第七十話 せっかく異世界に来たんだから、自分の気持ちを伝えよう。
皆さまおはようございます。
今日も頑張っていきましょう!
とりあえず、落ち着いて話ができるようにリリシアを家に連れてきたのだが、今だに泣いたままだった。
もしかしたら、シラユキがどうにかしてくれるかもと、思っていたのにその頼みの綱も夕食の買い物で家を空けていたのだった。
「綺麗な人だね」
隣に座っているノンノがリリシアを見て俺にそうささやいてくる。
そうだな。
最後にあったのが三年前だ。
その頃と比べると、以前の可愛さも残しつつ、美しさにも磨きがかかっているように見える。
そして、俺が渡した指輪も依然と親指に付けてくれていた。
ちょっとうれしい。
「どうしよう、ルヴァン」
気持ちが落ち着いたのか、リリシアが俺に尋ねてくる。
だが、話の内容が見えない。
「まずは、一から説明していただいてもいいですか?」
「うん、まずは二ヶ月前に王宮から手紙が来たの。私を王太子の婚約者候補にしたいって」
二ヶ月前になると現王様の権威が確かなものになる一歩手前だったころか。
更に確固なものにするべく、王太子の婚約者を決めようと、そういう魂胆なのだろう。
「それで、リシャリア様は?」
「お母様は、王宮の命令で、ルヴァンとの婚約も所詮口約束って。例え、お母様の言葉でも、それは嫌って、言ったら、後継ぎとして、自覚を持てって。それで、喧嘩して、飛び出して、う~」
リリシアは泣くのをこらえながら俺に説明してくれる。
確かに、俺はリシャリア様に「責任をとれ」とは言われたけど、婚約って話はリリシアとの間にしか話していなかったような気がする。
子供同士の口約束なんて大人たちにはその程度の認識しかされていないという事だ。
……なんか腹が立つな。
「リリシアはどうしたい?」
「そんなの、ルヴァンとずっと一緒にいたいよ!」
「そう「お兄ちゃんと結婚するのはノンノなの!」
隣にいたノンノが大声で俺の言葉を遮った。
その言葉に泣いていたはずのリリシアの瞳が大きく見開かれて、その瞳の奥が黒く濁っている。
やばい。
「そうか、ノンノ! 俺も“お兄ちゃん”として、ノンノが大好きだぞ!」
「ノンノも大好き」
「ノンノも“家族”として、好きなんだよな?」
「うん!」
あくまで兄妹としてですよ。
そんな関係ではないですよ!
俺はゆっくりとリリシアの方を向く。
「二人とも兄妹として仲がいいのね?」
「イエス!」
「いえす?」
「は、はいって事です」
「そう」
三年前の二の舞にならなくてよかった。
シラユキと一緒に暮らしてるって知られたときに大激怒し、家を半壊させられたことがった。
今回はそうならなくてよかった。
「ルヴァンはどうなの? 私との婚約」
俺は、どうなのか?
リリシア・ハーキスタを元々は手のかかる妹のように思っていた。
でも、ハーキスタ家を出てから俺があの環境の中でどれだけ恵まれていたのか。
リリシアに支えられていたのかを思い知らされた。
ドラゴン討伐の時もリリシアに会いたいと、このまま死ねないと思って頑張れた。
その後も、リリシアは俺にずっと好きだと手紙で伝え続けてくれていた。
こんなにも俺を好きだと言ってくれたのは前世を合わせても彼女くらいだ。
そんな彼女に惹かれている事ぐらい自分でも理解していた。
「俺だって、リリシアの事が好きだ。手放したくない」
「ルヴァン」
「俺ができる事は何でもする」
「じゃあ、しばらくここに住んでもいい?」
家を飛び出したんだ。
行く当てがないのだろう。
「もちろん」
「いっぱい迷惑かけるよ」
好きな人にかけられるならどんとこいだ!
「好きな人にだったらいくらでも」
「これにサインしてください」
リリシアの隣にいたメイドさんが紙を差し出してくる。
「分かりました」
リリシアの為なら!
「これで、正式に婚約が決まりました。おめでとうございます、お嬢様」
「え? どういうこと、ジェーン」
「奥様から言伝を伺っています。よろしいですか?」
ジェーンというメイドさんがリリシアお嬢様だけでなく、俺にも目線で確認をとってくる。
俺は頷くと、コホンと咳払いをして口を開けた。
「リリシア、婚約おめでとう」
ジェーンさんの口からリシャリア様の声が聞こえてきたのだ。
声帯模写的な?
リリシアもあまりのことに驚いている。
「ルヴァンが婚約者ほっといて、いつまでも村の生活をしているからちょっとイタズラしてみました。リリシア、あなたの事は怒ってないから、安心しなさい」
その言葉にリリシアは嬉し涙を流していた。
良かった。
だが、ジェーンさんが俺を睨む。
「ルヴァン! 私は責任をとれと言いましたよね」
「はい!」
いきなりの大声に驚いて、思わず椅子の上で正座してしまう。
「それなのに、全然顔を見せないばかりか、手紙にすら“好き”の一文字もない。リリシアがどれだけ寂しい思いをしたか分かりますか? 手紙が届くたびに、「ルヴァンは本当に私の事が好きなのかな?」と娘に聞かれる母の気持ちを少しは考えなさい。あなたもリリシアを憎からず思っていることはなんとなく分かっていますが、時には口に出さないと分からないことも多いのです。この言伝を聞いているのがリリシアがそちらについていつ頃になるか分かりませんが、リリシアが不安に思っていた分優しくして、自分の気持ちを口にしてあげなさい、いいですね!」
「は、はい!」
「最後に、リリシア」
リシャリア様のやさしい声に戻る。
「はい」
「魔法学校入学前には一度ルヴァンと帰ってきなさい。後、孫ならいつでもいいわよ」
「頑張ります、お母様!」
十三歳の子供に求める事じゃないだろ。
「以上でございます。まさか、到着してすぐに婚約成立とは思いませんでしたが、奥様も大変喜んでいる事でしょう」
「ジェーンさん。ちょっと確認したいのですが」
「奥様は側室は三人までなら許すとの事です」
「そうじゃなくて」
「ルヴァン!」
ジェーンさんの言葉にリリシアが大声を上げる。
「私は、一人までしか、許さない」
「いや、俺リリシアしか好きじゃないから」
「ノンノは?」
「俺の永遠のプリンセスだから心配しないで」
「うん!」
って、話が進まない。
「王太子との婚約は?」
「ボルヴァード様が婚約を渋れば進めるつもりのようでしたが、その必要もないですね」
「そうですか」
自分で決めたことなのに、全部大人たちの掌の上で踊らされていた感が否めなく。
少し、もやもやするのだった。
「ルヴァンなんて大嫌い」
次回予告!
正式に婚約が決まったルヴァンとリリシア。
だが、リリシアも加わった新しい生活に早くも暗雲が!
次回七十一話。
明日の夜頃更新します!
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