閑話 大人の決意
この後のキャラ紹介を除けばこれで二章が終わりです。
皆様の応援のおかげでこれまで頑張ってこれました。
これからも皆様の期待に沿えるよう頑張ってまいりますので、呼んでいただけると幸いです。
よろしくお願いします。
私テルマリリは最初は嫌なガキだと思った。
孫娘であるミドリの洗礼に割って入って、一緒に受けるなどと言い出したからだ。
怒りが抑えきれず、嫌味を言ったら貴族との関係をちらつかせながら脅される始末。
アルマルデによく似て口が達者だと思った。
だが、彼が洗礼に割り込んだことを初めて知るとその日の内に謝りに来たのだった。
しかも、洗礼を辞退すると言ってきた。
「そんなところまでアルマルデに似なくてもいいのに」
思わずこぼれた言葉だった。
私が命令するまで何を言っても止める意思を変えなかった。
アルマルデによく似た頑固さだった。
でも、師弟の性格が似るのは良くある話だ。
その程度に思っていた。
そして、洗礼をミドリと一緒に受けて数日が経ったある日、アルマルデがやってきたのだ。
「お久しぶりです。アルマルデ」
「テルマリリ、悪い事したね」
アルマルデも色々と知っていたようで出会い頭に謝られた。
その姿が数日前に見た彼によく似ていて思わず笑いそうになった。
「やっと、あなたも弟子をとったのですね」
「まあ、ね」
聖女は各地を回り回復魔法等で慈善活動をしながらその地の情報を集めて回る仕事などもしなくてはいけない。
だが、そんなことを一人で行っていたらMPがいくらあっても足らない。
そこで、本来数人は弟子を取り慈善活動の手伝いをさせるのだが、彼女はかたくなに弟子をとるのを拒み続けていたのだ。
理由を聞いても教えてくれなかったのに、急に弟子をとったのだ疑問になったので聞いてみた。
すると。
「ルヴァンは私よりも素質がある。そう思ったから弟子にしたのさ」
頑固者の彼女が嬉しそうにそう言ったのだ。
彼女もこういうところがあるのだなと思った。
そんな時にミドリが溺れたと知らせが来た。
私も自分で分かるぐらい孫娘をかわいがっていた。
思わず走り出して現場に向かう。
そこで、ボルヴァードくんが顔を真っ青にしたミドリを抱いていた。
「先ほど呼吸が止まっていましたが、人工呼吸で取り戻しました。でも、体温が戻りません! すぐに温めないと!」
「わかったよ。そのまま毛布で包んでおきな! 教会に戻るよ!」
ボルヴァードくんの言葉に何の疑いもなくアルマルデが指示を出し、ガシェルという爺さんが子供二人を軽々と持ち上げて教会へ戻っていった。
教会に着いた後もアルマルデがミドリを温めながら的確に様態の確認をルヴァンくんは行っていく。
その姿を見てアルマルデの言葉が身内びいきではないことを理解した。
そんな彼は戦いには不慣れなようだった。
アクアという教会のだと思っていた子供が彼への刺客だったのだ。
その子供を撃退する際彼は全く動けずにいた。
その姿を見た時、初めて彼に対して子供らしさを感じたのだった。
だが、王都への教会へ行くと彼はより一層、武術の鍛錬を行うようになったのだ。
自分を律し足りない部分を補おうとする姿は子供の様には思えなかった。
「ボルヴァードくんも頑張ってるんだから、私も」
ミドリはお世辞にも要領がいい子ではなかった。
そのせいで落ち込むことが今まではしばしばあったが、最近はそう言って失敗も恐れずに頑張っていた。
いい意味で彼の存在はミドリに影響していた。
私も大事な孫娘をまかせてもいいかなと思う程度には信用してしまっていた。
なにより、ミドリが彼への思いは日を重ねるごとに大きくなっているのは誰の目からも明らかだった。
貴族との関係上第一夫人は無理だが第二夫人くらいは大丈夫だろう。
そして、天職の儀の日になった。
