第五十八話 せっかく異世界に来たんだから、自分の為に戦おう!
よろしくお願いします。
スピレイの一撃がリヴォルバードラゴンの機械化されていない腹部に入った。
ギャアアアア!
その一撃でドラゴンは悲鳴のような雄叫びを上げて倒れる。
背の高いアンミリの三倍は大きいドラゴンが、いとも簡単に倒される光景は信じられないの一言だった。
しかし、起き上がったドラゴンは重量のある巨体からは考えられないほど機敏に動き出し、アンミリに突撃しようとする。
だが、その攻撃はあらぬ方へ逸れて言ったのだ。
「もうちょっとは後先を考えなさい」
よく見るとドラゴンの通った道が氷で覆われていた。
クロクリが凍らせたようだ。
「どかーん」
スピレイはそう言いながら両手を振り下ろすと、それに合わせてドラゴンの真上の天井から岩が落ちてくる。
ドラゴンは成す術なく下敷きになったのだった。
「こんなに強かったんだな」
「知能が低い生き物にはちょっとからめ手で、力押しすればこんなものよ」
クロクリが満足そうにそう言ったのだった。
「二人は魔法を使ってずるい! あたいもどかん! と魔法が使いたい」
「そんなんだから、ダメなのです」
「アンミリ、魔法効率、悪い」
クロクリとスピレイは魔法を使っていたが、〈神格化〉する前のMPでも十分の一程度しか減っていなかった。
二人とも意識してくれたのだろう。
ドラゴンは岩の下敷きになったが、あの程度で死んでくれれば楽なのだが。
とりあえずはドラゴンが出てくる前に撤退を。
ドゴン!
爆発音とともにドラゴンを下敷きにしていた岩が四方八方に飛び散る。
そして、リヴォルバードラゴンは所々から火花と煙を吐き出しながら姿を現したのだった。
やはり、簡単には倒れてはくれないようだ。
「簡単に終わっちゃ楽しくないよな!」
止める間もなくアンミリが嬉しそうに大剣を担いで走り出す。
クロクリはため息をついて呪文を唱え始め、スピレイはどこからか取り出した干し肉を噛みながらアンミリが走り出す姿を眺めていた。
そして、アンミリがまたドラゴンの腹を殴ろうとするが、ドラゴンは腰を低くし頭の上の銃身で攻撃を受ける。
機械の部分は非常に硬く、アンミリの大剣を受けてもピクリともしなかった。
更に、照星の部分で剣をひっかけ、力いっぱいに頭を振り上げるとアンミリを天井にたたきつけ。
追い打ちとばかりにその銃口をアンミリに向けた。
「まずい!」
俺は落ちてくるアンミリを光魔法で吹き飛ばし、射撃線上から離した。
クロクリも氷で足元を攻撃しドラゴンの銃口を逸らせた。
そして、あらぬ方向へ向けられた攻撃は大きな地響きと大穴を作ったのだった。
あんな攻撃を食らったらひとたまりもないだろう。
「いやあ、助かった」
「もうちょっと考えて行動しろ!」
「ちゃんと考えてるぞ、前に出て、殴って、倒す。ほらな」
俺はクロクリに視線を向ける。
彼女は手を上げた。
「細かい指示も、人に合わせるのもダメだから。好きにさせて、それに合わせた方が楽よ。精神的に」
「もう、そういうものだと諦めたんだな」
「誰しも得手不得手ある」
「?」
スピレイにもそう認識されているんだな。
哀れなアンミリ。
「じゃあもういっちょ行きますか!」
同じように駆けだそうとするアンミリ。
このままだと同じ事を繰り返しそうだ。
「アンミリ!」
とりあえずアンミリを呼び止める。
「なんだ?」
アンミリが振り返る。
クロクリが言っていたように細かい指示をしても無理だろう。
だが、ドラゴンは動き出してもう時間がない。
もっとも簡単な一言!
「色々殴ると楽しいぞ!」
「……お前」
簡単にし過ぎて気分を悪くしたか?
