やめればいいのに。
こん調子だと遅かれ早かれバレるぞ。
「まあ、そう言う事にしておきましょう」
デバミはこれ以上追及するつもりはないようだが、ジーリーさんは猫田を視線で追っているのだった。
「それよりも、デバミさんの結婚ですよ。もしかしたら、意外とあなたを好きって人は近くに居る間も知れないですよ。もう少し待ってみましょう」
「そうか?」
「そうですよ!」
「うん、リーダーはやさしいし、かっこいいし、強いし、最高です!」
ジーリーさんがデバミを顔を赤らめながら褒める。
それを聞いたデバミは満面の笑みをジーリーさんに返す。
「いつもありがとな。そう言ってもらえると俺もうれしいぞ」
ジーリーさんは顔を真っ赤にして視線を逸らす。
「すぐにでも結婚しちゃえばいいのに」
「そうっすね」
それを見せられている俺たちはこの空間を爆発させたくなる衝動に駆り立てられたのだった。
「そんな急に結婚出来れば苦労はしないですよ」
「あ、今のは聞こえたのね」
「それに、結婚も大切ですが、実際の問題で発情期中は辛いんですよ」
「ハツジョウキ?」
「あ、子供には早かったかですかね」
「発情期ってあの子孫を残す本能に駆り立てられるあれですか?」
「そうです。十代くらいから少しずつ芽生えるのですが、二十も過ぎると大変で」
「き、期間は?」
「人によって違いますが、一年に二から四回。半月ほど。大体が温かくなる闇土の月から暑くなる前の闇無の月頭くらいまでの間と寒くなる前の風の月に来ますね」
「なるほど」
「それと、相手への独占欲が強いほど大変だって聞きますよ」
人間の発情期。
それに、一抹の不安を感じるのだった。




