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第四十八話 せっかく異世界に来たんだから、隠し事は

昨日に間に合わなくてすみません。

よろしくお願いいたします。


ガシェルさんから〈アシュラ〉を習い始めて三日が経った。

魔法を纏うという個人スキルにおいて、ガシェルさんと違い俺は風魔法が使えない。

そこで、回復魔法を用いて〈アシュラ〉を使えるよう鍛錬を行っていた。

纏うというのは発動した魔法で薄い膜を作り、それで全身を包むような感覚なのだが。


「ほいっ」


「ああ!」


ガシェルさんの拳を避けるが、集中力が途切れると簡単に消えてしまった。

とても防御力向上できるほどではない。

失敗だった。


「もっと、魔力を体に浸透させるように張り巡らさないと定着しません」


「もう一度、やります。〈アシュラ〉!」


だが、先ほどと同じで弱々しく定着には程遠い。


「う~ん。もっと、想像力を豊かにしてみよう。僕の場合は風魔法だから、纏った風で加速と衝撃を逸らせるイメージで発動している。じゃあ、回復魔法は?」


「え? 回復魔法を纏うと……」


どうだろうか?

回復魔法は魔力で回復力を向上させて傷を癒す。

その工程は前世の知識で言えばたぶん細胞の活性化が重要になってくると思う。

なら、筋細胞を意識させて活性化させてみれば。


「いいじゃないか」


ガシェルさんが褒めてくれる。


「よし、そのまま訓練を始めるぞ」


「え?」


「〈アシュラ〉纏ってお終いじゃない。それを活用して、どのように戦っていくかが一難重要だぞ。試しにその状態で僕を殴ってみなさい」


そう言って、ガシェルさんは構えをとる。

俺は〈アシュラ〉を纏ったまま一歩を踏み出した。

ガシェルさんほどではないが一瞬の間に距離を縮め、拳を入れた。


「え?」


「どうだ?」


俺はガシェルさんの腹に入れたはずだったのに、その攻撃はそれてしまっていた。

どういう原理なのだろうか?

俺はもう一度殴ろうとして構えるが殴った腕から赤い液体が。


「って、いでえ!」


「おっと、威力が強すぎて体がもたなかったか」


腕が変な風に曲がり、骨が飛び出し、いたるところから血が噴き出していた。

俺はすぐに自分の腕を回復魔法で回復しようとする。

だが、それをガシェルさんに止められる。


「ちょうどいいから〈リカバリー〉使ってごらん」


まったく、この人はスパルタすぎる。

俺は前に見たことのあるアルマルデ様の後姿を思い出す。

そして、あの温かい光を想像して唱える。


「〈リカバリー〉!」


激しい光の後に俺の腕は元のとうりに戻っていた。


「よくできたね」


見たことがあるので、再現は簡単だった。

だが、眩暈で立っていられなく、その場で足をついて崩れる。


「MPを使い切ったみたいだね。〈リカバリー〉は問題なく発動できたようだけど、あの魔法は自分で回復個所を指定しなければいけない魔法らしい。明確にここを直すと強いイメージが足りなかったんじゃないかい? だから、余分にMPを使うってアルマルデが言ってたよ」


「そういうアドバイスは使う前に教えてほしいです」


「まあまあ。痛い目に合った方が覚えるだろ?」


本当にこの人はスパルタすぎる。

もっと、弟子をかわいがってくれてもいいのではないだろうか?


「さて、MPが切れては〈アシュラ〉も使えないし、今日はこれくらいにしておこう」


「あ、ありがとうございました」


ガシェルさんの視線が俺の後方をとらえる。


「後は彼女にお願いしようかな?」


疲労感が強く座っているのがやっとだ。

俺は後ろを顔だけ振り向くとそこにはミドリちゃんがいた。

その手にはタオルが持たれている。


「お疲れ様」


「ありがとう」


俺はタオルを受け取ると、その隣にミドリちゃんが座った。

いつもだとここで軽口で笑いあうのだが、妙に重い空気が俺たちを包んでいた。

何か話題が欲しくてガシェルさんがいた方を見るがいつの間にか無くなっていた。


「ねえ、ボルヴァードくん」


「あ、え!? な、なに?」


急にミドリちゃんが話し出す。

何だろうか?


「今度、ドラゴン退治に行くんでしょ?」


「そ、そうだね」


本当はその前に逃げることになっている。

だが、彼女にはなんとなく言えなかった。


「すごいね。まるで勇者みたい」


「天職は勇者ではないけどね」


「そうじゃなくて、もう」


ミドリちゃんは俺と目を合わせずに空を見上げていた。

彼女に後ろめたさがある俺としては少しありがたかった。


「結局二人とも勇者にはなれなかったな」


「俺は元々勇者にはなりたくなかったけど」


そう言うとミドリちゃんは俺を睨んできた。

なぜだろうか?


「もう、空気が読めてない!」


「すみません」


中身四十オーバーのおっさんが十歳の女の子に謝らされてるとは。

なさけない。


「そんなんだからボルヴァードくんは「ルヴァンでいいよ」


「え?」


「親しい人はみなルヴァンって俺を呼ぶんだ。だから、ミドリちゃんもルヴァンでいいよ」


前々から俺をフルで呼んでいて言いづらくないのかと思っていたのだ。

ミドリちゃんは「ありがとう、ルヴァン」言うと、にっこりと笑った。


「あのさ、絶対に、帰ってきてね」


「えと、うん。もちろん」


ミドリちゃんが手を重ねてくる。


「絶対だからね」


「わかった」


「この後、テルマリリ様の授業があるんだけど」


「着替えていくから先に行ってて」


俺はそういうが、しばらく俺たちは動けずにいた。

不覚にも重ねた温もりを手放すのが惜しいと俺は思ってしまった。


「ルヴァン!」


セシアさんが教会から俺を呼んでいる。


「じゃあ先行ってるね」


ミドリちゃんはセシアさんの横を頭を下げて通り過ぎていった。

そして、その影が見えなくなるのを確認するとセシアさんは言った。


「今日の晩にここを出ます」











今日中にもい一話投稿します。

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