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第六十三話 せっかく異世界に来たんだから、お兄ちゃんしたい。

遅くなってしまってすいません。

間に合いました。

よろしくお願いします。


俺がこのカタハナ村に来てから三年経った。

最初の頃は村の外から来た人間として少し離れた所から観察される日々だった。

歓迎されてない場面で、よく動物園の動物たちのような気分だとかマンガや小説で主人公たちが言っていたそれが、ほんとの意味で理解できたと思う。

関わりたくないが少し興味があるから見てしまうとういうような視線はあまり気持ちのいいものではなかった。

だが、ギーレン公爵のおかげで教会を建てることができ、そこで働くようになってすぐに村で受け入れられるようになった。

本当にありがたかった。

そして、今では仕事も生活も順風満帆な俺だが一つ問題がある。

それが。


「ノンノがかわいすぎて俺はどうするべきか」


「また始まったわよ」


クロクリが呆れたようにそう言ったのだった。

その姿は少し疲れているように見える。

だが、それも仕方ないことだった。

クロクリは今は図書館があるギーレンの町に住んでいる。

この世界では書物自体が高級品なので小さな村では数冊あればいい方である。

なので、読書が趣味のクロクリはカタハナ村に住むことを嫌がったのだ。

だが、月に一回ほど往復三日の距離を俺の〈介助〉を受けるために来なくてはいけないのだ。


「それでいつものは用意できてるの?」


「ああ、ここにあるよ」


俺は三つの封筒に入った手紙を渡す。

配達の業者がこの村には来ないので、クロクリが来る時に町へ配達の依頼をお願いしてるのだ。

一つは王都の教会、もう一つがギーレン公爵への報告書である。

仕事としてここにいるので最低限の報告をするようにしている。

最近では教会を頼って村の外から来る人も少なくない。

そうすると色々と聞こえてくる嫌な噂などもあるのだ。

特にギーレン公爵領の隣は違う国の土地である。

すると、変な人間たちが国境近くの森で目撃されたとか、色々と情報が入ってくる。


「最近はご近所さんの迷惑行為が多いそうだよ」


「ほんと人間族って同族間で争うのが好きね」


クロクリは呆れたように三つの封筒を受け取るのだった。

そして、二通の手紙を渡される。

いつものように一つは教会からで、もう一つはリリシアお嬢様からだった。


「こんなに薄くていいの、手紙」


そう言ってクロクリは最後の封筒が一番薄い手紙を透かして見ている。

お嬢様に手紙の内容が薄すぎると怒られたが毎月書いていると書くことが少なくなっていくものだ。

これでも頑張って書いた方なのだが。


「勘弁してほしい」


「手紙を預かったハーキスタの人に聞いたけど、近いうちにリリシアさんが乗り込んでくるそうよ。我慢の限界だとかなんだとか」


「……ごめん、書き足すから、少し待っててほしい」


「了解、外のベンチで持ってきた本を読んでるから、終わったら呼んで」


「分かった」


俺は仕事場で手紙を書き足すのだが、正直仕事をするよりも大変だ。

報告書などはただ型にはまるように現状について書けばいい。

だが、お嬢様への手紙はそうはいかない。

言ってしまえば前世の恋人同士のやり取りのようなことをしなくてはいけない。

しかし、恋人いない歴イコール年齢の俺にそんなテクニックがあるわけがなく、いつも頭を悩ませているのだ。


「お兄ちゃん、もしかして、てがみ書いてるの?」


俺が頭をひねらせているとノンノが入ってきた。


「おしごと、おつかれさま」


そう言って俺の膝の上に座った。

本当に愛いやつである。

服が少し汚れているので外で遊んできたようだ。


「最近、苦しくなったりしてないか?」


「だじょうぶだよ」


そう言ってノンノは笑顔を見せるのだった。

そろそろ時間でもあるので、俺はノンノに〈介助〉と〈介護〉を発動する。


「お兄ちゃんといるとポカポカする」


「そうか、それは良かった」


「大好き」


俺はノンノの言葉に思わず後ろから抱きしめてしまう。

それも嬉しそうに受け入れるのだった。

ノンノの可愛らしさを語ったら時間がいくらあっても足りないだろう。


「……そうだ!」


「どうしたの?」


「手紙にノンノの可愛らしさを書こうと思って!」


「お兄ちゃんもかっこいいよ」


「ノンノ~」


「またやってる」


俺達のスキンシップを邪魔するシラユリが入ってきたのだった。

全くこれから可愛らしいほっぺにちゅっちゅとする予定だったのに!


「後数年したらキモがられるよ」


「そんなことない! ノンノはずっとお兄ちゃんの味方だもんな」


「うん!」


だが、シラユリはそんな俺たちを白い目で見てくる。


「そのうち、お兄ちゃん臭いとか、お兄ちゃんの服と一緒に洗わないでとか、お風呂は後に入ってとか言われるよ」


「ぐふっ!」


シラユリの言葉が俺の心に会心の一撃を与える。

そ、そんなことは。

でも、男兄弟や親が姉妹や娘に嫌われるのは世の常。


「神は、死んだ!」


「聖職者がそんなこと言わないの」


ノンノが俺の服の裾を引っ張る。


「お兄ちゃんはいいにおいだし、お洋服はあたしが洗うし、今日も一緒にお風呂に入ろ」


「ノンノ~」


神は俺の膝の上にいたようだ。

いや、ノンノは天使だ。

こんなにもかわいくて賢くてこんな子がただの人間族なわけがない。


「こんなんじゃ、ノンノちゃんが結婚するときとか大変そうね」


「~~~!」


思わず俺は言葉にならない悲鳴を上げてしまう。

ノンノが結婚?


「……相手を殺せばいい」


「物騒な」


でも、ノンノは俺をいつものように大きな瞳で見つめてくれる。


「お兄ちゃんと結婚する」


「俺は俺を殺さないといけない!」


「お兄ちゃん、死んじゃいや~」


「じゃあ死にませ~ん」


「ねえ」


いつの間にか戻ってきたクロクリが俺を睨んでいる。

そう言えば待たせているんだった。


「書くことは決まってるからもう少し待ってくれ」


「ついでに書く内容は?」


「ノンノの可愛さを「回収」


「え!?」


有無を言わさずシラユリに手紙を回収され、クロクリが持って行ってしまったのだった。

何がいけないんだ。


「そんなことしたら、あのお嬢様が本当に乗り込んでくるわ」


「トラウマになってるんだな」


前にお嬢様がお忍びで来たことがあったが、シラユリを浮気相手と勘違いして大変な目にあったことがった。


「俺たちはそんなんじゃないのにな」


「愛人ならOKとか言われるし、最悪よ」


「ごめん」


俺は思わず誤ってしまうのだった。

そう言えばノンノがあまりしゃべらない。

膝の上を見るとノンノは寝息を立てているのだった。


「簡易ベッドに運んじゃうか」


「私が見てる」


「いつも色々とすまない。残りの仕事してくるよ」


俺は奥の部屋で調合を開始するのだった。







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