第四十六話 せっかく異世界に来たんだから、同郷と話をしたい。
本日二話目です。
よろしくお願いいたします。
俺がブラバを手に入れて店を出ると妖精たちはいっせいに俺に集まった。
周りには見えないので誰も助けてくれない。
だが。
『静まれ、静まれ、このステッキが目に入らぬか。ここにおわすお方をどなたと心得る。恐れ多くも未来の魔法少女であるボルヴァード様にあらせられるぞ!』
ブラバがそうあの有名な一言のような言葉と一緒に杖を見せる。
その瞬間全ての妖精が俺から距離を取ると平伏する。
そう言えばご老公が最後に言ってたな。
「成敗!」
『しちゃダメでしょ!』
「いや、この流れは言っとかないといけないかなっと」
視線を妖精に向けると既にいなかった。
俺の言葉に妖精たちは一目散に逃げていったようだ。
既に日は暮てしまい暗くなった道を教会に向けて歩きだす。
オリバーさんはライレッドさんを慰めるために置いてきたので、今は教会のメンバーだけだ。
だが、ミドリちゃんは疲れてしまったようで、眠そうにしていたので俺が背負っている状況だ。
「大丈夫かい?」
「はい。これでも鍛えてますので」
テルマリリ様は時折心配そうに声をかけてくれるがとりあえず大丈夫だ。
天職ももらって大分筋力も上がっている。
「本当にボルヴァードくんは子供らしくないね」
「へん、でしょうか?」
「違和感はある。でも、嫌いではないよ。ただそういった子は内で気持ちを抑え込んでしまうことが多いから素直に心配しているだけさ」
その言葉にセシアさんも強く頷いた。
そんなに無理をしているように見えるだろうか?
「湖畔の教会で親しかったともに裏切られ狙われたのにも関わらず、次の日には普通に生活をしていた。何か抱えてしまっているのではないかと疑ってしまうものだよ。それに、子供は迷惑をかけても心配をさせてはいけない。それだけは忘れないでおくれ」
「はい。分かりました」
テルマリリ様の言葉に前世の両親を思い出した。
お世辞にも出来のいいとは言えない息子ではあったが、先に逝ってしまった事を申し訳なく感じた。
「セシアさん。ごめんなさい」
「え?」
「いや、最近セシアさんに心配ばかりかけさせていたように感じて」
洗礼の時もアクアくんの時も、天職の時だって心配をかけてしまったに違いない。
それにアルマルデ様にも、一年後に帰ってきたらちゃんと謝ろう。
『う、うう~』
至近距離で誰かが泣いている声が聞こえた。
横を見ると俺の肩にブラバが泣いていた。
「ブラバ、何泣いてるんだ」
『前世の、両親を、思い出して』
先に死んでしまった事をブラバも悔いているらしい。
やはり、突然死んでしまうのはそれだけ多くのものを残してしまう事につながる。
それを悔いてしまうのは転生者には避けては通れない枷なのかもしれない。
『親不孝な娘でごめんなさい』
「え!? お前、女なの?」
『女よ! 他の何に見えるのよ!』
「いや、妖精って見た目一緒だから男女の見分けがつかないし、残念な言動や恰好がオタクの男友達によく似てるから、その、なんとなく。それにブラバだって俺を女と見間違えたじゃないか」
『だって、こんな美形の子供が来たら女の子だと思うでしょ! それに、この世界の顔面偏差値が高すぎるのよ! ちょっと歩いただけなのに、通り過ぎる女性も男性も顔が整い過ぎてる! 前世の私なんて転生して来ようものなら魔物と間違えられるレベルよ』
「それな、俺も思ったわ」
マンガやアニメの中って意外とモブの人たちもそこそこ綺麗に書かれることが多いが、実際の異世界でもその傾向がある。
もし、異世界転移で俺が俺の容姿のまま着ていたらあまりの醜さに彼女の言うように魔物の類に間違えられてもおかしくはないだろう。
『それにブラバって何よ』
「ブラックバレーを略してブラバ」
『略すな!』
「なら、黒谷さんって呼んだ方がいい?」
『お願い、ファンタジーさを壊さないで』
「なら、ブラバも自嘲してくれ」
魔法少女の下りは本当にやめてほしい。
正直にいえば何度か鏡で自分の顔を見たことがあるが、どちらかというと女寄りのきれいな顔をしていると自分でも思ってしまった。
だが、男の娘は鑑賞するのはいいが、自分がなりたいわけではない。
言われると嫌な気持ちになってしまうのだ。
『分かった。なるべく魔法少女は控えるね』
「完全にやめるとは言わないのな」
『だって、大好きだから』
「そうか」
まあ、少しは構ってやるか。
『そういえば、この杖の所有者ってボルヴァードくんなんでしょ?』
「そうなるな」
『なら、名前決めてよ』
「いきなり言われてもなあ。前は何だった?」
『白百合」
「……」
『なんだよ! 名前負けとでも言いたいのか!』
「え? いや、かわいい名前だなって思っただけだし、前世の容姿は知らないけどよく似合ってると思うよ。うん、シラユリでいいんじゃない?」
『う~』
シラユリが顔を隠して俯いてしまう。
気に入らなかったのだろうか。
でも、前世の名前だし、思入れもあるんじゃないのかな?
『わ、私は、好感度を上げても、意味がないんだぞ。理解しておけよ!』
「は、はい」
何のことかは分からないがとりあえず頷くことにしたのだった。
シラユリと話しているとあっという間に教会についていた。
教会に入ると甲冑を着た男たちがシューラン猊下になにかの書状を渡していた。
その姿を周りにいる修道士達が心配そうに見ていた。
俺達が皆の周りに近づくと入れ替わるように甲冑の男たちは教会を出ていった
「今のは?」
テルマリリ様はシューラン猊下に問いかける。
「王城の騎士たちだ。とうとう銀鉱山のドラゴン退治に出ることになったらしい」
「それで、どんな要求があったのですか?」
「それが回復要因として数人の修道士と特一級回復師の参加を要求された」
テルマリリ様の顔が険しくなる。
そんなにまずいのだろうか?
「特一級回復師とは?」
「回復魔法がレベル10以上で、他にレベル5以上のスキルを三つ、魔力が10000以上等色々と条件のあるいわゆるエリートレベルの回復魔法師の事です」
「それって」
「今の王都の教会ではシューラン猊下とテルマリリ様しかいません」
二人の内、誰かが行くという事だ。
「わしが「いえ、ここは私が行きます」
シューラン猊下の言葉をテルマリリ様が止める。
「この国たった一人の枢機卿のあなたが行くわけにはいかないでしょう。私が行きます」
「……すまない」
シューラン猊下が頭を下げた。
そして、テルマリリ様に書状が渡される。
一様確認のためにテルマリリ様がその書状を確認する。
だが、読んでいる途中で目を見開き書状を落としてしまう。
「どうしたのだ?」
「この行を読んでください」
「『聖帝の参加を要求する』だと!?」
それって。
「ルヴァンがドラゴン討伐って! 子供ですよ!」
セシアさんが怒鳴る。
俺は恐怖で震えるのだった。
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