第六十二話 せっかく異世界に来たんだから、責任をとろう。
これで第二章終了です。
皆様に支えられて、ここまで来れました。
ありがとうございました。
一日休んで第三章を書き始めたいと思います。
お嬢様と買い物をした日から更に日が経った。
「今回はありがとうございました。」
煌びやかな寝室で俺はリシャリア様に深々と頭を下げた。
ここはリシャリア様の寝室で、先ほどまで寝ていたのかガウン姿だった。
今朝、屋敷に戻られたとの事で、時間をおいて俺はお礼を言いに行ったのだ。
「いいの。だって、あなたは私の息子も同然だもの」
「ありがとうございます」
俺は頭を上げるとリシャリア様は嬉しそうに微笑んでいた。
「なにか、いい事でもありましたか?」
「いつ見ても、子供の成長は嬉しいものねって」
「えっと」
「リリシアに指輪を送ったのでしょ?」
なんで知ってるんだろう?
「先ほど嬉しそうに見せに来たわ」
そうですか。
見せに行ってしまいましたか。
ちょっと恥ずかしいような。
「しかも、親指に付けて」
「あの、親指に何の意味が?」
ハーキスタ家の指輪をもらった時もそうだったが、なんか理由があるのだろうか?
なぜか嫌な予感が。
「指輪を親指に付けるのは“私は婚約、または結婚してます”って意味なの」
「へ?」
「ちゃんと責任はとるのよ」
「……はい」
有無を言わせぬ鋭い瞳で俺は睨まれ、俺は消え入るような声でそう答えるしかなかった。
あれ?
俺ってまだ五歳だよな?
前世で五歳なんて言ったら大好きだった戦隊ものを見ながら合体ロボットで遊んでいたような。
ああ、もっと遊んでいたかった。
「それで、挨拶だけじゃないんでしょ?」
「はい、ちょっと用事ができてしまい。今日の晩には出ていこうかと」
「私からもギーレン公爵にはこちらからよろしく言っておいたから」
「え?」
「聞いたわ。あなたのスキルが原因で兵士の数人を死なせてしまったって」
その言葉に俺は胸が苦しくなった。
本当は知られたくなかった。
嫌われてしまうのではないかという恐怖で体が冷えていく。
「それで、彼らが残したものに対して責任をとりに行くって事よね。その考えは立派よ。上に立つ者は指示を出したらそれでおしまいじゃ駄目。結果には責任をとらないと。でもね、そんな方法ではあなたの身体がいくつあっても足りないわよ」
厳しく、でも俺が理解しやすいようにリシャリア様は聞いてくる。
「そうですね。ギーレン公爵様は死んだ兵士の家族には見舞金等で保証するという話でした。でも、一件それではどうしようもない人がいまして」
「そう。そこまで分かってるのね。それで、どれくらいかけるつもり?」
「とりあえずはあってみないと分かりませんが、体が落ち着くまで。たぶん戦士系、筋力等に補正がかかる天職をもらえれば回復したという話も聞いたことがあります。ですので天職の儀を受ける四年後が一区切りになると思います」
「うん、それなら大丈夫。でもね、五年後の十五歳になる年の光土の月になる前に帰ってきなさい。あなたには学校に行ってもらうから」
……学校?
何のだろうか?
でも、教育機関には行っといて損はないし。
なんだかんだで、前世の頃も学生だったころが一番楽しかった。
「かしこまりました」
「それと、あんまり無理はしちゃだめよ。それと、毎月少なくとも三通は手紙をリリシアに送りなさい。あのこを宥めるのは大変なんだから」
「す、すみません」
確かにお嬢様は元気になられて、昔のように少しおてんばになられたような気がする。
あれを止めるのは確かに骨が折れるだろう。
「ああ、そういえば。リリシアはあなたが行ってしまうことに気づいてるわ。夜に出ようとしてるのも。跡取りであるあのこがついていくと言われても困るからなるべく早く出なさい」
「はい」
「それじゃ、行ってらっしゃい。ルヴァン」
「行ってきます」
俺は必要なものを適当に寄せ集めてすぐに屋敷を出るのだった。
アルマルデ様にも手紙で手紙で王都を離れる旨を伝えた。
だが、帰ってきた手紙にはどうやらガシェルさんはアルマルデ様の所にいるがセシアさんはいないようだ。
もしかしたらセシアさんがハーキスタ家の屋敷か教会に戻ってくるかもしれないので俺は手紙を残すことにした。
先ほどハーキスタ家の屋敷のメイドには渡してきたので、教会に手紙を私に行った時だった。
「ルヴァン!」
後ろから抱き着かれる。
振り向くとミドリちゃんがそこにいた。
「帰ってきたなら、なんですぐに私の所に来ないんだ」
「えっと、ごめん、なさい」
「心配だったんだ。もしかしたら、戻ってこないんじゃないかって、死んじゃったんじゃないかって」
泣きながらミドリちゃんは何度も俺の背中を叩く。
俺は甘んじてそれを全て受けるのだった。
リリシアお嬢様に会えたことが嬉しくて完全に忘れていたのだ。
怒られても仕方のないことだろう。
「許さない」
「どうしたら許してくれる?」
背中の衝撃が止まる。
俺はゆっくりとミドリちゃんに向き合った。
その瞳は赤く腫れていて、疲れ果てた表情をしていた。
「だったら、目を閉じて」
顔を一発殴られるのだろう。
俺は歯を食いしばって目を閉じる。
頬に温かい感触が。
「へ?」
「好きだから、心配したんだ」
頭がフリーズしてしまい今の状況を全く理解できていない。
「また、行くんだな」
「ごめん」
「ちゃんと帰ってくるんだぞ」
「わかった」
「いってらっしゃい」
「いってきます」
俺はミドリちゃんにセシアさんへの手紙を渡して、その日のうちにギーレン伯爵領行きのキャラバンに乗るのだった。
「ご飯は?」
馬車に乗り込むとそこには既に何人か乗り込んでいて、その一人がスピレイだった。
「なんでスピレイがいるの?」
「食道楽の旅」
「じゃないよ」
「今から変更」
「しないよ」
「おにいちゃ「ダメ」
「ケチ」
スピレイでは話にならない。
「まあ、私たちはあなたがいないと体保てないし、着いてくね」
シラユリが俺の隣に座る。
「まあ、旅は道づれって言いますし」
クロクリが本を読みながら目の前に座っていた。
という事は、もしかして。
周りを見回すが他は普通の旅人のようだ。
「アンミリは新婚旅行だって」
「あ、そう」
みんなを見ていると、これからもまた騒がしくなる未来しか見えないのだった。
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