「天才だな!」
悪かったのはお頭の方だった。
クロクリの言う通り、アンミリの攻撃に合わせて光魔法を放ち、回復魔法をかけて行く。
「〈聖帝〉、何してるんだい?」
後ろを振り向くと兵士を連れた昨日のお兄さんが立っていた。
その顔は驚きのあまり目を見開いていた。
「これは」
何かと頭を巡らせようとしたが、すぐにそれを止めた。
これ以上嘘や罪を重ねたくなかったからだ。
「俺は言い忘れていたことを伝えるのと、援軍に来ました」
「なにを」
その後につなぐ言葉を彼は失っていた。
俺は子供で保護する対象であるはずなのに、目の前でたった五人でドラゴンと戦っているからだ。
「とりあえず聞いてください。昨日俺が治した兵士の皆さんはすぐに引き返してください。昨日の魔法はその性質上しばらく回復魔法が効かなくなってしまいます。もし、ここで大けがをしたら」
「…… ジュンユ、昨日まで倒れてたやつらを集めて地上に戻れ」
「ですが!」
「大丈夫だ、こちらにはボルヴァードくんがいる」
ドン!
俺達が話しているうちにアンミリがまた、ドラゴンを倒していたのだった。
その姿を見てお兄さんに命令された十数人の兵士は渋々後退していくのだった。
「それで、どうするんだい?」
「まず、あのドラゴンはすごく頭がいいです。アンミリの攻撃を先ほどから学習し、それに合わせて来ています。他にも、回復力と防御力に優れています。頭の上の銃身から繰り出される攻撃は破壊力も桁違いですが、連続では打てないようです。なので、短期決戦で迎え撃った方がいいかと」
「了解した。聞いたかお前ら! これから後ろへ回り込み、一点突破で攻撃を仕掛ける。気合を入れろ!」
「「「「おお!」」」」
お兄さんたちは部隊を分け後ろに回り込む。
その間にもアンミリは攻撃を仕掛けるがドラゴンは時がたつにつれ攻撃に合わせていく。
これが失敗すると、次はうまくいかないだろう。
「歌唱魔法を使う。クロクリとスピレイはアンミリの援護をよろしく」
「仕方ないわね」
「了解」
俺は大きく息を吸い込んだ。
〈絶望を前にして男たちは何を見るか〉
ドラゴンは力強い咆哮を上げる。
〈失望を知って男たちは何を求めるか〉
何度もアンミリの攻撃を受けるがドラゴンに決定打を与えられない。
〈死を前にして男たちは何を後悔するだろうか〉
兵士たちが息をひそめ、その時を待つ。
〈誰かの笑顔を過去に見るだろう〉
〈誰かの幸せを未来に願うだろう〉
〈誰かの為に握りしめた拳が届かぬことに涙するだろう〉
だが、アンミリの攻撃が更に速度と威力が増していき、ドラゴンが合わせられなくなった。
それに合わせて、クロクリが足元から凍らせる。
更にスピレイが四方八方から岩を打ち込む。
俺は三人と歌唱魔法にありったけのMPを注ぎ込む。
〈ならば、万の敵を蹴散らし、希望を掴む力を与えよう〉
ドラゴンが倒れ込んだ。
〈恐れる暇など無い! 剣を持ち突き進め!〉
「いけ!」
お兄さんの合図に兵士たちがドラゴンへと一目散に走りだし、剣を突き刺していく。
ドラゴンは尻尾で払いのけようとするが、盾を持ち構えていた兵士たちがそれを止める。
〈その先にある勝利を掴むために!〉
剣を持った兵士たちが更に攻撃を続ける。
一方でアンミリが腰を低くして剣を構える。
その剣がどういうわけか、炎を纏っていたのだ。
〈英雄の雄たけびを上げよ!〉
「「「「おおおおおおおおおおおお!」」」」
雄たけびにあわせて兵士たちが更に攻撃にかかるが、ドラゴンが体を大きく転がして、兵士たちに突っ込む。
多くの悲鳴が響き渡るがここで止めるわけにはいかない。
だが、銃口が向けられる、もう発射間近だ。
「これで、終わりだ」
アンミリの一言と共に、ドラゴンの首が落とされる。
だが、発射間近だった銃口は天井に向けられ、大きな穴を作ったのだった。
穴を除くと空に浮かぶ月が見える。
その月に照らされて、ドラゴンは息絶えていたのだった。
明日は夕方ごろの更新になります。
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