第十七話 せっかく異世界に来たのに理由が分からない。
遅くなりました。
はじめての評価いただきました!
これからも、よろしくお願いします。
キャラバンが最初の戦闘を行った日から一週間(六日)が過ぎた。
だが、王都まではまだ一ヶ月(三十日)はかかるらしい。
その間に魔物の襲撃は二回あった。
だが、最初のコボルトほどの大きな群れの襲撃はなかった。
イアンから聞いたが最初の襲撃は全部で五十匹もコボルトがいた。
でも、コボルトの群れとしては中程度らしい。
もっと大きな群れになると百や二百もの群れを成すとのこと。
コボルトの見た目は二足歩行する犬の姿なのだが、知能は低いくせに嗅覚、聴覚が鋭い。
その為、狙われると逃げるのが難しくその場で群れを壊滅させるしかないそうだ。
「でも、コボルトなんかよりゴブリンの方がめんどくさいんだ」
「知能が高いからですか?」
「そうだ。コボルトは魔力による身体強化をしてくるが、攻撃手段は爪と牙のみだ。戦闘中の距離さえ気を付けていれば怖くはない。だが、ゴブリンは知能が高く、武器を使うだけでなく魔法も使ってくる。ものによっては言葉をしゃべる個体もいるらしい」
「それだと、戦闘中に無暗に大声で指示を出していると、そこを逆手に取ってくる可能性がありますね」
「そうなんだよ!」
イアンは大きく頷いた。
今はイアンと他数名の冒険者と夜の番をしていた。
別に俺は起きていなくてもいいのだが、〈夜間行動〉のスキルで眠れないのだった。
このスキルは数日に一回六時間ほど睡眠をとれば夜の間いつまでも起きていられるスキルだ。
だが、実際には起きていられるだけでなく、眠気も感じにくくなったのだ。
また、最初の襲撃を受けた日の夜、獣の声が恐ろしく眠気よりも恐怖により眠れなくなってしまったのだ。
そこで、回復魔法の練習をしながら冒険者の話を聞いていたのだった。
「新人共はそう言っても理解しなくって、考え無しに声にする。お互いが声を出し合って連携をとるのも大事だが、魔物に合わせた対処をすることも覚えてもらわないと困るんだ。そのせいで、ゴブリンは新人キラーなんて呼ばれてたりもする」
「なるほど」
イアンの言葉に他の冒険者は「巡回に行ってきます」と言って離れていった。
耳が痛かったのだろう。
イアンは小さい頃からずっと冒険者をしていた経験から知識が豊富だった。
因みに最初イアンさんとよんだら他人行儀だからやめろとの事でイアンと呼ぶことになっていた。
「なんだ、坊主。まだ起きていたのか」
調合師のおっさんが暗闇の中から現れた。
そして、俺達が囲っている焚火の近くに腰を下ろす。
「ガキは寝ないと大きくなれないぞ」
「すみません。でも、スキルのせいで眠れないんです」
〈夜間行動〉のスキルについて説明するとおっさんは「難儀だな」とつぶやいて、酒を煽った。
「俺は眠れない時は酒を飲めばいいが、坊主はまだ飲めないしな」
「何歳から飲んでもいいのですか?」
「ドワーフ以外は成人の十五歳からだな」
「ドワーフはいいのですか?」
「ドワーフは酒に関連したスキルを持ちやすいし、奴らの性質上相当量飲まないと酔ったりもしない」
「酒に関連したスキルって?」
「それは……」
おっさんの反応が悪くなる。
どうやら知らないようだ
そこで、代わりにイアンが「例えば酒乱とかだな」と教えてくれる。
「酒乱は酒を飲めば飲むほど筋力が上がるスキルなのだが、酒が入るから発動後に二日酔いや酩酊といったバットステータスが付きやすい。だから、戦闘には不向きなんだ。そこで、ドワーフたちは鍛冶師や鉱山での作業員などの力仕事に付きやすいんだ」
「そうですか。そのスキルを取る条件は?」
「適性があれば酒を飲めば発現するよ。ただ、人間種が「もう少しで酒に関連したスキルが発現しそうなんだ」なんて言って酒を飲み続けたら、ほぼ百パーセント嘘だからな」
「だそうですよ、おっさん」
「うぐっ」
先日、二日酔いになるのに酒を飲んでいるのを指摘したらそう言って酒を飲み続けていたのだった。
やっぱり嘘なんだな。
アルマルデ様もセシアさんも呆れていたのはそのせいだったか。
「おじさん、一口ちょうだい」
「「ほう」」
イアンとおっさん感心したような声を出す。
なんだ?
「ああ、なんだ。ルヴァンって真面目そうな感じがしたから、そんなことには興味がないのかと思ったぞ」
「いや~。若いうちの冒険は大切だよな。ほら」
おっさんが酒の入った水筒を渡してくる。
それを俺は受け取る。
だが、おっさんと関節は嫌なのでコップに移し替える。
「そのまま行けよ」
「イヤだ。生理的に」
「あ!?」
「よく考えてください。べろべろの中年男が飲んでいたものをそのまま飲みますか?」
「飲まねえ」
「そう言う事です」
そして、コップを傾けた。
〈神々の血〉Lv1 発動
「あ、スキル発現しました」
「まじか」
「ついでになんてスキルだ?」
「〈神々の血〉ってすきる……」
俺の言葉に二人とも目を見開いた。
だが、おっさんは「おもしろい冗談だ」と言って笑いながら馬車に戻っていった。
そして、イアンが重い口調で言った。
「ルヴァ、 ……。ルヴァン様、一緒の二人は何か知ってるのか、ですか?」
イアンの口調がおかしい。
使い慣れない敬語を頑張って使ってみよう感がすごい。
「何か知ってるみたいだけど、教えてもらえなくて」
「なら、勝手に教えるわけにはいかねえです。ルヴァン様」
「やめてください、俺にも敬語はいらないです」
「そ、そうか? 助かる」
イアンは大きくため息をついた。
「今日の事は俺は忘れる。たぶんあのおっさんも他言はしないだろう。命が惜しいしな。お前もそのスキルは他人には言うな。いいな」
「はい、分かりました」
「それと、ほい」
イアンが投げて鉄製のスプーンを渡してくる。
俺はそれをキャッチした。
だが、軽く握ったはずのそれはひしゃげて元の形をとどめていなかった。
「そう言う事だ。今後、酒を飲むのは禁止。スキルが消えるまではおとなしくしてろ」
「すみません」
俺はイアンに謝る。
だが、イアンは不器用に笑う。
「気にすんなよ」
そして、俺の頭をなでるのだった。




