第四十七話 せっかく異世界に来たんだから、進化したい。
ちょっと短めですがお願いします。
「集中力が切れてますよ」
「え?」
俺はガシェルさんといつもの鍛錬を行ていた。
しているつもりだった。
だが、自分でも分かるほど動きはぎこちなく、身が入っていないことは明らかだった。
理由は分かり切っている。
ドラゴンとの戦闘の件だ。
「どうすればいいのでしょうか?」
「戦いは嫌ですか?」
「嫌に決まってます!」
これがゲームであれば失敗してもコンティニューできる。
でも、失敗はすなわち死を意味する。
それに相手があんなにでかいドラゴンだ。
勝てるわけがない。
「こわい、です」
「死ぬのがですか?」
「はい」
「そうですか」
ガシェルさんは大きく息を吸い込んで吐き出した。
そして、拳を空に向けて突き出した。
その突きは空気を割り、甲高い音と共に遥か上の雲を割ったのだった。
俺はあまりの出来事にぽかんと口を閉じれなくなっていた。
「ルヴァンくん」
「……はい」
「僕は死ぬこと自体は恐れません。何もできなくなる、前へ進めなくなった時、そこに恐怖があることを僕は君に会う前に気づきました。だからこそ、死を選ぼうとしました」
「そう、なのですか」
それは武闘家として生きてきたガシェルさんだからだろう。
俺は元々は平和な世界の中で生きてきた。
元々の考え方が違う。
「でも、今は違います」
「え?」
「死を間近にしてカーシャがいもしない僕の敵をとろうとした時、僕は彼女の人生を無駄にしてしまうのではないかと怖くなりました。そして」
ガシェルさんは俺の頭に手を乗せて撫でてくる。
「君という弟子を失うのではないかと恐怖しています。ルヴァンくんはまだ僕の十分の一も生きていないのに、君を死地に追いやるなど!」
俺の頭の上の掌に力がこもる。
「許せるわけが、ありません。それが王命であっても!」
温和なガシェルさんが恐ろしいほどに怒っていた。
漏れ出る威圧で空気が震えているのではないかと錯覚するほどに力強かった。
もう、一年前初めて会った時のガシェルさん骨と皮しか無かったあの姿はもう跡形もなかった。
「セシアさんが君を連れて逃げる準備をしています」
「なんで」
「どんな意図があろうとも、十歳の子供を行かせるわけにはいきません。例え教会と国を敵に回しても。僕達大人が君を守って見せます」
思わずその言葉に涙が出てきそうになる。
でも、なんでそこまで守ってくれるのだろう?
「どうして、そこまで」
「それは僕たちは誰でもないボルヴァードくんを好きだからです。誰よりも頑張りで、誰かを助けて上げたいと行動し、実際に多くの人の支えになってきた君だからこそ守ってあげたいと思ってしまった」
「はい」
「でも、僕達でも助けられる状況に無くなることもある。だから、スキルレベル10への上げ方を教えます」
「それって」
「ルヴァンくんは最高レベルのスキルはなんだい?」
俺は自分のスキルを〈鑑定(人間)〉で見る。
するといくつかのレベルが上がっていた。
その中でも最も高いのが。
「回復魔法、リハビリテーション、武術、光魔法がそれぞれレベル8です」
ガシェルさんは大きく目を見開くが、呆れたようため息をついた。
そして、拳骨を落としたのだった。
「い、いたい」
「頑張りすぎです。五歳児が取っていいレベルじゃない。少しは休息をとりなさい」
「これからそうします」
「まあ、言っても意味がないだろうから先に進むよ。レベル8から9になる方法は個人スキルを覚える事で上がる。個人スキルとはアルマルデで言うとこの〈リカバリー〉とかだね」
「他にもあるんですか?」
「そりゃあるさ。テルマリリだと〈クイックヒール〉なんかがそれにあたる。〈クイックヒール〉は一瞬で体の傷を癒してしまうけど、MPは食うし、知力が高くないと使えないという欠点はあるが、前衛で戦闘ができる彼女はそれで自身を回復し続けながら戦い続けるスタイルをとっている」
そういえばテルマリリ様は剣を使ってすさまじいスピードで戦闘を行っていた。
その先頭ではアルマルデ様のような攻撃の魔法は使っていなかった。
いや、使う必要がないほど強かった。
「何かあった時、〈リカバリー〉を使えるようにアルマルデが僕に託しておいてくれたものだ」
そう言ってガシェルさんは一枚の紙を渡してきた。
それにはアルマルデ様の筆跡と思われる手紙で、内容は〈リカバリー〉使い方が書かれていた。
早速覚えようと思ったが、それをガシェルさんに止められる。
「最後まで聞きなさい」
「……はい」
「そして、最後にレベル10には自身で個人スキルを作ることで最後のレベルは上がる。でも、とりあえずはレベル9になることを目指して頑張っていこう」
「はい、分かりました!」
「じゃあ、〈アシュラ〉を覚えようか」
……あしゅら?
なにそれ。
「僕の武術の個人スキルだよ。ルヴァンくんは武術もレベル8らしいからついでにレベル9にしてしまおう」
「ちょっとま」
「さあ、よく見て覚えるんだよ。これが〈アシュラ〉だ」
その瞬間、ガシェルさんの周りに強い風が吹く。
そして、その風に触れると次第にそれをガシェルさんは体に纏わせた。
「少し動くよ」
そう言った彼は一瞬で消えていた。
「どうだい?」
後ろを振り向くとそこにはガシェルさんが何喰わない顔でそこに立っていた。
「〈アシュラ〉は魔法を身にまとうことで防御力を上げるだけでなく、身体能力を上げる能力もあるんだ。これをできるようになってもらうよ」
「は、はは」
無理だろ。
言葉には出せないが、出来る気がさっぱりしなかった。
明日はお休みします。
面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をお願いします。