だが、本番前にミドリが委縮してしまっていた。
少し心配だったが、「結婚式のドレスに似てるね」なんて彼が言うものだからミドリは完全に緊張してしまったのだ。
頭が痛くなった。
「その言葉の責任はとるんだよ」
私はそう言っていた。
そして、扉が開かれるとそこには多くの観客がいた。
そのどれもが一物を抱えた貴族どもだ。
ミドリは完全に動けなくなっていた。
だが、ボルヴァードくんはそんなミドリの手を取って歩き出した。
孫離れが少し悲しくなった。
天職の儀はシューラン猊下が二人の天職を言ってしまうという問題はあったもののミドリは〈聖女〉の天職を頂けたし、概ね満足いくものだった。
だが、その後ルヴァンくんは〈聖帝〉以外の職をもらったらしく〈鑑定(職業)〉をもつ私が鑑定することになった。
すると、〈まほうつかい〉という天職をもらっていることが分かった。
〈魔法使い〉は見たことあるが、〈まほうつかい〉は初めてだった。
しかも、その内容に思わず笑ってしまい。
それに対してボルヴァードくんは拗ねてしまった。
かわいい子供だ。
私もいつの間にか気を許していた。
その後も彼とは一緒に仕事をしたりして、私の行きつけのお店を紹介する程度には私も気を許していた。
彼がドラゴン討伐に参加させられると知った時も同情した。
もし、ミドリだったらセシアという世話役の女性のように怒っていたかもしれない。
そして、討伐への遠征が間近になったころ、夜遅くにシューラン猊下に呼び出される。
「ボルヴァードくんが連れ去られました」
その言葉に真っ先にセシアという女性を思い出しました。
彼女は彼を大事にしていましたから。
そして、案の定彼女と相対することになった。
セシアは弓を自在に操る狩人のような戦い方をする人でした。
本来ならそれに剛拳のガシェルがいることから苦戦を免れないと思っていましたが、シューラン猊下はどういうわけか全てを見通していたかのように準備をしていて、特に苦も無く二人を倒してしまいました。
「ま、マジカルチェーンジ!」
その彼の掛け声と眩しい光に気を取られ倒れていた二人を見逃してしまった。
しかも、驚くことに彼はずいぶんと可愛らしい姿をしていて、ミドリを託すの早まったかと思った。
しかし、それ以上に驚くことに彼は不利な状況でも戦いを望んだのだ。
おろかだと思った。
そんなにドラゴン討伐が嫌かと。
だが、そんな考えをすぐに恥ずかしいと思った。
「セシアさんが! 母さんが傷つけられて! その相手の言う事をホイホイと聞くほど! バカじゃねえんだよ!!」
ボルヴァードくんは彼女をそれだけ慕っていたのだ。
彼は次々にシューランに仕掛けていく。
それは五歳はおろか常人ですら凌駕するほどに。
でも、やはり彼は幼かった。
戦い方知っていても駆け引きを知らない。
次第に追い詰められ、彼は急に倒れたのだった。
「ルヴァンくん!」
シューラン猊下は近づこうとすると黒髪黒目の女の子が遮る。
後ろの三人も依然として臨戦態勢だった。
「ボルヴァードくんは魔力欠乏による危険な状態です。こちらで治療を」
だが、三人のうちの一人が土で私を締め上げる。
「くっ!」
シューランはこれを難なく逃れていたが、これは私では無理だ。
だが、このままでは。
「ボルヴァードくんが死んで、しまい、ます」
「やめてください!」
黒髪黒目の女の子が止めに入る。
そして、拘束が解かれる。
「何かあれば許さない」
「分かっています。何があっても、彼を守ってみます」
今の状況でも、これからの戦いでも。
私は彼女から彼を奪ったのだから。
五歳の子供を戦場に行かせてしまう大人としての責任として。
面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をお願いします。




