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第四十九話 せっかく異世界に来たんだから、戦いたくない。

よろしくお願いいたします。


日がすっかり暮れて、誰もが寝静まる時間。

三つの足音が城門に向かっていた。


「大丈夫ですか?」


セシアさんが小声で俺に話しかけてくる。

俺はそれに対して、首を縦に振るだけだった。


「ルヴァンくん、もうすぐです」


ガシェルさんの言葉に視線を上げると王都の大きな壁が近かった。


『近くで初めて見た。すごい大きい』


俺の肩に乗ったシラユリが壁を見上げて感嘆の声をこぼした。

だが、この先はこの壁を越えるための門は無い。

どうするのだろうか?


「噛むので口は閉じておいてください」


壁の目の前に着くと俺はセシアさんに担がれる。

そして、ガシェルさんが前に出ると両手を出した。

その両手の上にセシアさんが乗るとバレーボールのトスのように打ち上げられる。

しかも、城壁を優に超えるほどにだ。


『なんでこんなに飛ぶの!』


シラユリは必死に俺にしがみつきながら叫んでいた。

そして、降下する。


『ぎゃあああああ!』


全くうるさいやつである。

聞こえてるのが俺だけだからってやりたい放題。


『なんで、あんたは平然とした表情なのよ』


「経験と慣れだな」


こんなので驚いていたら身が持たない。

しばらくして地面に着地する。

俺達が着地したすぐ後ろにガシェルさんがすでにそこにいた。


『私達を打ち上げた爺さんが、なんで先に着地してるのよ』


「ガシェルさんだからできたんだろうね」


シラユリは何かを訴えるような白い目で俺を見てきた。

言いたいことはわかる。

でも、時間がないのでスルー。


「とりあえずは近くの町まで行きます」


「道案内は頼むよ」


「はい」


セシアさんが先頭を行こうとした時だった。

俺達の進行方向に明るい何かが迫ってくる。

それが火の玉だと理解するより先に俺は後ろに引いていた。

そして、出所へ視線を向けるとそこには教会の修道士たちと一台の馬車があった。


「こんな夜更けに何をしているんだい」


馬車の中からそう言ってシューラン猊下とテルマリリ様が出てきたのだった。

シューラン猊下はいつもは持っていない煌びやかな杖を、テルマリリ様は銀色に輝く美しい剣を二本腰にさげている。


「少し旅行に行こうかと」


「それは許可できないな。これから大事なお勤めがあるのに」


ガシェルさんが適当な言葉を投げかけるとシューラン猊下はいつもの笑顔を壊さずそう言ったのだった。

その言葉にセシアさんが猊下を睨みつける。


「子供に死に行けというのですか!」


「なにも、戦闘にでよとは言っていない。後方支援の回復要因として同行するだけだ」


「あそこはドラゴンの影響で魔物たちの動きが活性化してます。一流の冒険者でもこの一年で何人が命を失ったか。そんな場所に行かせるなんて、正気の沙汰じゃない!」


その言葉にテルマリリ様が一瞬顔を歪めた。

でも、シューラン様は以前兵士が持ってきた書状を俺たちに見せる。


「この判を見たまえ。これは国王直々にしか使用を許されない国紋だ。これが押されているという事は王命である。国民はこれを拒否することはできない」


「国民ならね」


セシアさんがそうつぶやく。


「この子はエルフとドワーフの混血児であり! 〈神々の血〉のスキルが発現している。ルヴァンは―


セシアさんが言い切る前に一筋の光が俺達に向かって放たれていた。

当たりはしなかったもの空気が一瞬で重くなった。

それを放ったのはシューラン猊下だった。


「それ以上の言葉はいらないでしょう」


その言葉に修道士たちが杖や剣といった武器を取り出す。

テルマリリ様も剣を構えた。

ガシェルさんも拳を構え前に出る。

セシアさんは背中に担いでいた弓を取り出して矢を構えた。


「さて、早々に終わらせましょう「ふん!」


ガシェルさんが一瞬でシューラン猊下の前にいた修道士をかいくぐり、懐に潜り込んだ。

そして、拳を放つがその拳は見えない何かに止められていたのだった。


「力量を見誤っていた、か」


シューラン猊下は苦虫をかみつぶしたような顔をする。


「固いですね」


それに対してガシェルさんは嬉しそうに笑顔を浮かべていた。

間髪入れずにシューラン猊下へ何かが一直線に向かう。

それをテルマリリ様が叩き落す。

地面に落ちたのは矢だった。


「とりあえず先にあなたを「させない!」


ガシェルさんが向かってきたテルマリリ様に蹴りを放つがそれを剣で受け止めたのだった。

だが、その衝撃で地面がえぐれた。

受け止めたテルマリリ様の腕からは血がしたたり落ちる。


「〈ヒール〉!」


修道士の一人がテルマリリ様の腕を直した。


「まずは後ろを片付けないと」


「そうはさせません」


「ぐわあ!」


修道士たちへ向かおうとしたガシェルさんをテルマリリ様が止める。

それに追撃で誰かから放たれた火の玉がガシェルさんを襲った。


「〈ヒール〉」


俺はすぐにガシェルさんに回復魔法をかけるが初めての実戦でうまくかけらない。

ガシェルさんに追撃をしてこようとするテルマリリ様を一本の矢が止めたのだった。


「〈アシュラ〉!」


その叫びと共に一帯に強い風が吹き荒れる。

誰もが飛ばされないように必死で体を抑える中くぐもった低い声が所々から聞こえる。

そして、風が消えると修道士たちが全員倒れていたのだった。

テルマリリ様も無傷ではあるが辛そうにしていた。


「風で視界を奪ってる最中に、その風に乗せて殴る。いやはや、さすが剛拳と言われているだけはありますね」


「時間がありません。これで終わらせます」


再度、風が俺たちを包む。

俺は砂埃が目に入り瞼を閉じた時だった。

頬に冷たいものが着いた。


「え? なにこれ?」


ぬぐい取るとそれは真っ赤な液体で。


「ガシェルさん!」


セシアさんの声に前を向くとガシェルさんの傷だらけで、大量の血を流していた。

それを冷たいあの金色の目でシューラン猊下は見下ろしていた。


「あと一人」


その言葉に俺は振り向く。


「セシアさん!」


俺の言葉よりも先にテルマリリ様がセシアさんを切り刻んでいた。


「私がやった方が早いのに」


その姿を見てシューラン猊下はつまらなそうに言葉を吐く。

どうすれば。


『力が欲しいかい?』


シラユリがそう俺に聞いてくる。


「ああ欲しいよ」


この戦いを止められるならどんな力だって!


『なら、あげるよ』


彼女は杖を渡してくる。

さらに耳元で俺に呪文を教えてくれた。

ああ、なんとなく理解したよ。


『さあ、高らかに叫ぶんだ!』


「ま、マジカルチェーンジ!」


その呪文に光が俺たちを包む。

そして、数秒後。

俺は。

魔法少女になっていた。


『本当に変身できたし』


お前が驚くなよ。

そして、ガシェルさんとセシアさんの姿はなかった。

いつの間にか俺の手には一枚の紙が握られている。


― 先払いだからな


彼に救われたな。

なら、やることは一つだ。


「できるだけ、抵抗してみますか。ドラゴン退治なんて行きたくないし」


「ルヴァンくん!」


シューラン猊下が叫ぶ。


「フリフリの方がよかったんだね! だから、こんな反抗を!」


その言葉に自分の今の姿を見て。






死にたくなった。

明日は夕方以降になります。

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